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第2話 ポチを追って

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「……なんだこの階段?」

俺は得体のしれない階段を前に当たり前の疑問を口にした。

家の庭にぽっかりと空いた穴。
そしてその穴の中にある地下へと続く石で出来たような階段。

「なに、これ……?」

突如現れた奇妙な光景に理解が及ばない。

月明かりだけを頼りに階段の先を覗いてみようとするが奥の方は真っ暗でそれもままならない。
もちろん階段を下りていく勇気などもない。

こういう時家族と一緒に住んでいれば真っ先に家族を呼ぶのだろう。
友達や恋人に助けを求めるという手もある。

だが残念なことに社会と交流を断って久しい俺にはこういう時に連絡する相手が一人もいないのだ。
田舎にぽつんとある一軒家なので普段は周りの目を気にしなくていいから住みやすいがあんな爆音がしたというのに誰一人寄ってこないのは少々寂しい。

「まいったな……」

警察に電話しても取りあってくれるかどうか。下手すると公務執行妨害なんてことになりかねないぞ。
「うーん……」
俺は奇妙な階段を前にただただ立ち尽くしていた。

明日警察の人に来てもらうか。そう思いとりあえず家の中に入ろうと玄関のドアを開けた時入れ違いでポチが外に駆け出てきた。
「あっ、ポチっ……!」
止める間もなくポチは大穴の中の階段へと向かっていく。

「こら、危ないから戻って来いっ」
「わんわん!」
大丈夫だと言わんばかりに元気よく鳴いてみせるとポチはそのまま階段を下りていってしまった。

「……勘弁してくれよ」

俺は仕方なく大穴の前まで行き「おーい! ポチー!」と階段を見下ろすがポチの姿は見えない。鳴き声も聞こえてこない。

その後も五分、十分、二十分としばらく声をかけながら待ってみたが一向に反応がなかった。


まずいな。これはまずいぞ。
いよいよ放っておけない状況になってしまった。

ポチをこのままにしてはおけない以上俺が階段を下りてポチを連れ戻すしかない。



そこで俺はふとあることに思い至る。
もしかしてこの階段を下りた先には危険な生物がいるのではないか、と。

ただの思い過ごしならいいが万が一ということもある。俺は一旦家に戻ると家の中にあった物で完全武装することにした。
完全武装といっても所詮一般家庭の家の中にある物だからたかが知れているがないよりはましだ。

俺は右手に木刀を左手には懐中電灯をそして全身には剣道着を身に着けて再度奇妙な階段の前に立った。

「中高剣道部だったことが今になって役に立つとはな」
面をつけているので多少視界は狭まるが頭が守れるというのは心強い。

俺は木刀を一振りすると覚悟を決め階段をそろそろと一歩一歩下りていく。

そして五十歩ほど下りた時だった。
階段はそこで行き止まりになっていて突き当たりには全身が映るほどの大きな鏡が設置されていた。

「……?」

行き止まりなのでほかに道はなくポチの姿も見当たらない。

「ポチはどこ行ったんだ? それにこの鏡は一体……?」

何気なく俺は鏡に触れた。
その刹那――

「うおおっ!?」

俺は鏡に吸い込まれるようにして鏡を通り抜けたのだった。
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