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第四章 王都で、相棒そっくりの女性と出会う

第48話 ドルリー国の、チャラい国王

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 オレたちがドルリー国王や姫に会えるように、グレン王子は書状を書いてくれた。

「これを見せれば、ドルリー国王と会うことができよう。姫の名はレティシア殿という」
「感謝する。じゃあ、行ってくる」

 馬車で数日かけて、隣国ドルリーへ。

 都会的だったペンフォールドとは違い、ドルリーは魔法大国というだけあって自然と共存しているような作りだ。作りも古い。伝統を重んじている印象だ。

 クチバシのついたラクダが、オレたちの馬車を通り過ぎていく。

「ピエラにとっては、天国のような場所じゃないか?」
「そうね。ボクの肌が、ここはすごいって教えてくれているよ」

 身震いしながら、ピエラが応えた。

 手頃なところに馬車を止めて、徒歩で城へ向かう。

 露店には、中東アジア系の雑貨などが並んでいた。屋台の料理も、香草独特の香りが漂う。ひとくち食べてみると、少し薬品の匂いが先に来て、肉のウマ味が飛び込んできた。

「ペンフォールドとは、雰囲気が違うな」
「クニミツ、新婚旅行はここにしよう」

 モモコが、ウキウキしながら話す。

「気に入ったか? だったら、ここでしばらく過ごすか」
「ペンフォールドのいかにもなファンタジー国家も悪くない。でも、料理はこっちの方がスキかも」
「オレもなんだ。じゃあ、決まりだな」

 ひとまず旅行の話は置いておく。とにかく、姫様と会わねば。

 城の門前にいる兵士に、書状を渡す。

「お通りください」

 やけに、兵隊が礼儀正しい。

 オレたちが、ペンフォールドを助けた英雄だからだとか。実際に救ったのは、あのクノイチなのだが?

 国王には、簡単に会うことができた。

「ここの国王、めちゃ若いね」
「ああ。まだ三〇代じゃないか?」

 しかし、年頃の娘がいると聞くから、ある程度の歳はいっているはず。でも髪の色が、ピンクだし。王様というより、お笑い芸人みたいだ。

「ペンフォールド王がよこしてくれた冒険者というのは、君らかい?」
「はい」
「敬語はいいよ。君ら、異世界からの人っしょ? 理屈も違うはずだよね」
「ん? ま、まあ」

 チャラいな、この王様って。ペンフォールドは、いかにも「王様!」って感じだったのに。

「オレっちの髪、気になる? 染めてんだよ魔法で」

 ドルリー王によると、魔法を長年扱っているために、異世界人などの話などは日常的に聞いているとか。オレたちが地球から来たと話しても、国王はたいして驚かない。

「異世界人ってのは、日常的にこの世界に来ているのか?」
「んなわけないじゃん。この世界に来たのは、あんたらくらいだと思うよ」

『よその世界では頻繁に来ている』って文献は、遺跡から発掘されているらしいが。

「娘の話だったよね? 今呼んでっから待ってて」
「助かる」
「でも、戦争ふっかけようってこっちが考えているなら、間違いね」

 そうなのか。

「オレっち国ってさ、こんなじゃん? いわゆる『小さい政治』を目指しているわけ」

 たしかにドルリーの領土は、ペンフォールドの三分の一しかない。ただ小国でありながら、政治基盤はしっかりしているようだ。どんぶり勘定で運営されている国ではないと、見て回っていればわかる。

「ただねえ、なーんか王都には警戒されちゃってるんだよね」

 肘掛けに、国王が頬杖をつく。足を組んで、ため息を付いた。

「属国になるつもりはないんだけどさぁ、もうちょい仲良くできねーかなーって」

 なまじ完成している国だけあり、ペンフォールドから目をつけられているという。戦争をふっかけられるのではないかと。

「乗っ取るとか、戦争を起こすなんて気は、さらさらないよ。攻めてもこっちにメリットねえもん。言ったっしょ? 小さい政府を目指しているって。国家がデカくなりすぎんだよ。戦争すっと」

 やる気のない目で、ドルリー国王がオレを見つめる。

「縁談だってよお、レティのヤツが結婚したーい、っつーから進めたんだよ。オレっちとしてもさ、娘にはさっさと嫁に行ってもらいたいわけよ」

 やはり彼が、レティシア姫の父親らしい。

 親がこんなチャラいから、姫もギャルっぽいんだろうか?

「異世界人が来たってマ!?」

 ドアがドンと開き、ケバい少女がミニスカをフリッフリとと揺らして近づいてくる。

「おー、レティ」

 やはりだ。期待を裏切らない。

 レティ姫はやや銀の入った金髪である。こちらも、染めている感じだ。

「オヤジ、ちょっとこの子借りるよ」
「おー」
「ちょっとアンタ! こっち来な!」

 急に、レティ姫がモモコの手首を掴む。

 ドルリー王も、彼女を止めない。

「ちょちょちょ」
「まあまあいいから。アンタをいじめるつもりは、ないからさ」

 あまりに強引な行為に、モモコはされるがままだ。

「アニエス、連れてきた」

 姫はメイドの前に、モモコを立たせた。

「お見事です、お嬢さま」

 アニエスと呼ばれたメイドを見て、オレたちは息を呑む。

 彼女こそ、まさしくモモコそっくりの女性だったから。
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