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第38話 帰還石
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「ん? これは……魔石、じゃないよな?」
俺は赤く光り輝く石を前に固まる。
魔石は青色だったはず。形はそっくりだがこれは色が違う。
「ククリ、これなんだ?」ククリにそう訊ねようとした瞬間、
「マツイさん、やりましたよっ!」
ククリが俺の肩を叩きながら喜びの声を上げた。
「なんだ、どうしたんだ?」
「これはレアアイテムですよっ! わあ、すごいついてますよ、マツイさんっ! だから言ったじゃないですか、この宝箱の中身はいいものだってっ!」
「ククリ、わかったからちゃんと説明してくれ」
一人テンションの上がっているククリを落ち着かせ俺は努めて冷静に話をきく。
「あっ、すいません、一人で舞い上がっちゃって……こほん。えーとこれはですね、帰還石といって割ると一瞬にしてダンジョンの外に出られるアイテムなんです」
「……それってすごいのか?」
ダンジョンの外に出るなら写し鏡の門を通ればいいだけだしもっと言えば同じフロアに一時間居続ければ強制的に外に出られる。
何もそんなに喜ぶ必要はないのでは。
「何言ってるんですかマツイさん! これを使えばどの階層からでもどんなピンチな時でもアイテムもお金も持ったまま一瞬でダンジョン外に出ることができるんですよ! しかもフロアボスとの戦闘中にも使えるんです、最高じゃないですかっ!」
「おお! そう聞くと確かにすごくいいなこれっ」
「でしょう。だったらもっと喜んでくださいよっ、帰還石ですよ、帰還石!」
「ああ、めちゃくちゃ喜んでるさ」
感情があまり顔に出ないタチだからわかりにくいかもしれないがこれでも心底喜んでいる。
「ちなみにいくらで売れるんだこれ?」
宝箱から取り出した帰還石を眺めながら訊くと、
「えっ? まさかそれ売る気ですかっ?」
ククリが目を見開いた。
「いや、そうじゃないけど一応売値は知っておきたいなと思ってさ」
「ほんとですか~? そう言いながら売る気じゃないんですか~?」
じとっとした目でククリは俺を見てくる。
「そんな目で見るなよ。いいからいくらなんだこれ?」
「……十万円です」
「おおっ! 十万円っ!」
魔石と同じ値段だ。
「うーん……」
実際問題どうするか非常に悩みどころだぞこれは。
売れば十万円が手に入る。ニートの俺にとってはものすごい大金だ。
だが、お金を持ってどの階層からでもフロアボスからでも一瞬で外に逃げられる効果は魅力的だ。
「ちょっと。何がうーん……なんですかっ? やっぱり売る気なんじゃ?」
「ま、まあ、とりあえず他のアイテムも探してみてから決めるよ。もしかして帰還石がもう一個みつかるかもしれないし……」
「そんな幸運滅多にあるわけないですけどね」
俺を疑いの目で見てくるククリとともに俺はもと来た道を戻ると他の四つの通路にもそれぞれ進んでいった。
その成果として俺たちは宝箱を三つみつけた。
中にはそれぞれ攻撃力+1のひのきの棒、魔力を少しだけ回復させる魔力草、持ち物を収納できる布の袋が入っていた。
「ね? だから言いましたよね」とでも言いたげな顔のククリをよそに俺は布の袋の中にひのきの棒と魔力草二つと薬草とにおい袋をしまうとそれを肩にかけベアさんのもとへと向かった。
俺は赤く光り輝く石を前に固まる。
魔石は青色だったはず。形はそっくりだがこれは色が違う。
「ククリ、これなんだ?」ククリにそう訊ねようとした瞬間、
「マツイさん、やりましたよっ!」
ククリが俺の肩を叩きながら喜びの声を上げた。
「なんだ、どうしたんだ?」
「これはレアアイテムですよっ! わあ、すごいついてますよ、マツイさんっ! だから言ったじゃないですか、この宝箱の中身はいいものだってっ!」
「ククリ、わかったからちゃんと説明してくれ」
一人テンションの上がっているククリを落ち着かせ俺は努めて冷静に話をきく。
「あっ、すいません、一人で舞い上がっちゃって……こほん。えーとこれはですね、帰還石といって割ると一瞬にしてダンジョンの外に出られるアイテムなんです」
「……それってすごいのか?」
ダンジョンの外に出るなら写し鏡の門を通ればいいだけだしもっと言えば同じフロアに一時間居続ければ強制的に外に出られる。
何もそんなに喜ぶ必要はないのでは。
「何言ってるんですかマツイさん! これを使えばどの階層からでもどんなピンチな時でもアイテムもお金も持ったまま一瞬でダンジョン外に出ることができるんですよ! しかもフロアボスとの戦闘中にも使えるんです、最高じゃないですかっ!」
「おお! そう聞くと確かにすごくいいなこれっ」
「でしょう。だったらもっと喜んでくださいよっ、帰還石ですよ、帰還石!」
「ああ、めちゃくちゃ喜んでるさ」
感情があまり顔に出ないタチだからわかりにくいかもしれないがこれでも心底喜んでいる。
「ちなみにいくらで売れるんだこれ?」
宝箱から取り出した帰還石を眺めながら訊くと、
「えっ? まさかそれ売る気ですかっ?」
ククリが目を見開いた。
「いや、そうじゃないけど一応売値は知っておきたいなと思ってさ」
「ほんとですか~? そう言いながら売る気じゃないんですか~?」
じとっとした目でククリは俺を見てくる。
「そんな目で見るなよ。いいからいくらなんだこれ?」
「……十万円です」
「おおっ! 十万円っ!」
魔石と同じ値段だ。
「うーん……」
実際問題どうするか非常に悩みどころだぞこれは。
売れば十万円が手に入る。ニートの俺にとってはものすごい大金だ。
だが、お金を持ってどの階層からでもフロアボスからでも一瞬で外に逃げられる効果は魅力的だ。
「ちょっと。何がうーん……なんですかっ? やっぱり売る気なんじゃ?」
「ま、まあ、とりあえず他のアイテムも探してみてから決めるよ。もしかして帰還石がもう一個みつかるかもしれないし……」
「そんな幸運滅多にあるわけないですけどね」
俺を疑いの目で見てくるククリとともに俺はもと来た道を戻ると他の四つの通路にもそれぞれ進んでいった。
その成果として俺たちは宝箱を三つみつけた。
中にはそれぞれ攻撃力+1のひのきの棒、魔力を少しだけ回復させる魔力草、持ち物を収納できる布の袋が入っていた。
「ね? だから言いましたよね」とでも言いたげな顔のククリをよそに俺は布の袋の中にひのきの棒と魔力草二つと薬草とにおい袋をしまうとそれを肩にかけベアさんのもとへと向かった。
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