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第三章 ダンジョン社長と、魔王の力を得たクラスメイト
第23話 男装の麗人
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羽鳥 真清は女性でありながら、そのルックスから【ダンジョン王子】と呼称されていた。
また、世界のダンジョン化を進めるテロリスト集団、【デヴァステーション・ファイブ】の中核にいる存在である。
「本当はこういった、中性的なファッションが好きなんだけどね。男装してくれって、女子社員がうるさくて」
誰も聞いていないことを語りつつ、羽鳥社長は、場の空気を和ませた。
「はじめまして、勇者の生まれ変わりさんと、ダルデンヌと融合した少年くんだっけ?」
ボクたちは、自己紹介をする。
「へえ。明日葉って、明日葉神社の?」
「はい。私は、そこの巫女もやっています」
「そっか。どおりで強いわけだ。あの神社は一族全員が、冒険者じゃんか」
「そう、ですね。強いかどうかは、定かではありませんが」
謙遜がちに、緋依さんは語った。
「明日葉家は、めちゃ強いよ。というか、冒険者が弱すぎるんだ。なんの準備も訓練もさせる間もなく、アウゴがほとんど壊滅させちゃったからね。侵略の邪魔だ、つって」
はあ、と不愉快そうに、羽鳥さんはため息をつく。
「で、キミが魔王と融合した子と。ダルデンヌ……別名ダンタリオンを飼いならすのは、大変だったろう?」
「飼いならされているのは、こちらです」
「かもね。ダンタリオンは、主に思考操作を司る悪魔だ」
やっぱりダンヌさんは、メンタル操作に精通した魔物だったみたいだ。
「ありがとう。キミのおかげで、アウゴは追い詰められている」
「そうなんですか? そこまでのことをしたつもりはありません」
「いいや。ヴァレファルを殺してくれたじゃないか」
「誰のことです、それは?」
「馬面、って言えばわかるかな?」
たしか、ボクが最初に倒した、【デヴァステーション・ファイブ】のメンバーだっけ。
そんな名前だったのか。
「ヴァルフォレのエナジードレインのせいで、どれだけの冒険者が犠牲になったか。ねえ、キバガミくん」
「はい。確認が取れただけで、国内外含めて、四千人以上は彼の手で殺されました」
ヴァルフォレって魔物は、これまでエナジードレインによって多くの冒険者を殺害したらしい。
早く倒しておかなければ、パワーを吸収される冒険者を増やすだけだったという。
「それででち、真清。どうして、寝返ったでち?」
「アウゴと、意見が衝突してね」
羽鳥さんはひたすら、利益を追求していた。
しかし、アウゴは世界を破壊することしか頭になかったらしい。
「ワタシは【フォトン・ノード】の普及さえできれば、それでよかったんだよ。なのに地球がなくなってしまったら、我々はマーケットまで失ってしまうじゃないか。人のいない世界なんて、ナンセンスなのに」
しかし、アウゴは頑なに世界の破壊を望んでいるという。
「あの、フォトンなんとか……というのは?」
「キミら冒険者が、【スキルツリー】と呼んでいるものさ」
あれって、正式な名前があったのか。
「正確な名称なんて、覚えなくていいよ。全然、浸透しなかったから」
自嘲気味に、羽鳥さんは苦笑いを浮かべた。
「【フォトン・ノード】は、労働者の補助装置のつもりだったのさ」
フォトンノードはいわゆる【サイバーウェア】……つまり、肉体を改造して体内に魔力を直接埋め込んで使用する補助装置らしい。
「ちなみに、アタチは全身フォトンノードだらけでち」
チョーコ博士が、服を脱ぐ。
幼児体型の裸体ではなく、機械人形のボディみたいな身体が。
全身のあちこちに、光る球体が埋め込まれている。
「それって、魔石ですね?」
チョーコ博士に取り付けられているそれは、きれいな球体状をしているが、明らかに魔石と同じ魔力を放っていた。
「でち。魔石の正式名称が、魔石でち。魔力の結晶体を球体状にして、体内に埋め込むでち。アタチはフォトンを小型・軽量化して、より扱いやすくしていたでち」
自分の身体を実験体にして、か。
魔石を回収しているのも、そのまま活用すると危険だから。そのために、機械の身体が必要だったのか。
「ワタシも、使っているのさ。だから、パンツスーツが多いんだよね」
羽鳥さんが、スカートのスリットを少しだけずらす。
左足全体が、フォトンノードを埋めたサイバーウェアになっている。
「この足のせいで、婚期が来ないんだよねえ。アハハ……」
また、羽鳥さんが自虐ネタで笑いを取ろうとする。
「魔石って、身体にはめこんで大丈夫なんですか?」
ダンヌさんが魔石を食べても問題ないから、普通に体内に取り込んでも問題はないと思っていた。
「食べた魔物がパワーアップして凶暴化するくらいには、魔石は危険だよ」
おっとぉ……。
「だから魔石は回収して、力を抑え込んで実用化させているんだ。なんとか、魔力を地上に持っていけるように」
魔石とは相当、危ない代物だったみたい。
「で、ワタシが製品化して、販売している。今や我が社の九割が、フォトンによって運営されている。従業員の労働力や、商品の一部など」
「残りの一割は?」
「食品・飲料・衣料品だね」
口に入れる物には、さすがに魔石を使えないか。
「さて、アウゴの話だ。ワタシは、彼と意見が衝突した。もっと人と歩み寄ればいいではないかと提案してみたんだけどね。追い出されたよ」
小型タブレットを、羽鳥さんが見せてくれた。
画面には、四足歩行するビルが映っている。
また、世界のダンジョン化を進めるテロリスト集団、【デヴァステーション・ファイブ】の中核にいる存在である。
「本当はこういった、中性的なファッションが好きなんだけどね。男装してくれって、女子社員がうるさくて」
誰も聞いていないことを語りつつ、羽鳥社長は、場の空気を和ませた。
「はじめまして、勇者の生まれ変わりさんと、ダルデンヌと融合した少年くんだっけ?」
ボクたちは、自己紹介をする。
「へえ。明日葉って、明日葉神社の?」
「はい。私は、そこの巫女もやっています」
「そっか。どおりで強いわけだ。あの神社は一族全員が、冒険者じゃんか」
「そう、ですね。強いかどうかは、定かではありませんが」
謙遜がちに、緋依さんは語った。
「明日葉家は、めちゃ強いよ。というか、冒険者が弱すぎるんだ。なんの準備も訓練もさせる間もなく、アウゴがほとんど壊滅させちゃったからね。侵略の邪魔だ、つって」
はあ、と不愉快そうに、羽鳥さんはため息をつく。
「で、キミが魔王と融合した子と。ダルデンヌ……別名ダンタリオンを飼いならすのは、大変だったろう?」
「飼いならされているのは、こちらです」
「かもね。ダンタリオンは、主に思考操作を司る悪魔だ」
やっぱりダンヌさんは、メンタル操作に精通した魔物だったみたいだ。
「ありがとう。キミのおかげで、アウゴは追い詰められている」
「そうなんですか? そこまでのことをしたつもりはありません」
「いいや。ヴァレファルを殺してくれたじゃないか」
「誰のことです、それは?」
「馬面、って言えばわかるかな?」
たしか、ボクが最初に倒した、【デヴァステーション・ファイブ】のメンバーだっけ。
そんな名前だったのか。
「ヴァルフォレのエナジードレインのせいで、どれだけの冒険者が犠牲になったか。ねえ、キバガミくん」
「はい。確認が取れただけで、国内外含めて、四千人以上は彼の手で殺されました」
ヴァルフォレって魔物は、これまでエナジードレインによって多くの冒険者を殺害したらしい。
早く倒しておかなければ、パワーを吸収される冒険者を増やすだけだったという。
「それででち、真清。どうして、寝返ったでち?」
「アウゴと、意見が衝突してね」
羽鳥さんはひたすら、利益を追求していた。
しかし、アウゴは世界を破壊することしか頭になかったらしい。
「ワタシは【フォトン・ノード】の普及さえできれば、それでよかったんだよ。なのに地球がなくなってしまったら、我々はマーケットまで失ってしまうじゃないか。人のいない世界なんて、ナンセンスなのに」
しかし、アウゴは頑なに世界の破壊を望んでいるという。
「あの、フォトンなんとか……というのは?」
「キミら冒険者が、【スキルツリー】と呼んでいるものさ」
あれって、正式な名前があったのか。
「正確な名称なんて、覚えなくていいよ。全然、浸透しなかったから」
自嘲気味に、羽鳥さんは苦笑いを浮かべた。
「【フォトン・ノード】は、労働者の補助装置のつもりだったのさ」
フォトンノードはいわゆる【サイバーウェア】……つまり、肉体を改造して体内に魔力を直接埋め込んで使用する補助装置らしい。
「ちなみに、アタチは全身フォトンノードだらけでち」
チョーコ博士が、服を脱ぐ。
幼児体型の裸体ではなく、機械人形のボディみたいな身体が。
全身のあちこちに、光る球体が埋め込まれている。
「それって、魔石ですね?」
チョーコ博士に取り付けられているそれは、きれいな球体状をしているが、明らかに魔石と同じ魔力を放っていた。
「でち。魔石の正式名称が、魔石でち。魔力の結晶体を球体状にして、体内に埋め込むでち。アタチはフォトンを小型・軽量化して、より扱いやすくしていたでち」
自分の身体を実験体にして、か。
魔石を回収しているのも、そのまま活用すると危険だから。そのために、機械の身体が必要だったのか。
「ワタシも、使っているのさ。だから、パンツスーツが多いんだよね」
羽鳥さんが、スカートのスリットを少しだけずらす。
左足全体が、フォトンノードを埋めたサイバーウェアになっている。
「この足のせいで、婚期が来ないんだよねえ。アハハ……」
また、羽鳥さんが自虐ネタで笑いを取ろうとする。
「魔石って、身体にはめこんで大丈夫なんですか?」
ダンヌさんが魔石を食べても問題ないから、普通に体内に取り込んでも問題はないと思っていた。
「食べた魔物がパワーアップして凶暴化するくらいには、魔石は危険だよ」
おっとぉ……。
「だから魔石は回収して、力を抑え込んで実用化させているんだ。なんとか、魔力を地上に持っていけるように」
魔石とは相当、危ない代物だったみたい。
「で、ワタシが製品化して、販売している。今や我が社の九割が、フォトンによって運営されている。従業員の労働力や、商品の一部など」
「残りの一割は?」
「食品・飲料・衣料品だね」
口に入れる物には、さすがに魔石を使えないか。
「さて、アウゴの話だ。ワタシは、彼と意見が衝突した。もっと人と歩み寄ればいいではないかと提案してみたんだけどね。追い出されたよ」
小型タブレットを、羽鳥さんが見せてくれた。
画面には、四足歩行するビルが映っている。
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