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90 イベント(観桜会)
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とある航空自衛隊の基地で、観桜会が開かれた。
基地の敷地内には桜の木がたくさん植えられている。中でも芝生が生える広場…普段は運動場や修練場として使用されている…を囲むように咲く桜の木は枝振りも見事だ。
そこに、長机や椅子が並べられ、お花見の席が準備されていた。
招待客が、たくさんの自衛官に出迎えを受け、更には若手自衛官に案内されていく。
ハル「うわー、○寿司のお花見弁当!」
美希「本当だ!しかも寒いかと思ったけれど、暖かくなってよかったね~。」
広報官「うちの基地の空揚げやオードブルも用意しています。後で温かいものもお出ししますから、弁当は食べ切れなければ持ち帰ってください。お飲み物は何がよろしいですか?」
美希・ハル「「ありがとうございます!」」
二人はニコニコで桜や基地の中を見渡す。
招待客は思ったより多く、モニター以外にも自衛官の家族や近くの地本関係者、後援会メンバーなどが参加しているようだった。
二人は演台での挨拶や出し物などを見ながら、自分の席を動けない…というのも、広報官とモニター以外に知っている人はいないからだ。
逆に、1テーブルに一人か二人、幹部自衛官が着いて話を振ってくれたり、世話を焼いてくれたりする。また、色んな人が挨拶にも回ってくるから恐縮するばかりだった。
美希「基地司令って、凄く怖い人かと思ったけれど、優しそうね~。」
ハル「うん。でも以前ブルーインパルスのパイロットさんだったってことは、凄い人なんだと思う!」
美希「うん!」
ハル「もちろん、パイロットだけが仕事じゃないから、みんな凄いけど(笑)」
美希「うんうん!」
その二人をニコニコ見守るのは、同じテーブルに着いていた会計職の男性自衛官だった。
若い二人が事務職の自分の話にも目を輝かせてくれ、また、消防職の自衛官が飲み物を持ってきたときには率先して手伝ってくれたのを見て娘を見守る気持ちになっていた。
丁度そこに挨拶回りをしていた自衛官が来たので声を掛けた。
会計「あ、亀戸二佐、この子達にも話聞かせてあげてくれますか?」
亀戸「あ、こんばんは!飛行教導群隊長亀戸です。本日はようこそ。」
ピシッと敬礼したのは、切れ長の目の自衛官だ。
ハルと美希は、慌てて立ち上がってお辞儀を返した。
特に(マニアの)ハルはドッキドキがマックスだ。
美希「キョウドウグン…ですか?」
ハル「えと、現役パイロットの指導する方達の隊長さん!」
亀戸二佐は笑いながら名刺を二人に渡した。
亀戸「はい。戦闘技術の研究や開発、訓練指導をする部隊です。アグレッサー(侵略者)の方が通りが良いかもしれません。」
その名刺にある『教導群』の文字を見て、美希もなるほど、と理解した。それにしても、名刺に浮き上がる白いコブラや、額に赤い星のあるドクロマークはなんだろう。ちょっと怖い。
ハル「戦闘のシミュレーションで敵役をすることもあるから、アグレッサーなのです。よね?」
美希「じゃあ、パイロットさんたちの中でも、結構凄い人たちなんですね。」
亀戸「結構…ではなく、かなり、物凄いんですよ(笑)」
ハル「(ヒーッ!)(@_@;)」
美希「あ、失礼しました。勉強不足で…。」
亀戸「いえいえ(笑)」
冗談めかしているが、本音だろう。ハルはそう言い切れる亀戸に感動してしまった。
ハル「…戦闘機のパイロットさんは技術が素晴らしいのは当たり前でしょうから、さらなる研究や、指導されるのはとても大変そうですね…。」
亀戸がおや?っという顔でハルを見た。
ハル「あ、いえ、パイロットとしての技量はもちろん、指導する能力も求められるということでしょうから。
一流の選手が一流の指導者ではないこともあるというか…だからこそ、物凄いっておっしゃったのかと。」
亀戸「あはは。そうですね、うちの部隊に配属される時はまず徹底的に技術の見直しというか復習から行います。その中で、やはり指導者としての向き不向きを見極めていますね。
例えば、空では目に見えない部分…どう動いてどういう結果につながるか…文字通り空気を読む、見えない変化まで感じられなければならない。その上で、感覚的なそれらを伝えられるかどうかとかね。」
ハル「ふわぁ~(゚Д゚)」
美希「き、厳しそうですね。」
亀戸「まあ、厳しいですよ。」
ハル「た、楽しそうですが。」
亀戸「あははは、厳しく楽しく、仕事しています(笑)」
亀戸二佐は、二人の反応を面白がってはいたが、不愉快ではなかった。ミーハーでもいい、どんな危険があるのかを知らなくてもいい。
知ろうとしてくれる人が目の前にいること、それだけでいいのだと思える。
亀戸「今度基地の見学で自分の隊へもいらっしゃるでしょうから、そのときは是非楽しみにしてください。」
美希・ハル「「はい!」」
亀戸二佐が立ち去ったあと、二人は肩から力を抜いた。
ハル「は、迫力~。」
美希「そうね、ご自分のお仕事に誇りを持ってるんだなあって感じ。」
ハル「うん、空で人を指導するってどんな感じなのかな~。飛んでみたいね。」
美希「え?そっち?!」
ハル「それは、無理だよね~(笑)」
次のイベントにも二人で来たいね、と夜桜を見上げる二人だった。
基地の敷地内には桜の木がたくさん植えられている。中でも芝生が生える広場…普段は運動場や修練場として使用されている…を囲むように咲く桜の木は枝振りも見事だ。
そこに、長机や椅子が並べられ、お花見の席が準備されていた。
招待客が、たくさんの自衛官に出迎えを受け、更には若手自衛官に案内されていく。
ハル「うわー、○寿司のお花見弁当!」
美希「本当だ!しかも寒いかと思ったけれど、暖かくなってよかったね~。」
広報官「うちの基地の空揚げやオードブルも用意しています。後で温かいものもお出ししますから、弁当は食べ切れなければ持ち帰ってください。お飲み物は何がよろしいですか?」
美希・ハル「「ありがとうございます!」」
二人はニコニコで桜や基地の中を見渡す。
招待客は思ったより多く、モニター以外にも自衛官の家族や近くの地本関係者、後援会メンバーなどが参加しているようだった。
二人は演台での挨拶や出し物などを見ながら、自分の席を動けない…というのも、広報官とモニター以外に知っている人はいないからだ。
逆に、1テーブルに一人か二人、幹部自衛官が着いて話を振ってくれたり、世話を焼いてくれたりする。また、色んな人が挨拶にも回ってくるから恐縮するばかりだった。
美希「基地司令って、凄く怖い人かと思ったけれど、優しそうね~。」
ハル「うん。でも以前ブルーインパルスのパイロットさんだったってことは、凄い人なんだと思う!」
美希「うん!」
ハル「もちろん、パイロットだけが仕事じゃないから、みんな凄いけど(笑)」
美希「うんうん!」
その二人をニコニコ見守るのは、同じテーブルに着いていた会計職の男性自衛官だった。
若い二人が事務職の自分の話にも目を輝かせてくれ、また、消防職の自衛官が飲み物を持ってきたときには率先して手伝ってくれたのを見て娘を見守る気持ちになっていた。
丁度そこに挨拶回りをしていた自衛官が来たので声を掛けた。
会計「あ、亀戸二佐、この子達にも話聞かせてあげてくれますか?」
亀戸「あ、こんばんは!飛行教導群隊長亀戸です。本日はようこそ。」
ピシッと敬礼したのは、切れ長の目の自衛官だ。
ハルと美希は、慌てて立ち上がってお辞儀を返した。
特に(マニアの)ハルはドッキドキがマックスだ。
美希「キョウドウグン…ですか?」
ハル「えと、現役パイロットの指導する方達の隊長さん!」
亀戸二佐は笑いながら名刺を二人に渡した。
亀戸「はい。戦闘技術の研究や開発、訓練指導をする部隊です。アグレッサー(侵略者)の方が通りが良いかもしれません。」
その名刺にある『教導群』の文字を見て、美希もなるほど、と理解した。それにしても、名刺に浮き上がる白いコブラや、額に赤い星のあるドクロマークはなんだろう。ちょっと怖い。
ハル「戦闘のシミュレーションで敵役をすることもあるから、アグレッサーなのです。よね?」
美希「じゃあ、パイロットさんたちの中でも、結構凄い人たちなんですね。」
亀戸「結構…ではなく、かなり、物凄いんですよ(笑)」
ハル「(ヒーッ!)(@_@;)」
美希「あ、失礼しました。勉強不足で…。」
亀戸「いえいえ(笑)」
冗談めかしているが、本音だろう。ハルはそう言い切れる亀戸に感動してしまった。
ハル「…戦闘機のパイロットさんは技術が素晴らしいのは当たり前でしょうから、さらなる研究や、指導されるのはとても大変そうですね…。」
亀戸がおや?っという顔でハルを見た。
ハル「あ、いえ、パイロットとしての技量はもちろん、指導する能力も求められるということでしょうから。
一流の選手が一流の指導者ではないこともあるというか…だからこそ、物凄いっておっしゃったのかと。」
亀戸「あはは。そうですね、うちの部隊に配属される時はまず徹底的に技術の見直しというか復習から行います。その中で、やはり指導者としての向き不向きを見極めていますね。
例えば、空では目に見えない部分…どう動いてどういう結果につながるか…文字通り空気を読む、見えない変化まで感じられなければならない。その上で、感覚的なそれらを伝えられるかどうかとかね。」
ハル「ふわぁ~(゚Д゚)」
美希「き、厳しそうですね。」
亀戸「まあ、厳しいですよ。」
ハル「た、楽しそうですが。」
亀戸「あははは、厳しく楽しく、仕事しています(笑)」
亀戸二佐は、二人の反応を面白がってはいたが、不愉快ではなかった。ミーハーでもいい、どんな危険があるのかを知らなくてもいい。
知ろうとしてくれる人が目の前にいること、それだけでいいのだと思える。
亀戸「今度基地の見学で自分の隊へもいらっしゃるでしょうから、そのときは是非楽しみにしてください。」
美希・ハル「「はい!」」
亀戸二佐が立ち去ったあと、二人は肩から力を抜いた。
ハル「は、迫力~。」
美希「そうね、ご自分のお仕事に誇りを持ってるんだなあって感じ。」
ハル「うん、空で人を指導するってどんな感じなのかな~。飛んでみたいね。」
美希「え?そっち?!」
ハル「それは、無理だよね~(笑)」
次のイベントにも二人で来たいね、と夜桜を見上げる二人だった。
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