ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に

椎名 富比路

文字の大きさ
26 / 80
第三章 炎VS氷! 魔剣同士の激突

第26話 魔剣作成のヒント

しおりを挟む
 わたしたちは、シューくんの工房へ通された。

「キャルさん、クレアさん。ここが、ボクのラボです」

 見たこともない武器や装備品が、たくさんある。

 腕に取り付けるタイプのクロスボウ、街の城壁から撃ち出す大砲、マジックシールドなど。

「こちらは、なんですの? 柄しかありません。試作品ですの?」

 クレアさんが、柄しかない剣を掴む。刀身がなく、取り付ける刃は、どこにも用意されていない。練習用かな?

「それは、最新型の魔法剣です。一度、魔力を流し込んでみてください」

 シューくんの指示通り、クレアさんが剣の柄に魔力を流し込んだ。

 柄から、刃が出てきた。

「魔力そのものを、刃にするんですよ」

 ヨロイを着たカカシを、シューくんが用意する。

「これを斬ってみてください」

 ためしにクレアさんが、ヨロイを着たカカシに斬りかかった。

 きれいな袈裟斬りが、決まる。

 ヨロイが斜めにカット、されない。

「まだ、試作品なのです。十分な強度が、得られなくて」

「刀身がないと、落ち着きませんわ」

 わたしも、触らせてもらう。

 やっぱりわたしが試しても、ヨロイは切れない。

『熱の制御が、足りないのさ。そのせいで、質量の割に火力が出ない』

 レベッカちゃんが、脳内に直接語りかけてきた。

 わたしが代弁して、シューくんに教える。

「なるほど。勉強になります。よくわかりましたね?」

「れれ、錬金術師だからねっ」

「よほど高度な学習を、受けていらしたんですね。そうお見受けしますっ」

 シューくんは、盛大に勘違いしてくれた。

 でもこの剣は、魔剣のいいヒントになりそう。

「これは、なに?」

 わたしは、飛び出しナイフを見つけた。テーブルに、無造作に置かれている。あまり大事にされている感じではない。

「それは、ウチの商品ですね。その試作品です」

「どんな用途が?」

「こうやるんですよ」

 ナイフの柄を、シューくんが指でつまむ。

 缶切りが、出てきた。

「こちらは栓抜き、こちらはワインのオープナーですね」

 他にも、色んな用途に使えそうな金属製品が出てくる。ノコギリ、爪切りとヤスリ、ハサミ、千枚通し、ウロコ落とし、包丁など。

「レンチやドライバーまで、ありますわ。今まで見たツールの中で、一番面白いですわ」

「ありがとうございます。でも、用途を足しすぎて、携帯用のツールとしては失格だと、父に言われまして」

 結局商品にできたのは、せいぜい七つ道具つきだったらしい。

「あのさ、クレアさん。わたし、決めたよ。絶対、これだと思う」

「キャルさん、どうなさったの?」

「魔剣のヒントが、掴めたかも知れない」


 
 続いて、完成したばかりのフワルー先輩のお店に。

「先輩、連れてきましたよー」

「あかんてキャル、待って! あと五分だけ待って!」

 シューくんが来るというので、先輩はやたらドタバタとしていた。女子かよ。女子だけど。

 いやあ、珍しいものを見たよ。恋する乙女って、こうなっちゃうんだねえ。

「はあ、はあ。お待たせやで。どうぞ」

 先輩のお店は、街の隅っこに建てさせてもらっていた。景観を損ねないように、縮小したという。

「ウッドゴーレムを、間引きしたんですね?」

「せやねん。あまりにも多すぎたさかい、別の用途として活用してるねん。シューくんと相談してん」

 フワルー先輩が、街の壁を指差す。

「あれは?」

 この間までなかった弩が、セッティングされている。

「バリスタや。自動でモンスターを追尾して、狙撃するねん」

 これがあれば、魔物が壁をよじ登って襲ってくることもない。

 魔物たちは、また街を襲いに来るだろう。その準備は、しすぎなくらいでちょうどいいはずだ。

「シューくんから、ウッドゴーレムの活用法について、アドバイスを受けたんや。おおきにやで」

「い、いえ! お役に立てたなら、なによりです」

 フワルー先輩から感謝されて、シューくんが照れている。

 これは、二人とも意識している感じ?

「工房はどうやった? ウチも見てみたかったけど」

「道具は、一通り見せていただきました」

 参考になりそうなものはすべて、シューくんからもらってきた。

「ありがとう、シューくん。本当に全部を、錬成に使っても大丈夫?」

「家に飾っておいても、コレクションにしかなりません」

 作ろうと思えば、設計図はすべて保管してあるという。

「キャル、シューくんの発明品やけど、正直な感想は?」

「ええっと」

 言いづらい。かなりマイナスな感想が出るから。

「遠慮しないでください、キャルさん。我々は商人、ボクだって発明家である以前に、商人です。ヘタな製品を提供して、お客様に損害を与えるわけにはいきません」

 シューくんも、覚悟を決めていたようだ。

 ならば。

「これらは控えめに言って、さすがに学術用ばかりでした」

 実用性を求める商人さんが相手では、まるでお話にならないものばかりだ。

「ですが錬金術師の観点から見れば、興味深いものばかりで」

 わたしや先輩のような錬金術師なら、これらの製品を商品レベルまで改造できそうだ。

「ええ見立てや」

「忖度のないご意見を、ありがとうございます。キャルさん?」

 フワルー先輩からだけでなく、シューくんからも合格をもらえたっぽい。



 わたしとクレアさんは、またトレーニング用の魔力制御ジャージに着替えた。戦闘訓練用のジャージである。これでわたしも、錬金しながら熟練度を底上げできるだろう。

「では、開発をいたします。先に、防具を作らせてください。【錬成】!」

 倒したザラタンの甲羅で、アームガードを錬成した。

 うん。想像通りに軽い。生体素材だから、もっとベタベタしているかなと思った。けど、つけ心地は全然気持ち悪くない。

「こちらは、シューくんに。マナボードの補強素材にして」

「はい」

 余った甲羅は、シューくんに活用してもらう。

『はあ、しゃべれないってのは、窮屈だねえ』 

 シューくんが去ったので、レベッカちゃんがようやく話し出す。

「お嬢ちゃんの魔剣を作る、っていう話やったな?」

「その前に、キャルさん。ワタクシの戦闘力は、どうでしょうか? これまでの戦闘で、ワタクシに受けた感想をお聞かせください」

 クレアさんが、わたしに懇願してくる。

 どう言えばいいのか。

「クレアさんなんですが」

「はい。忌憚なき感想を、お聞かせください」

 自分で言うには、はばかられた。

『まったく、じれったいねえ。そら』

 レベッカちゃんが、わたしの許可なく、勝手に人格を交代した。

 前髪だけ、オレンジ色に変わった。

『うーん。アンタだけど、控えめに言ってゴリラだね』

「ゴリラ!」

『道具を渡してもぶっ壊しちまうあたり、相当やんちゃなゴリラだよ』 

「まあ! やんちゃゴリラ!」

 さすがにフワルー先輩も、「言い過ぎちゃうか?」と言葉を遮ってきた。

 どうしてこの人は、【騎士ナイト】職なんて選んだんだろう? 【豪傑アデプト】じゃん。素手武術職の最高位じゃん、と。

「い、いかがでしょう?」

 怒られても仕方ないことを、言ってしまった。

 これじゃあ、嫌われちゃうよ。

「あははは! ゴリラですのね!」

 お腹を抱えて、クレアさんが大笑いをする。

「言い得て妙ですわ。ゴリラさんと比較してもらえるなんて、ワタクシは光栄と考えております」

 なぜか、クレアさんはわたしの、というかレベッカちゃんの意見を、好意的に捉えてくれた。

「怒って、いないんですか?」

「どうして、怒る必要がございますの? ゴリラ。実によろしいではありませんか。ワタクシは、人の領域では測れないと、キャルさんは判断なさったんでしょ?」

「まあ。そうですね。そんなクレアさんだからこそ、魔剣作りには難航しました」

 正直に、感想を述べる。

「クレアちゃんの魔剣は、どないなるつもりなん?」

「はい、先輩。それなんですが――」

 わたしは、フワルー先輩にだけ耳打ちする。今クレアさんに聞かせると、変な期待をさせてしまうからだ。

「それは、ええな。おもろいわ。あんたらしい発想やと思うで」

「ありがとうございます。さっそく取り掛かります」
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

処理中です...