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4-3 ラストダンジョンへ!

秒で終わる敗者復活戦 その1

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 敗者復活戦は、テレビでアーカイブ配信されているという。

「見てみなさいっ! すんごいから!」

 マミちゃんが、ボクらをたきつけた。
 ボクたちは食事をしながら、テレビを付ける。


 映像は、敗者復活戦前の様子だった。

 これだけの魔王と勇者が集まっていたのか。

 彼らは、てっぺんに紙風船の付いたヘルメットをかぶらされている。

 全員が、手にピコピコハンマーを握っていた。

『種目はぁ、シンプルに風船たたきでぇす』

 司会は、ロイリさんである。

 本戦を実況していたヒツジちゃんは、敗者復活戦に参加者として出場していた。

『この際、魔王も勇者も関係ありませぇん。最後の一人になるまで、みなさんには殴り合ってもらいまぁす』

 優しい口調だが、ルールは実にシビアだ。

『よおい。スタート!』

 スタートのホイッスルが鳴る。

 直後、風が吹いた。

 みんなが頭を抑える中、イクミちゃんの姿だけが見えない。

 パパパパパパ! と、魔王や勇者たちの風船が割れていく。

「終わったわ」

 最後に、イクミちゃんだけが残った。

 誰一人寄せ付けず、最終戦出場を果たすとは。




「すごい。これがイクミちゃんの実力なの?」

 あんな高速移動ができるなんて。

「あれをやったのは、イクミじゃないわ!」
「え!?」

 じゃあ、一体誰が?

「今、スロー再生してあげる!」

 マミちゃんは、動画のアイコンをいじって、一度巻き戻す。

 さっきと同じ映像が、流れ始めた。超スロー再生で。

「……あっ!」

 風になって戦っていたのは、ヒツジちゃんだったのである。
 空中を舞い上がりながら、ピコピコハンマーを魔王や勇者たちに叩き込んでいた。

 だれも、ヒツジちゃんに対抗できない。

「ええええ、あんなポテンシャルがあったなんて」

 これだけの力があれば、決勝だって夢じゃない。

 こんな子が、実況者として埋もれていたなんて。

「驚くのはまだ早いわ」


 ヒツジちゃんの獲物も、最後のひとりになる。イクミちゃんだ。

 しかし、イクミちゃんは微動だにしない。
 ヒツジちゃんに、気づいていないのかな?

「もらった」という顔を、ヒツジちゃんが見せる。

 だが、風船が割れたのは、ヒツジちゃんの方だった。

 スローモーションでさえ、イクミちゃんの太刀筋を追いきれない。

 イクミちゃんが勝ち、ヒツジちゃんが負けた。それだけが、事実だ。

「いつ動いたか、チサちゃん見えた?」
「見えた。羊魔王が動いた瞬間、紙一重でかわしてカウンターを浴びせた」

 チサちゃんが、マミちゃんと一緒になって、イクミちゃんの動きを再現してくれた。

 あの動きを、とらえることができるなんて。
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