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帝国編

対策はその都度見直すのです

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 王都から出立したはずの冒険者ジオは、帝都のギルドマスターヒュージさん曰わく行方不明になっている人物となっている。
 中の人的にはずっと前から帝都で遊びほうけているのだが、前世の料理やら過去の英雄に奇襲されたりとジオで帝都ギルドに行くことなど頭からすっぽり抜けていたのだった。
 最初はアーシル送りされるのを避けてのことだが、素で忘れていたのもありギリギリになって対処する羽目になる。
 対策は先を見越して行うべきだが、変化していく事態にはその都度振り返りながら見直すと最適解に近づけるかもしれない。
 様々な言い訳を心の中でしつつ、ミリー達の所に戻る為扉を開け部屋に入る。
「戻りましたのです、冒険者ジオの事については・・・」
「失礼します、私がジオです」
 扉を開け入った私の後ろに全身鎧の大男が立っており、それを見て驚いていたのはミリー達一行であった。
「あれ!?どうなってるの!?」
 最初に声を発したのはアイリだった、ミリーとユラも表情が固まっている。
 やっていることは手の込んだ腹話術という無駄のない無駄な動きである。
「・・・鎧から声が出てる・・・でもフィオナはその前で立っているし・・・」
 普段冷静なユラも困惑している様子、ある意味知ってる相手にしかできない一発芸である。

 高次領域を無駄なことに使いまくるから怒ってコーザル体が顕現したのではと、一瞬頭を過る。
「全身鎧の長身ってのは本当みたいだな、しかし・・・帝都で見かけたことはないな」
「どうなっていますの・・・いえ、普段フィオナがやってることと言えば・・・」
 ミリーは出会ったときから頭が良く、察しもいい・・・もうこの仕組みに気がついたのかもしれない。
「初めまして、ギルドマスターのヒュージです・・・ミリーさん達は知り合いと聞いていましたが動揺してるのは何故でしょう?」
「ある意味初めてと言えるのです」
「ミリー君とユラ君は実地訓練以来かな?」
 少し調子に乗ってそれぞれで声を出すと、アイリが私とジオを見比べる・・・ミリーも遠隔操作には気づいても声の部分が分からないという表情である。
 これを利用すれば念話ができるのではとも考えたが、聴覚を無視して脳に直接音を認識させると脳機能に悪影響がでるかもと・・・気軽に試すのは危険かもしれない。
 鎧頭部は空っぽなので生物的な支障は起こるはずないが・・・ミリー達に携帯のような感じで物を持たせて音として発声すれば擬似的な電話としては可能かもしれない。
 いずれクルス商会が通信機を一般普及させるだろうけど、時間は掛かりそうだ。
「これがジオ・・・大森林での言い方だと同一人物を想像してたけど」
「私は面倒が嫌いな・・・」
「・・・ルスカ・カリーナとの戦闘には少し問題がありまして・・・私とジオは同時に戦うのが難しいのです」
 ジオメインか私をメインかで片方を固定砲台にするくらいはできそうではあるが、そうすると防御まで処理できる自信はない。
「ジオさんに魔力がない・・・リア様とは違う意味で驚きました」
「うむ、こっちは完全に空っぽじゃからな」
 リアがジオの頭部をコンコンと叩く、それだと頭が空っぽみたいになってしまうのだが。
 まあ中の人はいないので間違いではない、全身鎧の胸部装甲を左右に開き頭部装甲を開閉する。

 魔海での戦闘方法は3つ示唆されているが、そのうちの1つは事実上不可能でもう1つは魔物次第である。
 船を用意しての海上戦はまず魔海での造船が難しく、運んでくる方法も難しい。
 ルスカ・カリーナが上陸してくれれば近接職での戦闘も可能になるが沖から動かないと遠距離職のみでの攻撃も射程圏外。
 最終手段が国級魔導術での長距離攻撃だが、仕留めきれる保障は不明・・・これにより上陸を促すのがアーシルでの判断だが戦力がどの程度必要になるかが未知数。
 これはもう放置していいのではと思わないでもないが、危険因子を野放しというのは気が気でないらしい。
「やはり、龍人貴族様に手を貸していただいたほうが確実じゃあないですかね?」
「人族の国への影響が大きいと、私達龍人も生活圏が減りますからね」
 普通の魔物であればその決断が最適だろう、問題はこの世界でリアの次に高位の存在ということだが・・・姿が魔物だとそう認識するのは難しい。
 リアと同じ姿を現象化しているだけで、それが本体なのか不明な点が問題である。
「高次領域の存在がどうと言っても、止めるの無理かもです?」
「呼び出された時点で討伐は決まっておるようじゃから、参戦するかどうかの確認なのじゃろう」
 どうやらリアも最初から説得自体する気はなかったようだ、人族が外形を確認できる時点でこの世界の問題と口出しはしない。
「・・・私達冒険者ランクゴールドだけど、討伐に参加しても大丈夫なの?」
「私(わたくし)達が行ったとしても、直ぐに戦闘とはなりませんわよね・・・」
 国級を使える魔導師がいるからこそ上陸戦に持ち込む予定なのだから、戦力は確保できてるようだが・・・私達は追加要員の扱いなのかもしれない。
 多いに越したことはないということだろう、私達が向かわなくても戦闘を始めそうだ。
 王都や帝都では平和でも、魔海付近では精神的な重圧で冷静さを保てない・・・焦燥感による判断の可能性もあるのかもしれない。
「空飛ぶ魔導師や魔導具使いの冒険者より、国級魔導術を使える魔導師の方が明確だと思うのです」
 実力不透明な人物より、その場にいる実力のある者の力を信じるのは自然な流れなのだろう。
「国級を使える人に心当たりはあるよ、多分ラニール先輩だと思う。総合学院でもずっと首席だった」
 火の魔導術を得意としている人物らしい、知名度もあるなら尚更・・・噂程度の冒険者達を待つのに時間を掛ける事はなさそうだった。
 トゥルルルル
 そんなとき異世界の人達には聞き馴染みのないであろう、馴染み深い音が鳴るのであった。
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