失業暗黒騎士、勇者の姪である姫が作った街の門番に転職するも、姫様のほうが明らかに強い

椎名 富比路

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第三章 元暗黒騎士、副業する

第28話 ヒナの正体

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 ヒナ王女が、人間じゃない? しかも、他次元の向こうから来た者の子孫、だって?

「王女、今の話は本当か?」

「ええ。ウソ偽りはございません」

 マジか。

「異界からの侵略者を倒したことで、私の父は子を得たと言います。それが私なのだそうです。父はそのときの負傷で、今も立ち上がれませんが」

 多次元から侵略してきた怪物を倒すことで、報酬を得られる。

 しかし、生命体まで手に入れられるとは。

「おふくろさんの顔とかは、覚えていないのか?」

 俺が聞くと、ヒナ王女も首を振った。

「産まれたときから、乳母の存在しか知りません」

 王女に、気にしている様子は見えない。

「母である王妃は、いるにはいたのですが、彼女は病気で、子どもをなせませんでした」

 ヒナ王女は、母である王妃を、写真や肖像画でしか知らないそうだ。

「これで、わかったでしょう。シモン・セルバンデス。あなたが仕えている存在は、人を超えていますのよ。いつか必ず、人類に牙を剥くかと」
 
 ジリーク姫が、神輿から降りる。

「俺の名前を、知っているとは」

「これの送り主に、お名前が書かれてございましてよ」

 モナカの空き箱を、姫が見せてきた。
 たしかに、俺の名前が載っている。ブレンダや、ピーザンの名前も。

「ヒナ王女、俺の名前で出したのか?」

「私の名前だけでお送りすると、角が立つので」

 自分がアンタッチャブルな存在だという、自覚はあるんだな。

「名前がモン・バンになっているが、よく俺だってわかったな?」

「モン・バンという名前の強者は、知りませんわ。おそらく、ヒナ王女が認めた強者を隠す偽名かと。で、そこまでヒナ王女の信頼を得られる人物の数など、多くはありませんわ。それら要素から、候補を絞り出しましたまで」

 そこまで、推理するとはねえ。

「決着を付けなされませ、ヒナ王女。いや、異形ヒナ」

 手をすっと上げて、ジリーク姫がオーラを発した。

 オーラが、ドラゴンの形を発する。

 このオーラは、壮大だな。

「ヒナ王女、俺が戦っても、構わないか?」

「モン・バン? あなたが?」

「あんたを守る必要性なんて、俺は感じていない。しかし、どうもいけない。体がうずいて、仕方がないんだ」
 
 俺は、ジリーク姫の方を向く。

「ブレンダ、俺の装備は、修繕できたか?」

「バッチリだ」

 ブレンダが、ヨロイや武器を俺に投げ渡す。

 一瞬で、俺は黒いヨロイを装着した。

 黒雷を放つ角も、相変わらずの手触りである。
 
「そういうわけなんだが?」

「わたくしは、一向に構いませんが。この塔の住人など、全滅させるつもりでしたので。その時期が早まるだけのこと」

 ジリーク姫のオーラが、実体化した。ドレスをイメージした、プロテクターのような姿に変わる。
 
「これは撃鱗装げきりんしょう。わたくしの本気モードですわ」

「いいね。ちょうど多次元からの敵が物足りんと思っていたところなんだ」
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