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4章 星降る夜に
星降る夜に#4
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「はあー、着いた着いた。長かったぁー」
「へえ、この辺りは宿場町って感じだね。歴史を感じる」
夏休み真っ只中の八月十二日。朝六時二十二分、品川駅発の新幹線のグリーン車に乗り込んで、七時五十分に名古屋着。特急のグリーン車に乗り替えて、九時二十五分頃に目的の駅に到着した。
駅の外に出ると、向かいには隣の家同士の壁がぴったりくっついた瓦屋根の日本家屋が連なっており、江戸時代の面影を残す宿場町と言った感じの風景が広がっている。この辺りは標高七百メートルで山に囲まれた場所ではあれど、日差しが強く普通に暑い。現在の気温は三十二度だ。
今日は散策のため、二人とも半袖、ロングパンツ、スニーカーという動きやすい格好で来ている。行先の標高によっては昼間でも涼しく、夜はかなり涼しくなるらしいから、きちんと上着も持参した。
「うん。観光地の辺りは、結構こういう江戸っぽい街並みが残ってるよー。じゃあ、レンタカー取りに行こっか。近場の観光地から回ってみよ」
そういうわけで、駅から徒歩二分のレンタカー屋に出向き、車のトランクに荷物を積んだ。昴も理月も免許だけ取得してあるが、二人とも車は持っていない。今回の運転は土地勘がある昴だ。理月が助手席に、昴が運転席に乗り込んで車を出発させる。
旅行の予定は二泊三日。一泊目は付近の旅館に泊まって観光し、夜は宿から星を観る予定だ。山の天気はとにかく変わりやすいから二泊目は星が観られなかった時のための予備日として設定しており、二日目は昴の実家に泊まる予定でいる。今のところは星が綺麗に観られそうな、雲ひとつ無い良い天気だ。
駅の傍こそ宿場町の印象だったが、国道に入って道を走り出すと、左右両側とも山しか見えなくなる。左側が切り立った崖の壁で、右側は時折ぽつぽつと建物が見受けられるが、見える景色は殆ど山だ。時折大きな橋があり、下には川が流れている。山と川と青い空、というのどかな風景は、生まれも育ちも都内の理月には新鮮だった。
「普段運転しないから絶対安全運転で」と言って昴は飛ばさず、のんびりと法定速度程度のスピードで車を走らせていく。
「昴って、この辺りに住んでた時はどういう暮らしをしてたの?」
「んー、まあ見ての通り何にも無いところだからねー。それに線路が通ってる方はまだ栄っとるけど、僕の実家の方なんて最寄り駅まで行くのにバスで四十分かかる山奥で……だもんで、家でピアノばっかり弾いてたよ。あとは、雪が降るから冬場は友達とスキー行ってた。だからスキーは超得意」
「ピアノばっかり弾いてるところは今と変わらないな。スキーが得意っていうのは初耳だ。僕はスキーって学校の校外学習で行ったことがあるくらいで経験に乏しいんだけど、冬にも来てみたいな。スキーしてる昴、想像付かないし見てみたい」
地元に戻ってきたことで少し気が緩んでいるのか、昴の話し言葉が標準語から若干方言交じりになっている。まだ出会ったばかりの頃の昴を思い出し、小さい昴がスキーをしていた姿を想像してククッと笑う。
「本当に超得意だよ? スキー行ったら絶対格好良いとこ見せてあげられるから、いつか冬にも一緒に来ようね。りっちゃんとスキーやりたーい」
「疑ってる訳じゃないよ。最後に行ったの相当前だし、やってみたいな」
ぽつぽつとそんな会話をしているうちに、最初の目的地である景勝地に辿り着いた。川の流れで巨大な白い花崗岩が削られて出来上がった、自然の美しく厳かな風景だ。岩の上をひょいひょいと歩いていき、所々足場が悪い場所では昴が「地元民に任せて~」と言って理月の手を取り進む。
軽い散策を終えて駐車場に戻り、レンタカーで今度は山奥の森へと五十分ほどかけて移動した。十二時を過ぎていたから森林の中にある食事処に入り蕎麦を食べ、森の中にある列車に乗って散策を楽しんだ。そこから小一時間かけて渓谷に向かい、エメラルドグリーンの美しい清流を眺め見る。昴は「りっちゃん、山と川ばっかりでつまんなくない?」と言って若干不安げだったけれど、理月は「新鮮で楽しいよ。森の中も川の傍も涼しくて、気持ち良いし」と笑って返す。
渓谷から二十分ほど車を走らせ江戸時代の町並みが現在に至るまで保存されている宿場町に向かい、二人とも箸を買った。理月は来月には渡米してしまうから、別々に使うことになるけれど。
十八時半から夕食の予定だから来た道を戻っていき、標高一千二百メートルの高原にある高級宿へと辿り着きチェックインを済ませた。高原だから夏とは思えない程涼しく、現在の気温は二十度を下回っており少し肌寒い。
「へえ、この辺りは宿場町って感じだね。歴史を感じる」
夏休み真っ只中の八月十二日。朝六時二十二分、品川駅発の新幹線のグリーン車に乗り込んで、七時五十分に名古屋着。特急のグリーン車に乗り替えて、九時二十五分頃に目的の駅に到着した。
駅の外に出ると、向かいには隣の家同士の壁がぴったりくっついた瓦屋根の日本家屋が連なっており、江戸時代の面影を残す宿場町と言った感じの風景が広がっている。この辺りは標高七百メートルで山に囲まれた場所ではあれど、日差しが強く普通に暑い。現在の気温は三十二度だ。
今日は散策のため、二人とも半袖、ロングパンツ、スニーカーという動きやすい格好で来ている。行先の標高によっては昼間でも涼しく、夜はかなり涼しくなるらしいから、きちんと上着も持参した。
「うん。観光地の辺りは、結構こういう江戸っぽい街並みが残ってるよー。じゃあ、レンタカー取りに行こっか。近場の観光地から回ってみよ」
そういうわけで、駅から徒歩二分のレンタカー屋に出向き、車のトランクに荷物を積んだ。昴も理月も免許だけ取得してあるが、二人とも車は持っていない。今回の運転は土地勘がある昴だ。理月が助手席に、昴が運転席に乗り込んで車を出発させる。
旅行の予定は二泊三日。一泊目は付近の旅館に泊まって観光し、夜は宿から星を観る予定だ。山の天気はとにかく変わりやすいから二泊目は星が観られなかった時のための予備日として設定しており、二日目は昴の実家に泊まる予定でいる。今のところは星が綺麗に観られそうな、雲ひとつ無い良い天気だ。
駅の傍こそ宿場町の印象だったが、国道に入って道を走り出すと、左右両側とも山しか見えなくなる。左側が切り立った崖の壁で、右側は時折ぽつぽつと建物が見受けられるが、見える景色は殆ど山だ。時折大きな橋があり、下には川が流れている。山と川と青い空、というのどかな風景は、生まれも育ちも都内の理月には新鮮だった。
「普段運転しないから絶対安全運転で」と言って昴は飛ばさず、のんびりと法定速度程度のスピードで車を走らせていく。
「昴って、この辺りに住んでた時はどういう暮らしをしてたの?」
「んー、まあ見ての通り何にも無いところだからねー。それに線路が通ってる方はまだ栄っとるけど、僕の実家の方なんて最寄り駅まで行くのにバスで四十分かかる山奥で……だもんで、家でピアノばっかり弾いてたよ。あとは、雪が降るから冬場は友達とスキー行ってた。だからスキーは超得意」
「ピアノばっかり弾いてるところは今と変わらないな。スキーが得意っていうのは初耳だ。僕はスキーって学校の校外学習で行ったことがあるくらいで経験に乏しいんだけど、冬にも来てみたいな。スキーしてる昴、想像付かないし見てみたい」
地元に戻ってきたことで少し気が緩んでいるのか、昴の話し言葉が標準語から若干方言交じりになっている。まだ出会ったばかりの頃の昴を思い出し、小さい昴がスキーをしていた姿を想像してククッと笑う。
「本当に超得意だよ? スキー行ったら絶対格好良いとこ見せてあげられるから、いつか冬にも一緒に来ようね。りっちゃんとスキーやりたーい」
「疑ってる訳じゃないよ。最後に行ったの相当前だし、やってみたいな」
ぽつぽつとそんな会話をしているうちに、最初の目的地である景勝地に辿り着いた。川の流れで巨大な白い花崗岩が削られて出来上がった、自然の美しく厳かな風景だ。岩の上をひょいひょいと歩いていき、所々足場が悪い場所では昴が「地元民に任せて~」と言って理月の手を取り進む。
軽い散策を終えて駐車場に戻り、レンタカーで今度は山奥の森へと五十分ほどかけて移動した。十二時を過ぎていたから森林の中にある食事処に入り蕎麦を食べ、森の中にある列車に乗って散策を楽しんだ。そこから小一時間かけて渓谷に向かい、エメラルドグリーンの美しい清流を眺め見る。昴は「りっちゃん、山と川ばっかりでつまんなくない?」と言って若干不安げだったけれど、理月は「新鮮で楽しいよ。森の中も川の傍も涼しくて、気持ち良いし」と笑って返す。
渓谷から二十分ほど車を走らせ江戸時代の町並みが現在に至るまで保存されている宿場町に向かい、二人とも箸を買った。理月は来月には渡米してしまうから、別々に使うことになるけれど。
十八時半から夕食の予定だから来た道を戻っていき、標高一千二百メートルの高原にある高級宿へと辿り着きチェックインを済ませた。高原だから夏とは思えない程涼しく、現在の気温は二十度を下回っており少し肌寒い。
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