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帝国編
利点と欠点
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ファンタジー世界にあるまじき電子音が部屋に鳴り響くと、私とリア以外の全員が困惑した表情を見せる。
着信音もしっかり再現しているクルス商会の拘りやいかに、通信機と一緒に届いてる文書に書かれてはいたのだろうが伝わっていなかったようだ。
「これはどうすればよいのでしょう・・・」
「はい、もしもし~?」
通信機の上下のフィルターの間にある四角のボタンのようなものを押し、耳に当て返答を待ってみる。
『おい、聞こえているか?冒険者のラニールだ』
スピーカーモードが標準のようで、耳にハスキーな声が突き刺さる・・・どうやら女性だったらしい。
「そのもしもしと言うのは詠唱なの?」
気が付けば使っていた言葉だったが・・・物申す的な意味だったのだろうか、まあそんなことより。
「帝都ギルドマスターのヒュージです、本当に声が聞こえるんですね」
「・・・フィオナは凄く自然に使ったね、文書の内容読んでないはずなのに」
あるのとないのとでは段違いな通信技術は便利である、私が作る張りぼてとは訳が違う。
『確認したいのだが、魔海に霧が発生する例はあるか?』
「霧ですか・・・過去にそのような現象は起きていないようですが」
『ルスカ・カリーナの後方が霧で見えなくなっている、発生源が奴なら少し妙だ』
霧が自然発生でなく特異個体の場合、それで姿を隠すといった行動に思える。
ラニール先輩の話ではルスカ・カリーナは陸から確認でき、霧はその後方で発生しているとのことだ。
『今は少し落ち着いてるが、霧が発生した辺りから魔物が活発化しだした』
皇城への定期報告に使いを出したのが一週間前、霧が発生したのが5日前らしいが丁度その辺りは大型ムカデと戦っていた時だ。
「アーシルから帝都って結構距離があるんだよね?それ1つで会話できるって便利だね!」
「それはそうですけどアイリさん、それどころではなさそうですわ」
平常運転でマイペースなアイリは緊張感もなく感想を述べる、声しか届いていないのだから向こうの状況が見えるわけでもない。
映像も音も即座に伝えれるのは利点だが、その情報の是非も問わずに拡散する欠点にもなる。
そういう意味では映像投射器同士で通信できたら、秘匿したい映像も簡単に流出していたことだろう。
普通の海と魔海の違いは魔力の拡散が起こる事だが、魔導師的には差ほど違いはない。
水中での魔導術が元々使いにくく、雷系などを発生させれば自分にも影響が出るだろう。
水中の魔物との戦闘は大陸外周の海が主で、漁船の護衛で同乗している冒険者が対処している。
魔海の水中に生息する魔物の種類は未知数で、潜って確認していないのは危険なだけで重要視されていないみたいだ。
「魔海での魔物は図鑑で確認した限り2種・・・活発化してるのもこれだと思いますわ」
『勤勉な者がいるようだな、この2種が陸にも上がってこれる水中の魔物だが・・・2日ほど戦いっぱなしでな』
通話ができるくらいに余裕ができたのも今し方と言った感じだろう、連戦が重なり冒険者達も疲弊していると思われる。
「魔海と言うから種類も多いと思ったのですが、2種は少なくないです?」
「水中までは確認ができませんから、2種以外にもいるとは思いますわ。魔海に限らず魔物は強い個体が生き残り、その種が繁殖するのですわ」
魔物も例に漏れず弱肉強食のようで、弱い個体は生存率も低くなることから種の数自体は増えすぎることがない。
「総合学院でも習った気がする、繁殖する魔物には法則性があるとか」
『群集と強靭の法則か、懐かしいが魔海の奴は両方の性質を持つから厄介だ。群集体の魚人型も単体が弱いわけではないからな』
強い個体は単体で生き残るが、弱い個体は群れで生存率を高める。
通常の群集体は知能自体高くはないが繁殖力があり、定期的に討伐を必要とする・・・反面魔海にいる魚人型は知能もそれなりにあり出現時も複数体で行動しているのが確認される。
「単体が強い群集体なら強靭体はどうなるのです?」
「鰐人型と呼ばれているのが強靭体ですわね、外皮が硬く攻撃が通りづらいとありますが・・・」
『その1体と魚人型の一部がやりあって分散してたのが幸いというべきか・・・ルスカ・カリーナに戦力を集中させれないのが現状だ』
アーシルにいるのはミスリル冒険者以外にも、帝国騎士団と王国騎士団も参戦しており戦力が分散している。
戦力は足りている予定だったが、魔物の総数が不明な以上迂闊に手を出せなくなっているようだ。
「今から最短で大森林を抜けるにも1日は掛かるね、普通であれば」
「普通というのはどういう・・・何か方法があるのですか?」
レナの発言にヒュージさんが聞き返す、ふとミリーが私を見て事を察したようだ。
「フィオナが帝都に戻る際に使った、そりで大森林を飛び越える・・・そういう事ですわね?」
「少し改良はしたですが、高度がギリギリかもです」
大森林の中央で大樹の阻害が掛かり転落、なんてことになれば大惨事である。
浮かす事のみであれば問題もなさそうではあるが、推進力が弱まり飛行する魔物に狙われそうだ。
「それは私(わたくし)が何とかしますわ、フィオナは浮かす事に集中して下さいまし」
『聞こえてくる内容は理解し難いが・・・増援なら歓迎しよう』
魔海に向かう事は確定したようで、それぞれ装備を確認した後部屋を出て行くのであった。
着信音もしっかり再現しているクルス商会の拘りやいかに、通信機と一緒に届いてる文書に書かれてはいたのだろうが伝わっていなかったようだ。
「これはどうすればよいのでしょう・・・」
「はい、もしもし~?」
通信機の上下のフィルターの間にある四角のボタンのようなものを押し、耳に当て返答を待ってみる。
『おい、聞こえているか?冒険者のラニールだ』
スピーカーモードが標準のようで、耳にハスキーな声が突き刺さる・・・どうやら女性だったらしい。
「そのもしもしと言うのは詠唱なの?」
気が付けば使っていた言葉だったが・・・物申す的な意味だったのだろうか、まあそんなことより。
「帝都ギルドマスターのヒュージです、本当に声が聞こえるんですね」
「・・・フィオナは凄く自然に使ったね、文書の内容読んでないはずなのに」
あるのとないのとでは段違いな通信技術は便利である、私が作る張りぼてとは訳が違う。
『確認したいのだが、魔海に霧が発生する例はあるか?』
「霧ですか・・・過去にそのような現象は起きていないようですが」
『ルスカ・カリーナの後方が霧で見えなくなっている、発生源が奴なら少し妙だ』
霧が自然発生でなく特異個体の場合、それで姿を隠すといった行動に思える。
ラニール先輩の話ではルスカ・カリーナは陸から確認でき、霧はその後方で発生しているとのことだ。
『今は少し落ち着いてるが、霧が発生した辺りから魔物が活発化しだした』
皇城への定期報告に使いを出したのが一週間前、霧が発生したのが5日前らしいが丁度その辺りは大型ムカデと戦っていた時だ。
「アーシルから帝都って結構距離があるんだよね?それ1つで会話できるって便利だね!」
「それはそうですけどアイリさん、それどころではなさそうですわ」
平常運転でマイペースなアイリは緊張感もなく感想を述べる、声しか届いていないのだから向こうの状況が見えるわけでもない。
映像も音も即座に伝えれるのは利点だが、その情報の是非も問わずに拡散する欠点にもなる。
そういう意味では映像投射器同士で通信できたら、秘匿したい映像も簡単に流出していたことだろう。
普通の海と魔海の違いは魔力の拡散が起こる事だが、魔導師的には差ほど違いはない。
水中での魔導術が元々使いにくく、雷系などを発生させれば自分にも影響が出るだろう。
水中の魔物との戦闘は大陸外周の海が主で、漁船の護衛で同乗している冒険者が対処している。
魔海の水中に生息する魔物の種類は未知数で、潜って確認していないのは危険なだけで重要視されていないみたいだ。
「魔海での魔物は図鑑で確認した限り2種・・・活発化してるのもこれだと思いますわ」
『勤勉な者がいるようだな、この2種が陸にも上がってこれる水中の魔物だが・・・2日ほど戦いっぱなしでな』
通話ができるくらいに余裕ができたのも今し方と言った感じだろう、連戦が重なり冒険者達も疲弊していると思われる。
「魔海と言うから種類も多いと思ったのですが、2種は少なくないです?」
「水中までは確認ができませんから、2種以外にもいるとは思いますわ。魔海に限らず魔物は強い個体が生き残り、その種が繁殖するのですわ」
魔物も例に漏れず弱肉強食のようで、弱い個体は生存率も低くなることから種の数自体は増えすぎることがない。
「総合学院でも習った気がする、繁殖する魔物には法則性があるとか」
『群集と強靭の法則か、懐かしいが魔海の奴は両方の性質を持つから厄介だ。群集体の魚人型も単体が弱いわけではないからな』
強い個体は単体で生き残るが、弱い個体は群れで生存率を高める。
通常の群集体は知能自体高くはないが繁殖力があり、定期的に討伐を必要とする・・・反面魔海にいる魚人型は知能もそれなりにあり出現時も複数体で行動しているのが確認される。
「単体が強い群集体なら強靭体はどうなるのです?」
「鰐人型と呼ばれているのが強靭体ですわね、外皮が硬く攻撃が通りづらいとありますが・・・」
『その1体と魚人型の一部がやりあって分散してたのが幸いというべきか・・・ルスカ・カリーナに戦力を集中させれないのが現状だ』
アーシルにいるのはミスリル冒険者以外にも、帝国騎士団と王国騎士団も参戦しており戦力が分散している。
戦力は足りている予定だったが、魔物の総数が不明な以上迂闊に手を出せなくなっているようだ。
「今から最短で大森林を抜けるにも1日は掛かるね、普通であれば」
「普通というのはどういう・・・何か方法があるのですか?」
レナの発言にヒュージさんが聞き返す、ふとミリーが私を見て事を察したようだ。
「フィオナが帝都に戻る際に使った、そりで大森林を飛び越える・・・そういう事ですわね?」
「少し改良はしたですが、高度がギリギリかもです」
大森林の中央で大樹の阻害が掛かり転落、なんてことになれば大惨事である。
浮かす事のみであれば問題もなさそうではあるが、推進力が弱まり飛行する魔物に狙われそうだ。
「それは私(わたくし)が何とかしますわ、フィオナは浮かす事に集中して下さいまし」
『聞こえてくる内容は理解し難いが・・・増援なら歓迎しよう』
魔海に向かう事は確定したようで、それぞれ装備を確認した後部屋を出て行くのであった。
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