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最終章 「黒幕は身内」とか!

第60話 はじめての共同作業は、敵討ち

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「私の本当の両親が、クニミツの友だち?」
「ああ」

 だから、コイツだけは許さん。

「吉備の娘だから見込みがあると思っていたが、しょせん劣等種だったか。両親を殺害しても、心は傷まなかったようだが」
「? 私が、義理の両親を?」
「うむ。お前たちが倒したスキュラとヴリトラ、あれはお前の育ての親だ。もっとも怪物化したことで、原型はとどめておらなんだがな。お前の記憶も、まったくなくしていた」

 自身が獲得した魔王の力、その一部を、鬼龍は部下に分けてやったそうだ。

「動揺しているか、モモコ?」
「ううん、全然。むしろスカッとした」

 よほど嫌いだったんだな。

「モモコよ。貴様は、本当の家族の元へ送ってやる。吉備の元へな」
「悪いが、死ぬのはテメエだ鬼龍。オレの手でぶっ殺してやる」
「ほう。お前は無関係だが?」
「いや。今やっとオレにもお前を殺す動機ができた。テメエは、ダチの仇だ」

 グレートソードを、鬼龍に突きつける。

「吉備の友人か。ならばよし。お前もモモコ共々冥府へ送ろう。モモコと夫婦の関係らしいが、永遠に再会できぬほど遠くへ堕としてやる」
「テメエこそ、一生地上へ出られないほどの地獄へ送ってやるよ」
「フン、よろしい。ならばやってみせよ」

 オレはドン、と足を踏み込んだ。

「むう!?」

 鬼龍が対応できなかった。

 剣を持つ鬼龍の腕を、グレートソードで折る。

「ぐおおお!」
「これはスケルトン夫婦の分だ!」

 更にオレは追撃し、鬼龍の足を踏み潰す。

「よそ見」

 痛みで呻く鬼龍の背後から、モモコがミニガンに変形させた銃を乱射した。直線的な攻撃では、のけぞりでかわされると思ったからだろう。モモコは拡散攻撃に切り替えた。

 鬼龍は魔法で作った障壁で防ぐが、モモコは構わず弾丸を叩き込む。

「ぬう、なんと!?」

 ミニガンの銃弾が、障壁を突き抜けた。

 モモコはなおもゼロ距離でミニガンを撃ち込んでいく。  

「ば、バカな! どうして貴様らに、そこまでの腕が!? 我は、魔王の力を!」
「お前は攻撃力は高い。しかし強すぎて、防御がおろそかなんだ。スキだらけなんだよ」

 だから、強固な火力で押し切られると弱い。

 スケルトンの攻撃もオレたちのキャノン攻撃も、ムダではなかったのだ。

 オレたちがキレてレベルアップしているのも、手伝っているかも。

「一番の理由は、魔王の力を信じすぎたな。テメエだけの力で戦っていたら、油断しなかったろうぜ」
「お、おの、っれええ!」

 鬼龍が無理やり再生して、反撃してきた。

 しかし、ムダに体力を費やした敵の攻撃なんぞ、今のオレたちには通じない。

「はじめての共同作業は、祖父のカットとしよう」
「賛成」

 モモコも、剣を装備する。

 逆手に持ったモモコの剣が、鬼龍のノドを切り裂いた。

 オレのグレートソードが、鬼龍の胴を斜めに払う。

「とどめだ」
「ずっと、この時を待っていた」

 モモコとオレの剣が、鬼龍の腹を同時に突き刺す。

「ば、バカな。我は魔王も取り込み、永遠の命を、得て」
「凶悪な再生能力が、あるだけだろ」

 魔王の持つエネルギーなんて、しょせんはそんなものなのだ。鬼龍も、魔王のウワサに踊らされたな。

 剣を抜くと、鬼龍が床に転がった。

「女神、聞こえるか?」

 オレは、冒険者用の端末から女神との通話を試みる。

 ムリだと分かっているが、オレは女神に電話をかけずにはいられない。

『どうされました、クニミツさん?』

 おお、女神が電話に出たぞ。

「オレたちにチート能力をくれると言って、まだもらっていなかったよな」

 彼女はオレたちに、奇跡的な力を持たせてくれると言っていた。

『ええ。その権利はまだ保持しています』

 銃を持たせて欲しい程度では、まだオレにふさわしい奇跡には、到達していないという。

『クニミツさん、なにか、ご希望ができましたか?』

 できた。

桃矢とうやを、オレのダチを生き返らせてくれ」
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