上 下
25 / 37
第三章 ダンジョン社長と、魔王の力を得たクラスメイト

第24話 移動要塞 フォトン・コーポレーション本社

しおりを挟む
「全員に見えるように、我が屋敷のモニタで見られるようにするでち」
 
 タブレットから、博士の家にある巨大モニタに映像を映し直す。

 四足歩行のビルディングが、街を踏み潰している。

 ビルの足は鉄骨でできていて、鉄板が家や店を踏んづけていた。

 戦車や戦闘用ヘリが攻撃しているが、ビルは弾をまったく受け付けない。 

「あれは、フォトンコーポレーション。ウチの本社だよ」

「え、あれ、会社なんですか?」

「ああ。今では化け物になっているが」

 ドシンドシンと、街を壊しながらどこかへ進んでいる。

「どこへ向かっているんです?」
 
「どこでもないさ。特に目指す目的地なんてないよ。アウゴはとうとう、実力行使に出たらしい。おそらく、ダンジョン化における地ならしだろうね」

 街の破壊すること自体が、目的みたい。
 
「あちらが攻撃とかは、してこないんですか?」
 
「したくても、できない。フォトンは、地球ではロクに作動しないからね。動力も、大したことはない。せいぜい、街を踏み潰して回るしかないのさ」

 ゴブリンやスライム程度なら、いくらでもフォトンは取れる。それでも、ボタン電池くらいの電力しか手に入らない。とはいえ、高威力のフォトンを持つ魔物は強すぎる。

「だから、魔王クラスのフォトンが必要だったわけなんだけどね。使い手の命を伸ばす方に、使われちゃったからなあ」

「どうしてカトウ アウゴは、物理的な都市破壊に、計画が移行したんですか? ダンジョン化でさえ、十分に脅威なのに」

 緋依ヒヨリさんが、羽鳥社長に問いかけた。
 
「ダンジョンの中では、キミ等を倒せないからだろう。ダルデンヌの力を得たとはいえ、平井ヒライ 菜音ナオトくんは人間だ。ダンジョンで倒せると思ったんだろうね。だが、あてが外れた」

 ボクは生き残り、世界の主要ダンジョンは消滅しつつある。 

「おそらくあのビルには、現存するすべてのフォトンが使用されている。内部には入れず、外からの攻撃は通じない」
 
 歩くビルの動力としてしか、フォトンは使えないみたいだ。

「どうしてです? フォトンがあれば、無敵だと思うんですが」

「フォトンはちゃんと制御しないと、すぐに地球の大気に霧散してしまうんだ。キミたちもダンジョンから出ると、スキルを使えなくなるだろ?」

「はい」

「ダンジョンに入っている間だけしか、フォトンの効果は発揮されないんだ。魔力はそれだけ、地球との相性が最悪なんだよ。そんな世界を嫌って、アウゴは地球を作り変えようとしているんだ」

 意のままに魔法を操れる世界を作ることが、カトウ・アウゴの目的らしい。

「カトウアウゴは、自分を地球へ転生させた神を憎んでいる。彼の矛先は、常に地球の神に向けられているんだ。他は、どうでもいい。そのカギとなるのが、同じように転生してきた勇者の魂を持つ、明日葉アシタバ 緋依ヒヨリくんなんだよ」


 あーあ。なんだか、読めてきたな。

「緋依さん、どうやらアウゴって、キミを仲間だとかは思っていないんじゃないかな?」

「そうね。地球から出る方法か、地球で魔法を発揮する方法を探るためだけに、私をさらおうとしていたみたいね」

 羽鳥社長も、ボクたちと同じ考えに至ったみたいだ。

「ナルシストの彼に仲間意識なんてないから、おかしいとは思っていたんだよね。なるほど、そういうことなら、すべての行動に辻褄が合う。どうして、緋依くんに執着していたのか。ふむふむ」

 そう考えると、ホントにカトウ・アウゴってクズなんだな。

「もっと知的な相手だと思っていたよ。アウゴって」

「シリアルキラーなんて、そんなもんだよ。彼のような凶悪犯は、たいてい凶暴で粗野なものさ」
 
 カトウ・アウゴの本性は、ただの凶暴な魔物と変わらないと、羽鳥社長は断言した。
 
 
 しかし、ボクが切り札である馬面の魔物を殺したことで、アウゴ側も詰んでしまったと。




「冒険者も数を減らして、緋依くんも捕まえて、すべて今まで順調に進んでいたのに、キミがすべて台無しにした。ナイスなタイミングだったんだよ。ホントに」

 ボクがダンヌさんと組んでいなかったら、世界は終わっていたわけか。

「しかし、油断はできない。どうやって中に入るか」


 一応、構造を聞くと、本社はドーナツ状になっていて、縦穴を抜けていけばいい。

「とはいえ、誰が入っていくか」

「ボクが行きます」

「わたしも」と、緋依さんも立候補する。

「中に入る方法は、あります。あなたの車が、犠牲になるんですが」

 ボクが作戦内容を告げると、羽鳥社長は大笑いした。

「これは、傑作だ! すばらしい。ダルデンヌが、融合する相手にキミを選んだ理由が、よくわかるよ! 最高だな、キミは!」

 満足気に、羽鳥社長がヒザを叩く。
 
「あいわかった。助かる。では、ワタシの自家用車をあげよう。ぶっ潰してくれて構わないよ」

「ありがとうございます」
 
「ただし帰りは、ルゥさんに連れて帰ってもらってくれ。すぐそこに、待機させる」

「はい。心得ました」

「それと、もうひとつ。死ぬなよ、ふたりとも」

 ボクと緋依さんは、大きくうなずいた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

誰もシナリオ通りに動いてくれないんですけど!

BL / 連載中 24h.ポイント:26,015pt お気に入り:2,934

万能ネットショッピングで、ほのぼの街づくり!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,016pt お気に入り:20

産むし 増えるし 地に満ちる 私がママになるんだよ!!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:384pt お気に入り:182

処理中です...