プレアデスは遥か彼方(2025.10.5完)

継永乃々佳@J庭59ぬ11b

文字の大きさ
20 / 60
4章 星降る夜に

星降る夜に#1

しおりを挟む
「りっちゃん、あのさ。一緒に天体観測行かない? たまにはちゃんと観測しに行きたいなーと思ってさ」
 昴が高校二年、理月が大学一年の一月頃のこと。その夜もバイト帰りの昴が手土産と共に家に立ち寄って、二人並んでソファに腰かけていた。マカロンを食べながら、ふと思い立ったように昴がそう口にする。

「天体観測? 良いけど、どこでするの?」
「ふらっと行ける都内近郊の、海とか山とか辺りで。りっちゃん、いつ暇?」
「天体観測って言うなら夜だろ。大抵いつでも大丈夫だよ。星を見るって言うなら、新月の日が良いんじゃない? 月が出てない日の方が、星がよく見えるよね」
「それはそうだけど――まあ、いっか。月が出ない日に合わせて行ってみよう。っていうと……二十三日の月曜日かな」
 ――そんな流れで天体観測の日取りが決まり、一月二十三日月曜日。十九時半頃に理月がタクシーで昴の住むマンション前まで迎えに行くと、ダウンジャケットを着て大荷物を背負った昴がやってきた。ライフルでも入っていそうな縦長のバッグを背負い、手にもバッグを持っている。運転手がトランクに荷物を積むために運転席から降り、理月も一旦外に出た。

「なかなかの大荷物だな。天体望遠鏡、こんな大型なんだ」
「そうそう。実家からこっちに持ってきたやつ。高くて性能が良い望遠鏡だよ。だからすっごくよく見える」
 そう会話しているうちにトランクに望遠鏡のスタンドを入れた縦長のバッグが積まれ、理月がタクシーに乗車して、続けて昴も乗車する。目的地は練馬区にある公園だ。

「今日、晴れて良かったねー。よく見えそう」
「うん。外で天体観測するのって初めてだから楽しみ」
 車内でそんな会話をぽつぽつとしているうち、二十分ほどで目的地に辿り着きタクシーから降車した。
 望遠鏡を担いで公園の中へと入り、樹木が周りを囲っている池の付近まで足を向ける。夜間の照明は点いてしまっているけれど、照明が点いていなければ危険だから仕方ない。
 上空を見上げても肉眼ではやはり満天の星空、とはならないけれど、一番星がちかちか光っているのはよく見える。マンション等の公園周囲の都会の明かりは殆ど入って来ないから、都内の中ではなかなか良い立地だろう。池付近で昴が望遠鏡をバッグの中から取り出して、慣れた手付きであっという間に設置する。

「りっちゃんって、そんなに星とか宇宙とかには詳しくないんだよね?」
「まあ、常識的な知識がある程度じゃないかな。地学の授業取らなかったし、小中学校でほんの軽く学んだくらいだ。あとは、小さい頃にガリレオとかニュートンの伝記読んだり、宇宙の図鑑とか読んだり。そういえば、ガリレオも音楽が好きなんだっけ。確か、親が音楽家だとかでさ」
「あ、それ僕も覚えてる。伝記も図鑑もどっちも読んでた。宇宙の知識なら僕の方があるかもって思ったけど、りっちゃん物知りだからなあ~」
「大して知らないよ。天体観測するのだって初めてだし。今日は昴が先生だね」
「りっちゃんの先生になれるなんて光栄だなぁ。じゃあ、星見ながら解説をする前に……クイズです。昴はどこに居るでしょーか?」
 昴が立ち上がり、夜空を指差す。理月は釣られて夜空を見上げ、ぐるっと辺りを見渡した。
 星の昴の探し方は知っている。まずは三つ星のオリオン座を見付ける。その付近に、オレンジ色のアルデバランを見付ける。そこまで見つければ、昴はもうすぐそこだ。南西の空に青白く輝く昴――プレアデスの星団を見付けて、そちらを指差す。

「見付けた。あれが昴だね」
「流石りっちゃん、大正解。ここで豆知識、日本だとプレアデス星団は昴の他に六連星(むつらぼし)って名称でも呼ばれます。でもギリシア神話だと七つの星で、七姉妹ってことにされてたり、国によってバラつきがあるんだよね。りっちゃんはいくつに見える?」
「んー……六つに見える、ような気がする」
「僕も肉眼では六つに見える。でも本当は、もっと沢山居るんだよ。どうぞ、覗いてみて」
 昴に促され、望遠鏡を覗いてみる。そうすると、狭い範囲にぴかぴかと青白い星が数十個集まって光っている様子が見て取れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

宵にまぎれて兎は回る

宇土為名
BL
高校3年の春、同級生の名取に告白した冬だったが名取にはあっさりと冗談だったことにされてしまう。それを否定することもなく卒業し手以来、冬は親友だった名取とは距離を置こうと一度も連絡を取らなかった。そして8年後、勤めている会社の取引先で転勤してきた名取と8年ぶりに再会を果たす。再会してすぐ名取は自身の結婚式に出席してくれと冬に頼んできた。はじめは断るつもりだった冬だが、名取の願いには弱く結局引き受けてしまう。そして式当日、幸せに溢れた雰囲気に疲れてしまった冬は式場の中庭で避難するように休憩した。いまだに思いを断ち切れていない自分の情けなさを反省していると、そこで別の式に出席している男と出会い…

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【R18+BL】空に月が輝く時

hosimure
BL
仕事が終わり、アパートへ戻ると、部屋の扉の前に誰かがいた。 そこにいたのは8年前、俺を最悪な形でフッた兄貴の親友だった。 告白した俺に、「大キライだ」と言っておいて、今更何の用なんだか…。 ★BL小説&R18です。

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

幸せな復讐

志生帆 海
BL
お前の結婚式前夜……僕たちは最後の儀式のように身体を重ねた。 明日から別々の人生を歩むことを受け入れたのは、僕の方だった。 だから最後に一生忘れない程、激しく深く抱き合ったことを後悔していない。 でも僕はこれからどうやって生きて行けばいい。 君に捨てられた僕の恋の行方は…… それぞれの新生活を意識して書きました。 よろしくお願いします。 fujossyさんの新生活コンテスト応募作品の転載です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

【完結】取り柄は顔が良い事だけです

pino
BL
昔から顔だけは良い夏川伊吹は、高級デートクラブでバイトをするフリーター。25歳で美しい顔だけを頼りに様々な女性と仕事でデートを繰り返して何とか生計を立てている伊吹はたまに同性からもデートを申し込まれていた。お小遣い欲しさにいつも年上だけを相手にしていたけど、たまには若い子と触れ合って、ターゲット層を広げようと20歳の大学生とデートをする事に。 そこで出会った男に気に入られ、高額なプレゼントをされていい気になる伊吹だったが、相手は年下だしまだ学生だしと罪悪感を抱く。 そんな中もう一人の20歳の大学生の男からもデートを申し込まれ、更に同業でただの同僚だと思っていた23歳の男からも言い寄られて? ノンケの伊吹と伊吹を落とそうと奮闘する三人の若者が巻き起こすラブコメディ! BLです。 性的表現有り。 伊吹視点のお話になります。 題名に※が付いてるお話は他の登場人物の視点になります。 表紙は伊吹です。

処理中です...