失業暗黒騎士、勇者の姪である姫が作った街の門番に転職するも、姫様のほうが明らかに強い

椎名 富比路

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第三章 元暗黒騎士、副業する

第29話 久々の本気

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 俺がやる気満々で準備をしていると、ジリーク姫がムスッとした顔に。

「随分と、みなぎっておりますの。たいていの相手なら、この時点で震え上がっておりますのに」

「あんたくらいが、ちょうどいいんだよ」

 ジリーク姫が、俺の発言に不機嫌度を増す。

「わかりました。ヒナ王女の前に、あなたを血祭りにして差し上げますわ」

「それくらいで頼む」

 俺は、黒雷を最大出力まで上げた。

「気をつけろよ、モン」

「まあ、見ていろよ」

 ところで、と、俺は切り出す。

「こちらが勝ったら、なにがもらえるんだ? ドラゴンの土地か?」

「ええ。金輪際そちらに手出ししない上、支配下に入りますわ」

 ジリーク姫は、約束してくれた。

「ホントだな?」
 
「ドランゴ国に、二言はございません」

 人間相手なら、口約束などなんの効果もない。しかし、相手はドラゴンだ。言葉がそのまま、力になる。

「場所を変えよう。この塔がぶっ壊れそうだ」

 ピーザンが、自分たちの森へ来いと、案内を買ってでてくれた。

「同族のよしみだぞ。遠慮なく戦ってくれ」

 戦争レベルの戦いになるが、ピーザンは自分たちの領域を用意する。

「ここなら、誰にも邪魔されないぞ。思う存分、戦っても大丈夫だぞ」

「大義ですわ、同士ピーザン」

「アタイは、同士ではないぞ。同じドラゴン族でも、アタイはヒナの味方だぞ。ヒナがどんなやつでもなー」

 ピーザンにとっては、ヒナがいかなる存在だろうと支持すると。

 それは、俺も同じ気持ちだ。
 
「よろしい。黒騎士シモンの後は、あなたも始末いたします。同族のよしみで、楽に」

「それは、モン・バンをやっつけてからにしろよなー」

 挑発されても、ピーザンは余裕である。

「では、参ります」

 突如、ジリーク姫が視界から消えた。

「【チェイン・ライトニング・スピア】!」
 
 俺も、黒雷を発動させる。

「なるほど、こういう仕組みですか」

 ジリーク姫が、俺の雷を手で掴む。

 これでは、ワープできない。

 さすがドラゴンだ。こちらの動きに、ついてこられるだけではない。足止めまで。

「移動手段のみに、特化した能力とは。魔族とは珍しい特技を、お持ちで」

「早いだけが、取り柄なんでね」

「ご自慢の項目に、早死もお加えなされませ。【ドラゴン・ハング】!」

 さっき黒雷を掴んだ手が、迫ってきた。俺のノドを、締め上げる気か。

 俺の武器は、雷を放つ槍ではない。

「ぶん殴り、ごめんあそばせ、姫様!」

 俺は、姫の肘に蹴りを放つ。軌道を、どうにかそらした。

 そらすだけが限界で、スピードまでは落ちない。

 移動手段を止めた程度で脅威にならないと見たのか、ジリーク姫は槍を手放す。

 俺の頬に、鮮血が伝った。顔面が切断されるほどの、力だったな。回避していなかったら、ノドを潰されていた。

「いいね。このピリつき感。久しいな。勇者と戦えたら、こんな気分だったんだろうな」
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