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第五章 魔術師のダンジョンと、伝説のガイコツ剣士
第44話 クリームヒルト姫
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クリームヒルト姫なる女性の絵画を見て、フルーレンツさんが固まっている。
「フルーレンツさん、妹さんは、この人にそっくりなの?」
「おお、まさに生き写し。だが、我が反応したのは彼女にではない」
フルーレンツさんは、一番右端にいる老婦人に目を向けていた。
「あれぞ、まさしく我が妹ではないのか!」
「妹さんの名前は?」
「エペカテリナという」
フルーレンツさんの発した名前に、グーラノラさんが、「ああ」と反応した。
「よくご存知で、こちらの御婦人は、先代王のお妃様で、エペカテリナ妃です」
ベッドに寝ている老婦人を、グーラノラさんは手で指し示す。
「エペカテリナ様は私が大臣に着任した後すぐに亡くなられました。お若い頃は、クリームヒルトお嬢様にたいへんよく似ていらしたと」
「うむ。ワシが保証しますぞ」
「当時の肖像画もございますので、機会があればご鑑賞なさればよろしいかと」
グーラノラさんが、快く対応してくださった。
「すまぬ。ヨロイ姿のままで。人に見せられぬ容姿なのでな」
「お構いなく。モアンドヴィルのお姫様の、お友だちですもの。決して、悪いようにはなさらないでしょうから……アンデッドといえど」
「お主」
どうも、グーラノラさんは最初から、フルーレンツさんの正体を知っていたみたい。
「私は【高僧】ですもの。定命ならざる者の気配くらいは、把握いたします。ですがあなたからは、邪悪な気配はしません。元々あったのでしょうけど、今はすっかり、闇の力を感じません」
この人、相当の実力者かも。
「ならば、お話しよう」
フルーレンツさんが、事情を説明した。
「わかりました。私を通じて、国王に相談いたします」
応接間まで、通される。
「国王は、こちらにおいでです。お話などをなさってくださいませ」
「ありがとう」
ひとまずグーラノラさんが、事情を説明してくれた。
応接室に入って、わたしたちはひざまづく。
「お招きくださって、ありがとうございます。陛下」
クレアさんが率先して、前に出る。
中年の国王は、「あいさつは、よい」と、わたしたちを立たせた。
「それより、話を聞こうではないか。そちらの剣士殿が、わたしの娘に刃を向けたと聞いたが」
応接室に、緊張が走る。
ヤバイよ。このままだと、全員が牢屋にブチ込まれちゃう。
『キャル。いざとなったら、アタシ様を抜きな』
小声で、レベッカちゃんがわたしに語りかけてきた。
レベッカちゃんは、今は髪留めになっている。
「ダメだよ。それこそギロチン刑になっちゃうじゃん」
ギロチンがこの国にあるかは、謎だけど。
「よいのだ。グーラノラから、一通りの話は聞いた。騎士団長ヘルムース。目撃者として、その方の話を聞かせてくれ」
「御意」
ヘルムースさんが、国王に話をする。
だいたい、わたしたちとフルーレンツさんが戦闘になった経緯など。
「して、その方らよ。ヘルムースの説明に、相違はないな?」
「はい。全部本当のことです。こちらのガイコツ剣士が、フルーレンツ王子だということも」
「ふむ。にわかには、信じられん」
「あと、魔除けの結界を張ってもムダです。フルーレンツさんは、わたしの契約モンスターとなったので。アンデッドだとしても、害はありませんよ」
まあ、彼が暴れたら、今度こそ引導を渡すけど。
「なんという……。よろしい。信じよう」
国王は、頭を下げた。
「娘は、休ませている。会っていくか?」
害はないとはいえ、会わせていいものかどうか。
「会ってもらったほうが、後々面倒にはならんと思う。フルーレンツ殿下。あなたが本物のコーラッセンの王子なら、子孫にお会いたいのでは?」
「うむ。妹の忘れ形見を、ひと目見たく思う。抱きしめるとは行かないまでも、元気であることを確認できれば。あと、刃を向けたことを、お詫びしたい」
「構わんよ。あなたに娘を襲わせたのは、魔剣であろう? 余は、あなたを憎んではイないよ」
「おお、ツヴァンツィガー国王。ありがたき、お言葉」
「頭を上げてください。殿下」
国王の許可をいただき、中庭へ。
花とたわむれる、小さい少女がいた。
遠目から、フルーレンツさんが見守っている。
「おお。遠くから見ても、妹そっくりだ。あんなに、大きな子孫をもうけて。我は、幸せだ。思い残すことはない」
「いやいや。がんばって。まだ使い魔として、わたしに協力してほしいですから」
「心得た……ん?」
少女クリームヒルト姫が、幼い瞳をこちらに向けた。
フルーレンツさんに、会釈をしている。
対しフルーレンツさんは、剣先を地面につけて、クリームヒルト姫にひざまづいた。
「満足だ。帰ろう」
「その前に、報告をいただけませんか?」
グーラノラさんが、フルーレンツさんを呼び止める。
「おお、そうであった」
うんうん。どうしてクリームヒルト姫が襲われたのか、だよね。
客間にお茶を用意しているそうで、案内してもらう。
「姫様と言うか、王族が狙われた可能性が高いよね」
「うむ。国王に敵対する者は多いのう。悪党の取り締りも、活発化しているし」
ヘルムースさんが、腕を組んで考え込む。
わたしなんかは恐縮して、お茶さえノドを通らない。
しかしクレアさんは、ガブガブ飲んでいる。
トートも一緒になって、お茶をガブガブ、茶菓子をバリボリと。
話を聞いているのだか聞いていないんだか。
「お昼を食べていませんもの」
ああ、そうでした。
緊張しっぱなしで、食べるどころじゃなかったし。
「なんかさ、悪い魔法使いがどうのって言っていなかった?」
「うーむ。このあたりで危険な魔法使いといえば、魔女イザボーラ・ドナーツですね」
グーラノラさんが、解説をする。
魔女イザボーラは、永遠の若さを保つため、若い娘を魔物にさらわせているという。
「その尖兵として、我が操られたと?」
「可能性はあるね。フルーレンツさんは、面識あるの?」
わたしとしては、馴れ馴れしいかなと思った。
しかしもう、この人はわたしの使い魔だもん。敬語を使っても仕方がないんだよ。
「我の亡骸を、利用されたのかもしれん」
「ネクロマンサー……ではないか」
一瞬、可能性がよぎったけど、訂正する。
ネクロマンサーなら、わたしと契約なんてできない。
アンデッドの契約対象を変えるには、相手をもう一度殺す必要がある。
『違うね。コイツが復活したのは、おそらく魔剣の力だろうさ』
「おおお、無礼極まりないぞ、レベッカちゃんよ」
『はあ? アタシ様は、コイツの部下でもなんでもねえんだよ。他人さ』
まあ、そうだけどさ。
「よい。我とは普通に接してくれればよい。キャル殿。レベッカ殿」
フルーレンツさんがいいなら、止めないでいいか。
「魔女に関しては、こちらで調べます。ギルドにて、続報をお待ち下さい」
グーラノラさんが、冒険者ギルドを通して情報を集めてくれるという。
それまで、なにをしておこうかな。
「では、ワシの工房へ参られよ。フルーレンツ殿が活動しやすいように、ヨロイを新調してしんぜよう」
「うむ。世話になる」
というわけで、一旦街へ入る。
フルーレンツさんは、ヘルムートさんの元に預けた。
「キャルとやら。スマンが一緒におってくれ。ガイコツなんて、家内が見たらぶったまげちまう。いくら殿下といえど、じゃ」
だね。
ヘルムートさんにはつきっきりで、ヨロイのサイズを測ってもらう。
続いて、レベッカちゃんを見てもらった。
「コイツは、たまげた。随分と内部構造が歪じゃのう」
わたしの錬成を言っているのか、かなりの辛口批評だ。
「じゃが、危ういバランスで力を保っておる。これを打ち直すのは、骨が折れそうじゃわい」
ドワーフさえ、手を焼く存在だったか。
「生半可な鉄鉱石なんぞを混ぜてしまえば、たちどころに劣化しようぞ。素材は、厳選せねば」
『そういえば、アタシ様は雑食だったからねえ』
自分で言いますか。
「近くに、魔法石の鉱山がある。そこへ向かうとええ」
ひとまず、目的は決まった。
「フルーレンツさん、妹さんは、この人にそっくりなの?」
「おお、まさに生き写し。だが、我が反応したのは彼女にではない」
フルーレンツさんは、一番右端にいる老婦人に目を向けていた。
「あれぞ、まさしく我が妹ではないのか!」
「妹さんの名前は?」
「エペカテリナという」
フルーレンツさんの発した名前に、グーラノラさんが、「ああ」と反応した。
「よくご存知で、こちらの御婦人は、先代王のお妃様で、エペカテリナ妃です」
ベッドに寝ている老婦人を、グーラノラさんは手で指し示す。
「エペカテリナ様は私が大臣に着任した後すぐに亡くなられました。お若い頃は、クリームヒルトお嬢様にたいへんよく似ていらしたと」
「うむ。ワシが保証しますぞ」
「当時の肖像画もございますので、機会があればご鑑賞なさればよろしいかと」
グーラノラさんが、快く対応してくださった。
「すまぬ。ヨロイ姿のままで。人に見せられぬ容姿なのでな」
「お構いなく。モアンドヴィルのお姫様の、お友だちですもの。決して、悪いようにはなさらないでしょうから……アンデッドといえど」
「お主」
どうも、グーラノラさんは最初から、フルーレンツさんの正体を知っていたみたい。
「私は【高僧】ですもの。定命ならざる者の気配くらいは、把握いたします。ですがあなたからは、邪悪な気配はしません。元々あったのでしょうけど、今はすっかり、闇の力を感じません」
この人、相当の実力者かも。
「ならば、お話しよう」
フルーレンツさんが、事情を説明した。
「わかりました。私を通じて、国王に相談いたします」
応接間まで、通される。
「国王は、こちらにおいでです。お話などをなさってくださいませ」
「ありがとう」
ひとまずグーラノラさんが、事情を説明してくれた。
応接室に入って、わたしたちはひざまづく。
「お招きくださって、ありがとうございます。陛下」
クレアさんが率先して、前に出る。
中年の国王は、「あいさつは、よい」と、わたしたちを立たせた。
「それより、話を聞こうではないか。そちらの剣士殿が、わたしの娘に刃を向けたと聞いたが」
応接室に、緊張が走る。
ヤバイよ。このままだと、全員が牢屋にブチ込まれちゃう。
『キャル。いざとなったら、アタシ様を抜きな』
小声で、レベッカちゃんがわたしに語りかけてきた。
レベッカちゃんは、今は髪留めになっている。
「ダメだよ。それこそギロチン刑になっちゃうじゃん」
ギロチンがこの国にあるかは、謎だけど。
「よいのだ。グーラノラから、一通りの話は聞いた。騎士団長ヘルムース。目撃者として、その方の話を聞かせてくれ」
「御意」
ヘルムースさんが、国王に話をする。
だいたい、わたしたちとフルーレンツさんが戦闘になった経緯など。
「して、その方らよ。ヘルムースの説明に、相違はないな?」
「はい。全部本当のことです。こちらのガイコツ剣士が、フルーレンツ王子だということも」
「ふむ。にわかには、信じられん」
「あと、魔除けの結界を張ってもムダです。フルーレンツさんは、わたしの契約モンスターとなったので。アンデッドだとしても、害はありませんよ」
まあ、彼が暴れたら、今度こそ引導を渡すけど。
「なんという……。よろしい。信じよう」
国王は、頭を下げた。
「娘は、休ませている。会っていくか?」
害はないとはいえ、会わせていいものかどうか。
「会ってもらったほうが、後々面倒にはならんと思う。フルーレンツ殿下。あなたが本物のコーラッセンの王子なら、子孫にお会いたいのでは?」
「うむ。妹の忘れ形見を、ひと目見たく思う。抱きしめるとは行かないまでも、元気であることを確認できれば。あと、刃を向けたことを、お詫びしたい」
「構わんよ。あなたに娘を襲わせたのは、魔剣であろう? 余は、あなたを憎んではイないよ」
「おお、ツヴァンツィガー国王。ありがたき、お言葉」
「頭を上げてください。殿下」
国王の許可をいただき、中庭へ。
花とたわむれる、小さい少女がいた。
遠目から、フルーレンツさんが見守っている。
「おお。遠くから見ても、妹そっくりだ。あんなに、大きな子孫をもうけて。我は、幸せだ。思い残すことはない」
「いやいや。がんばって。まだ使い魔として、わたしに協力してほしいですから」
「心得た……ん?」
少女クリームヒルト姫が、幼い瞳をこちらに向けた。
フルーレンツさんに、会釈をしている。
対しフルーレンツさんは、剣先を地面につけて、クリームヒルト姫にひざまづいた。
「満足だ。帰ろう」
「その前に、報告をいただけませんか?」
グーラノラさんが、フルーレンツさんを呼び止める。
「おお、そうであった」
うんうん。どうしてクリームヒルト姫が襲われたのか、だよね。
客間にお茶を用意しているそうで、案内してもらう。
「姫様と言うか、王族が狙われた可能性が高いよね」
「うむ。国王に敵対する者は多いのう。悪党の取り締りも、活発化しているし」
ヘルムースさんが、腕を組んで考え込む。
わたしなんかは恐縮して、お茶さえノドを通らない。
しかしクレアさんは、ガブガブ飲んでいる。
トートも一緒になって、お茶をガブガブ、茶菓子をバリボリと。
話を聞いているのだか聞いていないんだか。
「お昼を食べていませんもの」
ああ、そうでした。
緊張しっぱなしで、食べるどころじゃなかったし。
「なんかさ、悪い魔法使いがどうのって言っていなかった?」
「うーむ。このあたりで危険な魔法使いといえば、魔女イザボーラ・ドナーツですね」
グーラノラさんが、解説をする。
魔女イザボーラは、永遠の若さを保つため、若い娘を魔物にさらわせているという。
「その尖兵として、我が操られたと?」
「可能性はあるね。フルーレンツさんは、面識あるの?」
わたしとしては、馴れ馴れしいかなと思った。
しかしもう、この人はわたしの使い魔だもん。敬語を使っても仕方がないんだよ。
「我の亡骸を、利用されたのかもしれん」
「ネクロマンサー……ではないか」
一瞬、可能性がよぎったけど、訂正する。
ネクロマンサーなら、わたしと契約なんてできない。
アンデッドの契約対象を変えるには、相手をもう一度殺す必要がある。
『違うね。コイツが復活したのは、おそらく魔剣の力だろうさ』
「おおお、無礼極まりないぞ、レベッカちゃんよ」
『はあ? アタシ様は、コイツの部下でもなんでもねえんだよ。他人さ』
まあ、そうだけどさ。
「よい。我とは普通に接してくれればよい。キャル殿。レベッカ殿」
フルーレンツさんがいいなら、止めないでいいか。
「魔女に関しては、こちらで調べます。ギルドにて、続報をお待ち下さい」
グーラノラさんが、冒険者ギルドを通して情報を集めてくれるという。
それまで、なにをしておこうかな。
「では、ワシの工房へ参られよ。フルーレンツ殿が活動しやすいように、ヨロイを新調してしんぜよう」
「うむ。世話になる」
というわけで、一旦街へ入る。
フルーレンツさんは、ヘルムートさんの元に預けた。
「キャルとやら。スマンが一緒におってくれ。ガイコツなんて、家内が見たらぶったまげちまう。いくら殿下といえど、じゃ」
だね。
ヘルムートさんにはつきっきりで、ヨロイのサイズを測ってもらう。
続いて、レベッカちゃんを見てもらった。
「コイツは、たまげた。随分と内部構造が歪じゃのう」
わたしの錬成を言っているのか、かなりの辛口批評だ。
「じゃが、危ういバランスで力を保っておる。これを打ち直すのは、骨が折れそうじゃわい」
ドワーフさえ、手を焼く存在だったか。
「生半可な鉄鉱石なんぞを混ぜてしまえば、たちどころに劣化しようぞ。素材は、厳選せねば」
『そういえば、アタシ様は雑食だったからねえ』
自分で言いますか。
「近くに、魔法石の鉱山がある。そこへ向かうとええ」
ひとまず、目的は決まった。
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