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第66話 テイマー
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地下一階層を全裸で歩いていると通路の真ん中にスライムがべたんとうつ伏せで倒れているのが見えた。
「なんだ……?」
俺はそのスライムに近付いていってそのまま蹴り飛ばそうとするが、
「待ってくださいマツイさんっ、そのスライムは倒しちゃ駄目ですっ」
ククリが後ろから声を上げた。
俺はすんでのところで足を止める。
「なんだよククリ、こいつ敵だろ?」
ククリを振り返るが、
「そうですけどこれは新しいスキルを手に入れられるチャンスですよ」
と楽しそうにククリは言った。
「新しいスキル?」
「はい。実はこのトウキョウダンジョンではまれにモンスターが怪我をして倒れていることがあるんです。そのモンスターを治療してあげるとスキル、テイマーが取得できる可能性があるんですよ」
「テイマー? ってなんなんだ?」
初めて聞く単語だ。
「それはテイマーが手に入ったら教えますよ。とりあえず今はこのスライムをヒールで治してあげてみてください」
ククリが言うので俺は倒れているスライムに手をかざし「ヒール!」と唱えた。
オレンジ色の光がスライムを包み込む。
そして、
『ピキー!』
スライムが起き上がった。
俺と目が合うとびくっとなり次の瞬間一目散に逃げ出した。
「なっ……せっかく治してやったのに逃げていったぞ」
「まあまあマツイさん運がよければもうすぐ――」
ククリが話していた時だった。
【テイマーを取得しました】
文字が目の前に浮かび上がる。
「おい、ククリ。なんかテイマーを取得しましたって文字が出たぞ」
「わあ! やりましたよマツイさんっ。一発で取得できるなんて運がいいですっ」
ククリは嬉しそうに俺の腕に抱きついてくる。
「待ってくれ、テイマーが何かわからないから一緒に喜べないだろ」
「あっそうですね、えへへ~……こほんっ、テイマーというスキルはなんとモンスターを仲間に出来ちゃうスキルなんですよっ」
ククリはびしっと俺に指を突きつけて自信満々に言い放った。
「ふーん」
「えっ、反応が薄いっ!? マツイさん、もっと喜んでくださいよっ」
「いや、だってスライムとかゴブリンとか仲間にしたって弱くて使い物にならないだろ。ゾンビは臭いから嫌だし、ビーは俺が蜂苦手だから無理だし」
「そんな~」
期待していたリアクションを俺がとらなかったことがショックだったらしいククリはがくんと頭を下げる。
「これ結構レアなスキルなのに~……せっかく教えてあげたのに~……」
落ち込んだ様子でぶつぶつと独り言を言っているククリ。
そんなククリを見ているとさすがに少しだけだが罪悪感を覚えて、
「ク、ククリ。モンスターを仲間にするにはどうすればいいんだ? 教えてくれよ」
興味もないのに訊いてみる。
するとククリは顔を上げ、ぱあっと明るい表情になった。
「教えてほしいんですか? え~どうしようかな~っ」
体をくねらせる。
うーん、面倒くさい。
「頼むよ、ククリ」
「しょうがないですね。わかりました、そこまで言うなら教えてあげます」
ククリは自慢げに続ける。
「仲間にするにはちょっとコツがいるんです。まず消滅させない程度に仲間にしたいモンスターに大ダメージを与えます、その後に生命力を全回復させてあげるんです。そうすれば必ず仲間になってくれますよ」
「へー、ちょっと大変だな」
別に仲間にする気はないからいいけど。
「ちなみにそれってフロアボスも仲間に出来るのか?」
「出来ますけどそんな余裕ないですよね」
……確かに。マーダーゾンビにもキラービーにもヒヤッとさせられたからな。
フロアボスを仲間に出来るのは多少魅力的だが現実的ではないか……。
「試しにスライムでも仲間にしてみますか?」
ククリは言うが、
「いやあ、今はとりあえずまだいいかな。あとにするよ」
やんわり断っておいた。
「なんだ……?」
俺はそのスライムに近付いていってそのまま蹴り飛ばそうとするが、
「待ってくださいマツイさんっ、そのスライムは倒しちゃ駄目ですっ」
ククリが後ろから声を上げた。
俺はすんでのところで足を止める。
「なんだよククリ、こいつ敵だろ?」
ククリを振り返るが、
「そうですけどこれは新しいスキルを手に入れられるチャンスですよ」
と楽しそうにククリは言った。
「新しいスキル?」
「はい。実はこのトウキョウダンジョンではまれにモンスターが怪我をして倒れていることがあるんです。そのモンスターを治療してあげるとスキル、テイマーが取得できる可能性があるんですよ」
「テイマー? ってなんなんだ?」
初めて聞く単語だ。
「それはテイマーが手に入ったら教えますよ。とりあえず今はこのスライムをヒールで治してあげてみてください」
ククリが言うので俺は倒れているスライムに手をかざし「ヒール!」と唱えた。
オレンジ色の光がスライムを包み込む。
そして、
『ピキー!』
スライムが起き上がった。
俺と目が合うとびくっとなり次の瞬間一目散に逃げ出した。
「なっ……せっかく治してやったのに逃げていったぞ」
「まあまあマツイさん運がよければもうすぐ――」
ククリが話していた時だった。
【テイマーを取得しました】
文字が目の前に浮かび上がる。
「おい、ククリ。なんかテイマーを取得しましたって文字が出たぞ」
「わあ! やりましたよマツイさんっ。一発で取得できるなんて運がいいですっ」
ククリは嬉しそうに俺の腕に抱きついてくる。
「待ってくれ、テイマーが何かわからないから一緒に喜べないだろ」
「あっそうですね、えへへ~……こほんっ、テイマーというスキルはなんとモンスターを仲間に出来ちゃうスキルなんですよっ」
ククリはびしっと俺に指を突きつけて自信満々に言い放った。
「ふーん」
「えっ、反応が薄いっ!? マツイさん、もっと喜んでくださいよっ」
「いや、だってスライムとかゴブリンとか仲間にしたって弱くて使い物にならないだろ。ゾンビは臭いから嫌だし、ビーは俺が蜂苦手だから無理だし」
「そんな~」
期待していたリアクションを俺がとらなかったことがショックだったらしいククリはがくんと頭を下げる。
「これ結構レアなスキルなのに~……せっかく教えてあげたのに~……」
落ち込んだ様子でぶつぶつと独り言を言っているククリ。
そんなククリを見ているとさすがに少しだけだが罪悪感を覚えて、
「ク、ククリ。モンスターを仲間にするにはどうすればいいんだ? 教えてくれよ」
興味もないのに訊いてみる。
するとククリは顔を上げ、ぱあっと明るい表情になった。
「教えてほしいんですか? え~どうしようかな~っ」
体をくねらせる。
うーん、面倒くさい。
「頼むよ、ククリ」
「しょうがないですね。わかりました、そこまで言うなら教えてあげます」
ククリは自慢げに続ける。
「仲間にするにはちょっとコツがいるんです。まず消滅させない程度に仲間にしたいモンスターに大ダメージを与えます、その後に生命力を全回復させてあげるんです。そうすれば必ず仲間になってくれますよ」
「へー、ちょっと大変だな」
別に仲間にする気はないからいいけど。
「ちなみにそれってフロアボスも仲間に出来るのか?」
「出来ますけどそんな余裕ないですよね」
……確かに。マーダーゾンビにもキラービーにもヒヤッとさせられたからな。
フロアボスを仲間に出来るのは多少魅力的だが現実的ではないか……。
「試しにスライムでも仲間にしてみますか?」
ククリは言うが、
「いやあ、今はとりあえずまだいいかな。あとにするよ」
やんわり断っておいた。
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