ポンコツ錬金術師、魔剣のレプリカを拾って魔改造したら最強に

椎名 富比路

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第五章 魔術師のダンジョンと、伝説のガイコツ剣士

第43話 王都へ

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 ガイコツ剣士の正体は、今はなき王国の王子さまだった。

「廃王子でしたか。キャルさん。どうもこの方は、ワタクシの家計でご存知の方がいるかもしれませんわね?」

 クレアさんが、わたしの隣にしゃがみ込む。剣士の顔を、覗き込んだ。

「その強力な魔力、どこかの姫君とお見受けする。あなたは?」

「ワタクシは、クレア・ル・モアンドヴィルと申します」

「モアンドヴィル……あの小国に、かような子孫が生まれようとは」

「今、モアンドヴィルはアルセントア大陸を総括する、大国ですわ」

「なんと」
 
 フルーレンツ王子が生きていた頃のモアンドヴィルは、コーラッセン王国の三分の一にも満たなかったらしい。

「そこまでの大国に、成長なさるとは。よほどの苦労があったとお見受けする」

「勇者一行だったという功績が、あったからですわ」
 
「おお、勇者とな! 伝説は、本物であったか!」

「と、申しましても、コーラッセン王国があった当時は、まだ勇者が誕生していませんですわね」

 当時の歴史を、クレアさんがフルーレンツ王子に伝える。

「うむ。我が息子が存命なら、勇者と同じ年頃だったろう」

「かもしれませんわね。して王子、どうして暴れ回っていたのです?」

「おお。そうであった。皆には、すまぬことをした」
 
  フルーレンツ王子が、ドワーフのヘルムースさんに詫びた。

「実はのう、殿下は我々が護衛していた馬車を、突然襲撃してきたのじゃ」

 その馬車は今、無事に王都へ向かったという。
 
「本当に、申し訳なく。馬車に乗っていた姫君が、我が妹によく似ていたのだ」

 妹さんは戦火を逃れ、近くの小国に嫁いだそうだ。
 その妹さんと、馬車に乗っていた王女が似ているという。
 
「そうなんですね。ひょっとして、子孫とか?」

「うむ。おそらくは」

 王都に事情を聞けるだろうか。

「ワタクシのツテを、お使いくださいませ。今のあなたは、魔剣の影響を受けておりません。きちんと話し合えば、わかっていただけるかと」

「ワシも、事情を説明しますわい」

 クレアさんとヘルムースさんが言うと、王子は「ありがとう」と告げた。

「だが、ただのモンスターである。王城に入れてすらもらえまい」

「だとしたら、わたしと契約しますか?」

 正式に契約したモンスターとしてなら、王都に入っても危険視されないはずだ。
 
「ふむ。それはいい案だ。よろしい。我を倒したのは、そなただ。そなたと契約しようではないか」

 わたしは契約の魔法で、王子を自分の配下とした。

「うむ。これで我は、そなたの契約モンスターである。よろしく頼む」

 スパルトイ軍団は、王子が率いてくれるという。
 これで、レベッカちゃんのスキルスロットに空きができた。
 別のスキルを、装着可能に。

 続いて、王子はヤトの方へ。

「巫女殿。もし再び我が正気を失ったときは」

「うん。今度こそ、とどめを刺す」

 ヤトが、王子と約束した。

「物騒でヤンスが、仕方ないでヤンスね」

 リンタローは呆れていたが、王子の覚悟を評価する。


「では、王都ツヴァンツィガーへ案内しようぞ」

 ドワーフさんに連れられて、ツヴァンツィガーの街へ向かった。

 だが、ヤトたちは一旦、ファッパに戻るという。
 
「二人は行かないの?」

「ツヴァンツィガーの街の位置は、知っている。ファッパのギルドに報告した後で、追いつく」

 報告だけなら、ギルドカードでもできる。
 が、財団にコーラッセンを調査してもらったほうがいいかもとのこと。

 ヤトたちの足なら、すぐに追いつけるそうだ。

「そうだね。フワルー先輩も心配しているみたいだから、お願い。じゃあ、ヘルムートさん。馬車をお願いします」

「うむ」

 廃墟となったコーラッセン王国を、ツヴァンツィガー騎士団の馬車で進む。

「大陸の半分を総括していた我が国が、見るも無惨に」

「どうして、滅びちゃったんですか?」

「魔王の襲撃だ」

 コーラッセン王国は、魔王との戦いでもっとも被害を受けた国だという。

「国家が、魔王の領地に近い場所にあってな。真っ先に狙われた」

 当時最強と呼ばれたコーラッセンといえど、魔物の物量には敵わなかった。

「今や、その領地も消滅しております。残すは、雪山のダンジョンのみ」

「じゃが、あなたは、その雪山のある方角からおいでなすった」

 ドワーフのヘルムートさんによると、敵の本拠地があったポイントから、フルーレンツ王子が現れたという。

「怪しいですわ。もう少し調べたほうが良さそうですわね」

 破壊の跡が痛々しいエリアを抜けた。

 さらに、大型のボートで川を渡る。

 そうやって、数日ほど進んだ。

「見えてまいりましたぞ。あれこそ、ツヴァンツィガー王国じゃ」

 川の先に、豪華な城が見えてきた。

 ファッパの港町もすごかったが、こちらはもっと大きい。

 川を伝って、水門をくぐる。

「滝の上に、都市がありますのね?」

 すごい作りだなぁ。
 
「刀剣の種類が、豊富だなあ」

 王都は、ドワーフと人間が共存する都市みたいだ。
 いたるところに鍛冶屋や武器・防具屋が見られる。
 あと、強いお酒の匂いも。

「ああ、リンタローが来なくて正解かも」
『だろうね。酒の味につられて、酒場から戻ってこないかもしれないよ』

 馬車のメンツが、ゲラゲラと笑う。

「ワシは先程まで斧を振るっておったが、もうじき引退するんじゃ。鍛冶業を営もうと思うておる」

 ヘルムースさんの斧も、自前だそうだ。
 店舗も買って、今は奥さんが留守を預かっているという。

「あの。武器の鍛え方を教えていただけますか?」
 
「うむ。よかろう」

 よし。これで、レベッカちゃんをさらに強くできるぞ。

「フルーレンツ王子よ。あなたにふさわしい剣を打って差し上げましょうぞ」

 ヘルムースさんが力こぶを見せた。

「ありがたい。よろしく頼むぞ、ヘルムースよ」

 ローブの下から、フルーレンツ王子がお礼を言う。
 
「お安い御用です」

 ただし、店によるのは、王都で用事を済ませてからになる。

 王城の前に、辿り着いた。

 案の定、門番さんたちに止められる。

「騎士団長の、ヘルムースである。国王様と姫君に、お目通りをお願いしたく」

「それは結構です、ヘルムース殿。しかし、部外者を城の中へ入れるには」

 門番さんも、困っていた。

「お待ちを」

「あなたは?」 
 
「クレア・ル・モアンドヴィルと申します。これを王様か、位の高い方にお見せくださること、お願いできますか?」

 小さいペンダントを、クレアさんは外す。
 門番さんに、ペンダントを渡そうとした。

 しかし、門番さんは受け取らない。
 
「そう、申されましても」 
 
「お待ちなさい!」


 通りかかった貴族風のおねえさんが、スタスタとこちらにやってきた。「失礼」と、クレアさんのペンダントを凝視する。

「もももももも申し訳ございません! これ! モアンドヴィル家の姫君ですよ! 早く通しなさいまし!」

「は。失礼しました。グーラノラ様。みなさん、お通りください」

 門番さんが、道を開けた。

 グーラノラ様と呼ばれたおねえさんは、クレアさんにしきりにペコペコ頭を下げている。

「もうしわけありません、クレア様。あとで叱っておきますので」

「いえ。構いませんよ。入らせていただくだけで、結構ですから」

「お気遣い、感謝いたします。して、どのようなご用件で?」

「少々、お話をうかがいたく。コーラッセン王国のことなど」

 ピタ、と、グーラノラさんが立ち止まった。

「ああ、あちらの王国ですか」

 神妙な面持ちで、グーラノラさんがクレアさんと正面から向き合う。

「実は……あたしもよくわかんないんですよねー」
 
 さんざん思わせぶって、この対応かいっ。

「ですが、ちゃんと調べますよー。それまで、お待ちを」
 
 わたしたちが、廊下に出たときだった。

「……我が妹だ」

 一枚の絵の前に、フルーレンツさんが立ち止まる。静かに、わたしに耳打ちをしてきた。

「こちらの方は、どなたですの?」

 事情を察したクレアさんが、グーラノラさんに問いかける。

「この絵の方は、王都ツヴァンツィガーの第一王女、クリームヒルト様です」
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