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第6話 冒険者の友達ができました。

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「私は餌じゃないよー…」
恐る恐る熊さんに言ってみたけと、そりゃ伝わらないよね…
って本気!?かぶりつきに来たよ!口大きすぎ!無理無理無理!ガード!ガード!まだ死にたくないよ!!

ってあれ?さっきから時間たつけど何ともないな。ん?この光景は何だ?熊の口の中か?ん?体を覆うようにバリアが出来てるみたい。私の顔、完璧に熊に噛まれてるけど、バリアのお陰で食べられてない。むしろ、熊が何で食べられないんだろって私の色んな部位をガブガブ食べようとしてる。って状況把握はいいから、今のうちに倒そ!ウォータージェットカッター!略してJCだ!なんちゃって。
ふー。無事熊さんは素材になったみたい。本当びっくりした。素材が高く売れればいいなー。

「おーい!こっちにジャイアントベア来なかったかー?」
ん?何か言いながらこっちに走ってくる。どうしたんだろ。

「ジャイアントベア来なかったか?」
中学生くらいの男の子2人に女の子1人。若そうだし、冒険者のなりたてってとこかな?
リーダータイプの男の子が慌てながら話し掛けてきたけど…
「ジャイアントベア?」
ってさっきの熊のことかな。もしかして素材横取りしちゃった感じ?
「ああ、逃げられちまって。」
え、そういうこと?
「もしかして、飼ってたの?」
「んあ?倒すに決まってんだろ?」
「そうだよね。ごめん、さっき食べられそうになっちゃったから倒しちゃった。」
そりゃあんなの飼わないよね。

「え…」
え、なんか3人とも驚いてるけど…
「ちょちょちょ待った!本当に倒したのか?」
「え、うん。」
「一人で?」
「うん。」
「ランクは?」
「ランク?」
なんだろ。なんか話が噛み合ってない気がする。
「え、冒険者だよな?」
「いや、まだ冒険者じゃないんだ。明後日試験受けようと思って。」
「いやいやいやいやいやいやいや、嘘はよくないぜ。冒険者じゃないやつがジャイアントベアを倒せるわけないだろ。だよな?」
右隣にいた見た目クールな少年に同意を求めてるけど、結構やばめの魔物だったってこと?
「普通は無理だな。」
左隣の女の子もうなずいてるし、無理なのか。確かに大きかったしこの辺の魔物よりは強そうだけど、でも倒しちゃったしな…
いや、でも少年たちも倒そうとしてるんだからそこまで強くないのでは?

「ちなみに君たちのランクは?」
「え?もしかして、俺らのこと知らねーのか?」
え?有名人だったの?
「ごめん。この国に来たばかりでその辺よくわかってないんだ。」
「あっそういうことだったのか!なら早く言ってくれよ」
「なんかわかんないけど、ごめん。」
「俺たちはこの辺じゃ有名なんだ。アロイスってギルドに所属してて、Cランクなんだぜ!」
すごく自慢げに話してるけど、まずアロイスっていうギルドが分からないしCランクも強いか分からないよ。

「あ、自己紹介がまだだったな。俺はライリー」
茶髪で短髪でサイドを刈り上げてるリーダーっぽいのがライリーで、

「ルイスだ。」
黒髪ストレートでクールな策士風なのがルイス君、

「エマです。」
暗めの茶髪でロングヘアを三つ編みにしてる癒し系の女の子がエマちゃんね。

「私はサト。よろしくね。ところで、ごめん。アロイスってギルドのことも、Cランクが強いのかも分からないや。」
「なるほど。そう来たか。よし!説明しよう!…ルイスが!」
「ライリー、なぜ俺に振る。」
「頼んだ。俺も細かいとこよくわかってないんだ。」
わかってないんかい。そんなにランクって複雑なの?
「ランクは基本的にAからFまでで、Aの上にSがある。だが、Sはほんの一握りだ。最初はFから始まって依頼をこなして、ポイント稼ぐ。で、そのポイントが一定以上になるとランクが上がる。」
なんだ、全然複雑じゃないじゃん。
「なるほど。思ったより簡単な仕組みだね。」
「一般的にはBランクに上がれずCランクのままの冒険者が多い。一応説明しておくが、ライリーがさっきから自慢げなのは、俺たちくらいの年代だと、E、Fランクが多いからだな。」
「そういうことなのね。でもそれはすごいね。その年でCランクなんて。」
「だろだろ!もっと誉めてもいいんだぜ!なんならサインいるか?」
さすがにいらないかな。
「ライリー、もうその辺にしようよ。」
おっエマちゃんよくぞ言った。でもこのあきれた感じ、毎回なんだろうな。
「ごめんごめん。で、そうだよ!だから、俺たちが国の近くに度々出没するジャイアントベアを狩に来たってのに、本当に倒しちまったのか?」
急に話題が戻ったよ。つまり、Cランクが3人で倒そうとしてたとこをFランク以下の私が倒したことに疑問を持ってるってことだよね。

「そうなるね。たまたま運が良かったんだよ。」
「たまたまなわけあるかい!俺たちでさえ接戦の予定だったんだぞ!」
「そう言われても…」
「倒したならどこにいるんだ?」
ルイス君、そこ聞いちゃうのかー。
「あ、確かに!ジャイアントベアいないってことは、もしや倒してないな!」
ほらライリーが乗ってきちゃったよ。この際倒してないってことにする?でもそうするといもしないジャイアントベアを探し続けることになるよね。よし、本当のことを言おう。
「素材にしたんだ。」
「もう解体したのか!?あんな短時間で!?すっげーな!」
ライリーはまっすぐだなー。
「でも手ぶらだぞ?」
ルイス君、そこ突っ込んじゃう?
「ちゃんと解体したよ。素材見せようか?」
「見せられるもんなら、見せてくれよ。」
うわーすごい疑いの目で見てる。手を平を上に向けて、毛皮でいいかな?ジャイアントベアの毛皮。

「う、嘘…」
お、3人でハモった。
「い、い、今どっから出てきたんだよ!もしかして、空間魔法なのか!?」
え、そっち?アイテムボックスの方に驚いてるの?空間魔法と言えばそうなのかな?
「まーそんな感じかな。」
「いや、なんかその今まで悪かったな。疑ったりして。」
そんな急に謝るほどなの?
「え、どうしたの」
「俺たちを弟子にしてください!」
きゅ、急になに!?ライリーだけじゃなくてルイス君とエマちゃんも頭下げてるし。
「ちょちょちょっと待った。全然話が読めないんだけど。それに、弟子になっても私から何も学べないよ?」
「じゃ弟子にじゃなくてもいい、部下にしてくれ。」
それ、そんなに変わらなくない?

「じゃさ、私と友達になってほしいな。」
「友達?」
ぽかんとしすぎじゃない?ライリー君?
「ほら、私この国に来たばっかだからさ、いろいろ紹介してほしいななんて。」
「そんなの当たり前だろ!友達なんだからっ。友達。」
笑顔が眩しすぎるよ。ライリー君。何だっけな、こういうの。あ、飼い主が大好きなワンちゃんだ。しっぽ無いけど、勢いよく振ってるのが想像できる。
「2人もそれでいいかな?」
「光栄だ。」
「嬉しいです。よろしくお願いします。」
なんか喜んでもらえてるようで良かった。
「私も友達ができて嬉しいよ。」

「ところで、サトさんはどうしてこんなところにいたんだ?」
「あー、今お金無くて直近の食事代と宿代を稼ぎたいなと思って。」
「金ないって、とられたのか?許せねー」
とられてはないけど、確かにそういう発想になるよね。
「とられてないよ。ほら、この国来たばかりだからこの国の通貨を持ってないってだけ。」
「そうか。で、どれくらい集まったんだ?俺たちも手伝うぜ!友達だかんな!」
本当ライリーは良い子だな。
「邪魔じゃなければ手伝わせてほしい。」
ルイス君まで?
「じゃぜひお願いしたいかな。今はロングイヤーラビット6匹と、ジャイアントベアを倒したとこ。」
「もしその素材全部売っても大丈夫なら、もう十分かと思いますよ。」
「確かにエマの言う通りだな。さっきのジャイアントベアの毛皮だけでも数週間の生活費は余裕だろ。」
「エマちゃんとルイス君がそう言うなら今日はもういいかな。あ。そういえば3人ともジャイアントベア狩りに来たんだよね?素材とか目的だったんじゃ…」
「いや、俺たちはジャイアントベアが倒せれば良かったんだ。初心者の安全のためにな。素材はおまけみたいなもんさ」
「おまけって、そんなことないよね?だって数週間暮らせるんでしょ?」
「まー気にするなって!サトさんにも会えたことは素材にも変えられないからな。」
ライリーよ。泣いてやろうか。
「ありがとう。私も3人と出会えて嬉しいよ。」
「そんな。照れるぜ。」

「じゃそろそろ帰って宿探さないと。それにお腹もすいたし。」
「ええーせっかく一緒に戦えると思ったのにー!」
「ライリー、わがまま言うな。サトさんが今日は帰るって言ってるんだ。」
「ごめんねライリーまた今度ね。」
「ああ、じゃ俺たちもギルドに報告しに行くか。サトさんはどの門から来たんだ?」
「南門だよ。」
「そっか。俺たちの拠点は東門付近なんだ。じゃここでお別れだな。」
ライリーすごく寂しそう。
「道は大丈夫か?」
「地図があるから大丈夫。心配してくれてありがとね。ルイス君。」
あっルイス君がちょっと微笑んだ。
「じゃ気を付けてな!あ、宿は南東にある、”レオンの宿”が良いってよく聞くぜ。ま、俺たちはギルドの拠点で暮らしてるから行ったことないけどな。」
「ありがとう。レオンの宿ね!探してみる。」
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