【完結】番が見つかった恋人に今日も溺愛されてますっ…何故っ!?

ハリエニシダ・レン

文字の大きさ
2 / 42
第1章

あれ?番は!??

しおりを挟む
その日、私はデートしていた。
大好きなアレウスと。
腕を組んで人混みを歩いていた時、彼がスンと鼻を鳴らした。次いで微妙な顔を。

「どうかしたの?」

急に足を止めた彼を見上げると、背の高い彼は私を見下ろし

「いや、つがいの匂いがしただけだ」

と、なんて事も無いような調子で言った。けれど私は、彼の言葉に蒼白になった。


       つがい


心を焦がす衝動。
魂の伴侶。

そう言われている。
出会える確率はかなり低いけれど、ひとたび出会ったなら二度と離れず生涯を共に過ごすのだと。
そんな相手と、アレウスが出会ってしまった………


足元から力が抜け、地面に崩れ落ちそうになったところを、アレウスにヒョイと抱き上げられた。


………あれ?


今すぐ番の匂いを追わないのかと首を傾げる。

…ああ、そうか。近くのベンチに座らせるくらいは、してくれるのか。
…アレウスは優しいから……

すぐに悲しみと共に納得しかけて

「具合が悪そうだな。今日は帰るか」

まるきりいつもの調子のアレウスに目を瞬く。

「あの…アレウス…?」

「ん?」

声をかけると、首を傾げて私を見下ろすアレウス。

ああ、やっぱり今日も格好いい。
好き。

…じゃなかった。

「あの…番は……?」

恐る恐る訊いた。
本当は確認なんてしたくないけど、訊かないでいるには気になり過ぎる。
アレウスは、なんて事無さそうに肩をすくめた。

「ああ、まだ遠いようだし、この距離なら逃げきれるだろう。早く家に帰ろう」

…逃げきる?

予想外の発言に固まる私を抱き上げたまま、アレウスは颯爽と歩き出した。
脚の長い彼は、歩みが早い。
どんどん景色が変わっていく。
けれど、家の方にかなりの速さで向かっていた彼が、不意に立ち止まった。

…やっぱり本能には逆らえなくて、番のところに行くのだろうか。
でも、それならここで下ろして欲しい。
彼と番が出会うところなんて、私は見たくなーー

「しまったな。相手は家の近くにいるようだ。……今日はホテルに泊まるか」

え…?
…え…??
……えええ???

目を丸くする私の返事は待たずに、クルリと行き先を変えるアレウス。
そして言った通り、ホテルに着いた。
この街に家があるから泊まった事はなかったけど、結構高級な部類に入るホテル。

……きっとここでお別れ。
私をホテルに置いて、アレウスは番のところへーー

「たまにはいい部屋に泊まるか」

「………へ?」

スタスタと建物に入り

「今日は彼女との記念日なので、少しいい部屋を頼む。それとずっと二人きりでいたいのでルームサービスを」

「かしこまりました」

私を抱き上げたままチェックインを済ませるアレウス。ポカンと固まる私はアレウスに抱き上げられたままだというのに、顔色一つ変えずに先導するホテルのスタッフ。

「こちらでございます」

案内された先は、大きくて綺麗な部屋だった。当然のようにベッドも大きい。

「扉は二重になっております。一つ目の扉と二つ目の扉の間にお食事をご用意いたしますので、いつでもお好きな時にお召し上がりください。
また、防音がしっかりしているのが当ホテルの売りですので、ご安心してお過ごしください」

獣人のエッチは激しい人が多いので、部屋の防音は大事なポイントだ。

「ああ、助かる」

ソファーに私を下ろし、スタッフにチップを渡すアレウス。
丁寧に頭を下げ出て行くスタッフ。

「他に御用がございましたら、なんなりとお申し付けください」

パタンと扉が閉まると、アレウスが当然の顔をして私に覆い被さってきた。

「え?え?ちょっと待って!?」

状況についていけずに慌てる。

「なんだ?風呂が先か?」

眉を上げるアレウス。
 
「あ…や…その…」

「却下だ。たまにはおまえの匂いを堪能させろ」

実に獣人的な発言をして、私の服を脱がしにかかるアレウス。

「え…ちょ…ここソファー……」

さっき止めようとした理由はそれじゃないけど、反射的に言ったら

「…そうだな。折角いい部屋をとったんだ。ベッドを使うか」

アレウスは頷いて、再度私を抱き上げた。
…私の意見が取り入れられたのは、そこだけだった……


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~

tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。 番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。 ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。 そして安定のヤンデレさん☆ ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。 別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。

ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて

木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。 前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)

初恋に見切りをつけたら「氷の騎士」が手ぐすね引いて待っていた~それは非常に重い愛でした~

ひとみん
恋愛
メイリフローラは初恋の相手ユアンが大好きだ。振り向いてほしくて会う度求婚するも、困った様にほほ笑まれ受け入れてもらえない。 それが十年続いた。 だから成人した事を機に勝負に出たが惨敗。そして彼女は初恋を捨てた。今までたった 一人しか見ていなかった視野を広げようと。 そう思っていたのに、巷で「氷の騎士」と言われているレイモンドと出会う。 好きな人を追いかけるだけだった令嬢が、両手いっぱいに重い愛を抱えた令息にあっという間に捕まってしまう、そんなお話です。 ツッコミどころ満載の5話完結です。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!

ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。 前世では犬の獣人だった私。 私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。 そんな時、とある出来事で命を落とした私。 彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

番ではなくなった私たち

拝詩ルルー
恋愛
アンは薬屋の一人娘だ。ハスキー犬の獣人のラルフとは幼馴染で、彼がアンのことを番だと言って猛烈なアプローチをした結果、二人は晴れて恋人同士になった。 ラルフは恵まれた体躯と素晴らしい剣の腕前から、勇者パーティーにスカウトされ、魔王討伐の旅について行くことに。 ──それから二年後。魔王は倒されたが、番の絆を失ってしまったラルフが街に戻って来た。 アンとラルフの恋の行方は……? ※全5話の短編です。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

処理中です...