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第三章 ダンジョン社長と、魔王の力を得たクラスメイト
第24話 移動要塞 フォトン・コーポレーション本社
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「全員に見えるように、我が屋敷のモニタで見られるようにするでち」
タブレットから、博士の家にある巨大モニタに映像を映し直す。
四足歩行のビルディングが、街を踏み潰している。
ビルの足は鉄骨でできていて、鉄板が家や店を踏んづけていた。
戦車や戦闘用ヘリが攻撃しているが、ビルは弾をまったく受け付けない。
「あれは、フォトンコーポレーション。ウチの本社だよ」
「え、あれ、会社なんですか?」
「ああ。今では化け物になっているが」
ドシンドシンと、街を壊しながらどこかへ進んでいる。
「どこへ向かっているんです?」
「どこでもないさ。特に目指す目的地なんてないよ。アウゴはとうとう、実力行使に出たらしい。おそらく、ダンジョン化における地ならしだろうね」
街の破壊すること自体が、目的みたい。
「あちらが攻撃とかは、してこないんですか?」
「したくても、できない。フォトンは、地球ではロクに作動しないからね。動力も、大したことはない。せいぜい、街を踏み潰して回るしかないのさ」
ゴブリンやスライム程度なら、いくらでもフォトンは取れる。それでも、ボタン電池くらいの電力しか手に入らない。とはいえ、高威力のフォトンを持つ魔物は強すぎる。
「だから、魔王クラスのフォトンが必要だったわけなんだけどね。使い手の命を伸ばす方に、使われちゃったからなあ」
「どうしてカトウ アウゴは、物理的な都市破壊に、計画が移行したんですか? ダンジョン化でさえ、十分に脅威なのに」
緋依さんが、羽鳥社長に問いかけた。
「ダンジョンの中では、キミ等を倒せないからだろう。ダルデンヌの力を得たとはいえ、平井 菜音くんは人間だ。ダンジョンで倒せると思ったんだろうね。だが、あてが外れた」
ボクは生き残り、世界の主要ダンジョンは消滅しつつある。
「おそらくあのビルには、現存するすべてのフォトンが使用されている。内部には入れず、外からの攻撃は通じない」
歩くビルの動力としてしか、フォトンは使えないみたいだ。
「どうしてです? フォトンがあれば、無敵だと思うんですが」
「フォトンはちゃんと制御しないと、すぐに地球の大気に霧散してしまうんだ。キミたちもダンジョンから出ると、スキルを使えなくなるだろ?」
「はい」
「ダンジョンに入っている間だけしか、フォトンの効果は発揮されないんだ。魔力はそれだけ、地球との相性が最悪なんだよ。そんな世界を嫌って、アウゴは地球を作り変えようとしているんだ」
意のままに魔法を操れる世界を作ることが、カトウ・アウゴの目的らしい。
「カトウアウゴは、自分を地球へ転生させた神を憎んでいる。彼の矛先は、常に地球の神に向けられているんだ。他は、どうでもいい。そのカギとなるのが、同じように転生してきた勇者の魂を持つ、明日葉 緋依くんなんだよ」
あーあ。なんだか、読めてきたな。
「緋依さん、どうやらアウゴって、キミを仲間だとかは思っていないんじゃないかな?」
「そうね。地球から出る方法か、地球で魔法を発揮する方法を探るためだけに、私をさらおうとしていたみたいね」
羽鳥社長も、ボクたちと同じ考えに至ったみたいだ。
「ナルシストの彼に仲間意識なんてないから、おかしいとは思っていたんだよね。なるほど、そういうことなら、すべての行動に辻褄が合う。どうして、緋依くんに執着していたのか。ふむふむ」
そう考えると、ホントにカトウ・アウゴってクズなんだな。
「もっと知的な相手だと思っていたよ。アウゴって」
「シリアルキラーなんて、そんなもんだよ。彼のような凶悪犯は、たいてい凶暴で粗野なものさ」
カトウ・アウゴの本性は、ただの凶暴な魔物と変わらないと、羽鳥社長は断言した。
しかし、ボクが切り札である馬面の魔物を殺したことで、アウゴ側も詰んでしまったと。
「冒険者も数を減らして、緋依くんも捕まえて、すべて今まで順調に進んでいたのに、キミがすべて台無しにした。ナイスなタイミングだったんだよ。ホントに」
ボクがダンヌさんと組んでいなかったら、世界は終わっていたわけか。
「しかし、油断はできない。どうやって中に入るか」
一応、構造を聞くと、本社はドーナツ状になっていて、縦穴を抜けていけばいい。
「とはいえ、誰が入っていくか」
「ボクが行きます」
「わたしも」と、緋依さんも立候補する。
「中に入る方法は、あります。あなたの車が、犠牲になるんですが」
ボクが作戦内容を告げると、羽鳥社長は大笑いした。
「これは、傑作だ! すばらしい。ダルデンヌが、融合する相手にキミを選んだ理由が、よくわかるよ! 最高だな、キミは!」
満足気に、羽鳥社長がヒザを叩く。
「あいわかった。助かる。では、ワタシの自家用車をあげよう。ぶっ潰してくれて構わないよ」
「ありがとうございます」
「ただし帰りは、ルゥさんに連れて帰ってもらってくれ。すぐそこに、待機させる」
「はい。心得ました」
「それと、もうひとつ。死ぬなよ、ふたりとも」
ボクと緋依さんは、大きくうなずいた。
タブレットから、博士の家にある巨大モニタに映像を映し直す。
四足歩行のビルディングが、街を踏み潰している。
ビルの足は鉄骨でできていて、鉄板が家や店を踏んづけていた。
戦車や戦闘用ヘリが攻撃しているが、ビルは弾をまったく受け付けない。
「あれは、フォトンコーポレーション。ウチの本社だよ」
「え、あれ、会社なんですか?」
「ああ。今では化け物になっているが」
ドシンドシンと、街を壊しながらどこかへ進んでいる。
「どこへ向かっているんです?」
「どこでもないさ。特に目指す目的地なんてないよ。アウゴはとうとう、実力行使に出たらしい。おそらく、ダンジョン化における地ならしだろうね」
街の破壊すること自体が、目的みたい。
「あちらが攻撃とかは、してこないんですか?」
「したくても、できない。フォトンは、地球ではロクに作動しないからね。動力も、大したことはない。せいぜい、街を踏み潰して回るしかないのさ」
ゴブリンやスライム程度なら、いくらでもフォトンは取れる。それでも、ボタン電池くらいの電力しか手に入らない。とはいえ、高威力のフォトンを持つ魔物は強すぎる。
「だから、魔王クラスのフォトンが必要だったわけなんだけどね。使い手の命を伸ばす方に、使われちゃったからなあ」
「どうしてカトウ アウゴは、物理的な都市破壊に、計画が移行したんですか? ダンジョン化でさえ、十分に脅威なのに」
緋依さんが、羽鳥社長に問いかけた。
「ダンジョンの中では、キミ等を倒せないからだろう。ダルデンヌの力を得たとはいえ、平井 菜音くんは人間だ。ダンジョンで倒せると思ったんだろうね。だが、あてが外れた」
ボクは生き残り、世界の主要ダンジョンは消滅しつつある。
「おそらくあのビルには、現存するすべてのフォトンが使用されている。内部には入れず、外からの攻撃は通じない」
歩くビルの動力としてしか、フォトンは使えないみたいだ。
「どうしてです? フォトンがあれば、無敵だと思うんですが」
「フォトンはちゃんと制御しないと、すぐに地球の大気に霧散してしまうんだ。キミたちもダンジョンから出ると、スキルを使えなくなるだろ?」
「はい」
「ダンジョンに入っている間だけしか、フォトンの効果は発揮されないんだ。魔力はそれだけ、地球との相性が最悪なんだよ。そんな世界を嫌って、アウゴは地球を作り変えようとしているんだ」
意のままに魔法を操れる世界を作ることが、カトウ・アウゴの目的らしい。
「カトウアウゴは、自分を地球へ転生させた神を憎んでいる。彼の矛先は、常に地球の神に向けられているんだ。他は、どうでもいい。そのカギとなるのが、同じように転生してきた勇者の魂を持つ、明日葉 緋依くんなんだよ」
あーあ。なんだか、読めてきたな。
「緋依さん、どうやらアウゴって、キミを仲間だとかは思っていないんじゃないかな?」
「そうね。地球から出る方法か、地球で魔法を発揮する方法を探るためだけに、私をさらおうとしていたみたいね」
羽鳥社長も、ボクたちと同じ考えに至ったみたいだ。
「ナルシストの彼に仲間意識なんてないから、おかしいとは思っていたんだよね。なるほど、そういうことなら、すべての行動に辻褄が合う。どうして、緋依くんに執着していたのか。ふむふむ」
そう考えると、ホントにカトウ・アウゴってクズなんだな。
「もっと知的な相手だと思っていたよ。アウゴって」
「シリアルキラーなんて、そんなもんだよ。彼のような凶悪犯は、たいてい凶暴で粗野なものさ」
カトウ・アウゴの本性は、ただの凶暴な魔物と変わらないと、羽鳥社長は断言した。
しかし、ボクが切り札である馬面の魔物を殺したことで、アウゴ側も詰んでしまったと。
「冒険者も数を減らして、緋依くんも捕まえて、すべて今まで順調に進んでいたのに、キミがすべて台無しにした。ナイスなタイミングだったんだよ。ホントに」
ボクがダンヌさんと組んでいなかったら、世界は終わっていたわけか。
「しかし、油断はできない。どうやって中に入るか」
一応、構造を聞くと、本社はドーナツ状になっていて、縦穴を抜けていけばいい。
「とはいえ、誰が入っていくか」
「ボクが行きます」
「わたしも」と、緋依さんも立候補する。
「中に入る方法は、あります。あなたの車が、犠牲になるんですが」
ボクが作戦内容を告げると、羽鳥社長は大笑いした。
「これは、傑作だ! すばらしい。ダルデンヌが、融合する相手にキミを選んだ理由が、よくわかるよ! 最高だな、キミは!」
満足気に、羽鳥社長がヒザを叩く。
「あいわかった。助かる。では、ワタシの自家用車をあげよう。ぶっ潰してくれて構わないよ」
「ありがとうございます」
「ただし帰りは、ルゥさんに連れて帰ってもらってくれ。すぐそこに、待機させる」
「はい。心得ました」
「それと、もうひとつ。死ぬなよ、ふたりとも」
ボクと緋依さんは、大きくうなずいた。
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