失業暗黒騎士、勇者の姪である姫が作った街の門番に転職するも、姫様のほうが明らかに強い

椎名 富比路

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第二章 元・魔王四天王 シモン・セルバンデスの転職後の初陣

第16話 雨雲のマガタマ

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 砦が開拓されると、アクータの領地を狙って他国が因縁をつけてくるという。

「どうして?」

「強すぎる文明を一つの国が持つことは、危険だと」
 
「言いがかりだっ」
 
 こちらは未開の地だったアクータを、人の住める場所にまで発展させたというのに。頃合いがよくなってきたら、奪い取ろうなんて。

「第一、王女は他の世界なんかにケンカを売っていないんだよな? あっちはアクータに攻めて来ている」

「そうですよ」

 ならばヒナ王女は、アクータの防衛をしているに過ぎないわけだ。その副産物として、ただの廃墟砦が塔にまで成長した。
 
「要は、おいしいトコだけをいただこうって魂胆だろ? 立派な国の、やることじゃないな」

「はい。ですから我々も、徹底的に抗戦致します」

「だよな、ヒナ王女。あんたは、そういう人だ」

 手塩にかけて育てた国を、みすみす人に明け渡すようなマネなど、この人はしない。

「だったら、アクータを守るためのようなアイテムが欲しかったか? 何も考えずに、きれいな珠をプレゼントしてしまったが」

「いえ。モンが自腹を切ってくださった上で、私にくれたのでしょう? ありがとうございます」

 俺は、適当に選んだだけなのだが。

「そのアイテムにも、ちゃんと効果はありまっせ。役に立つと思いまっさ」
 
 お茶をぐいっと飲んで、ウィローは「ほな」と立ち去った。

「我々も、外へ出ましょう。このマガタマの効果を、モンにお見せしますよ」
 
 ヒナ王女と、アクータに戻る。

「一番高いところに行きましょう」

 俺はヒナ王女に連れられて、一番高い建物の上まで登った。

「ここは、時計塔です。向こうの国まで、見ることができるんですよ」

 展望台から、ヒナ王女は地平線の先を見つめている。

「あんたのいうとおりだな。森が拡大している」

 ピーザンのいる山が、一際盛り上がっていた。領地が多少拡大すると聞いたが、本当だったとは。
 
 ヒナ王女が、塔のてっぺんでマガタマを握った。

 マガタマが、光を放つ。

 森の上空に、雨雲が広がっていった。

 たちまち、雨が森に降り注ぐ。

「うわーっ、雨だー。洗濯物を取り込めー」

 森の住人であるピーザンが、周囲に指示を出している声が。枝に干していた洗濯物を、仲間とともに取り込んでいる。

「あらーごめんなさーい」

 ヒナ王女が、森の方へ呼びかけた。

「ヒナがやったのか。ならいいやー」

 ピーザンが、こちらに手を振る。
 
「この宝玉は、【雨雲のマガタマ】といいます。使用すれば、雨を降らせることができるのです」

「じゃあ、【活性化のじょうろ】は必要ない?」

「作物の活性化には、必要でしょう。ですが、定期的な水やり、川や池などの水不足は、解消されるでしょう」

 この土地にとって、水不足は深刻な問題だ。地下水が枯渇すれば、住民たちの命に関わる。

 俺は知らない間に、アークタにとってもっとも必要とされるアイテムを手に取ったってわけか。

「実際、ここと繋がっている川に、毒を流されそうになったことがあります」

「ホントか。どうなった?」

「流した国家には、滅んでいただきました」

 なんと……。
 
「住民にまで、被害は及んでいません。関係者だけが乗り込んできたので、始末を」

 ヒナ王女が話していると、外が騒々しくなる。

「ブレンダ、何事ですか?」

「イルトリア軍だ。また凝りもせずに来たぞ」

 王女は、ブレンダの報告を聞く。

 なんだか、ヒナ王女が不敵な笑みを浮かべていた。
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