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39話 不穏な動き その2

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 私とリディア様の会話は続いてる。リンバール王国の現状や、ユルゲン王子殿下が私にしたことについて、彼女から謝罪の言葉が入ったりしていた。


「ユルゲン王子が正式に謝罪をするかは分からないけど、明日の会談では謝罪をするように、私からも言ってみるわ」

「リディア様……いえ、そのお気持ちだけで十分です」


 リディア様は本当に申し訳なさそうな表情で私を見ていた。それだけでも、私は救われた気持ちになる。レヴィン様に助けられ、ルールーと知り合い、アルゴン国王陛下からは保護を約束された。追放の返礼としては、十分過ぎると言ってもいいくらいだ。


 それにしても……あの、ユルゲン王子殿下に意見が出来るなんて、流石はリディア様だと思う。1対1の戦いに於いて、リキッド様に次ぐ2位の実力者とも言われているし。


「でも、あなたがこちらに来てしまったのだから、リンバール王国の今後がとても心配だわ」

「そうなんですか? メシア様の守護方陣は確かに能力が弱く感じましたが、リキッド様の防衛部隊で十分な戦力になると、あれだけおっしゃっていたのに」


「リキッドは自信過剰なところがあるから……いえ、その強さが本物だから、余計に悩ましいの」


 自信過剰ではなくて、本物の自信家を名乗っても当然の実力者。だから、王族に対しても意見が出来る。自分は絶対にクビにならないことを知っているから。


「彼らの防衛部隊や、それとは別にある攻撃部隊が優秀なのは間違いないわ。でも……やはり、魔物や犯罪者たちの多様性を考慮すると、守護方陣という選択肢は本当に重要。ユルゲン王子殿下もそのことは分かっているのよ」

「確かにそうですね」


 メシア様が能力開花するまでの2年間は私が代役で結界を張っていたくらいだし。兵士の詰め所など、各ポイントへの遠隔展開などを含めれば、確かに非常に重要な能力だったと思う。

 でも、彼は予想できなかった……由緒正しき聖女の家系である、ブライト家のメシア様が守護方陣をまともに展開出来なかったことについては。このことが公になればむしろ、孤児でしかない私がブライト家の人間なのでは? という疑念すら生まれて来るだろう。

 2年間も隠していたことを踏まえ、国民からの支持は低下するだろうし、隣国の圧力も生まれるかもしれない。


「メシア様の守護方陣の能力を底上げする課題の為にも、あなたの守護方陣のことを詳しく知っておきたいのよ」

「そうなんですね……そういうことでしたら」


 先ほど、無意識の内に警戒していたけれど、リディア様の気持ちは理解することが出来る。いくら私に対する情を持っていてくれても、最優先しなければならないのは、仕えている国の安全なのだし。


「エステルの守護方陣は相手の敵意だけを察知するのかしら? 一度に展開出来る数は?」


「ええと、敵意だけではありません。一度に展開出来る数についても、今のところ上限は分からないです」


 かなり具体的な質問が飛び込んで来る。私はそれに答えていくけれど、感覚的な部分も大きい。それらを話したとして、本当にメシア様に代用することができるのだろうか?
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