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第78話 とっておき
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コボルトエースは一旦退くと俺と距離を取りつつ間合いを測る。
つばをごくんと飲み込むと目をきょろきょろさせた。何か次の手を考えているようだ。
するとコボルトエースは何を思ったのか突然自分の体毛をむしり出した。
気でもふれたのか?
不審に思い見ているとコボルトエースはその体毛に息を吹きかけて辺りに舞い散らせる。
「何してんだお前?」
『ケケケケッ』
俺をにらみつけながらも笑みを浮かべるコボルトエース。不気味だ。
「マツイさん気をつけてくださいっ。コボルトエースはコボルトを作り出せるんですっ!」
ククリが叫んだと同時にコボルトエースの体毛がむくむくと動き出しあっという間にコボルトに変化していく。
「なっ……!?」
数瞬のうちに百体以上のコボルトがわらわらと生まれた。
ヒューイ!
コボルトエースの口笛を合図に一斉に襲い掛かってくるコボルトたち。
「マジかよっ」
俺は持っていた鉄の槍でコボルトの群れをなぎ払っていく。が、いかんせん数が多い。
隙をついて後ろから俺の首にかみついてくるコボルト。
「いてぇっ――この、お前らっ!」
しがみついてくるコボルトたちを振り払いながらコボルトエースの場所を確認するとコボルトエースはまだ体毛をむしりながらコボルトたちを無尽蔵に生み出していた。
「あいつっ……」
これではキリがない。
そう判断した俺は一か八か残りの全魔力を使ってバトルウインドを唱えることにした。
コボルトエースは体毛からコボルトを生み出すのに夢中になっているしコボルトの壁があるから俺のことは見えてはいないだろう。
「バトルウインド」
控えめに唱えると風の刃がコボルトたちを真っ二つにしながらコボルトエースめがけて飛んでいく。
当たれっ。
コボルトエースはこっちを見ていない。
今度こそ当たる。
……そう思ったがコボルトエースはコボルトたちの悲鳴でこっちを振り向き間一髪ジャンプしてこれを避けた。
『ケケケケ……』
着地すると仁王立ちで勝ち誇ったようにコボルトエースは俺を見て笑う。
「……へへっ」
俺も笑った。
と次の瞬間コボルトエースの顔面に鉄の槍が直撃した。
『……ケ?』
コボルトエースは笑顔のまま床にどさっと倒れると消滅していく。
「マツイさ~ん、うまくいきましたねっ」
遠くから様子を見ていたククリが飛んでくる。
「ああ。高校の時の槍投げの授業も無駄じゃなかったわけだ」
俺はバトルウインドを唱えたとほぼ同時に鉄の槍を上に投げていた。
それが放物線を描きコボルトエースに見事突き刺さったのだった。
しゅう~。
コボルトエースの体毛から生まれたコボルトだからかコボルトエースの死とともにうじゃうじゃいたコボルトたちも消えていく。
そしてゴゴゴゴゴ……と通路を塞いでいた石の壁はなくなり地下への階段が現れる。
さらに宝箱も現れた。
「結構苦労したんだ。さーて、どんなアイテムかな?」
俺は宝箱に近付いていった。
「フロアボスのアイテムですからね。絶対いいものですよ」
とうきうきしながらククリは言う。
「よし、開けるぞ……ってなんだこれ? ……枕か?」
中に入っていたのはシンプルな形の枕だった。
取り出してよく見てみるがやはり枕だ。
「ククリ、これなんだ?」
「うふふふ。マツイさん、影縫いのお守りといいその枕といいやっぱり今回はついてますよ」
とニヤニヤ顔のククリが俺の腕をつついてくる。
「なんだよ、早く言えって」
「その枕をして十分間眠るとなんと八時間分の睡眠効果が得られるんですよっ。その名も快眠枕ですっ」
枕の説明をするククリはまるで深夜にやっている通販番組の演者のようなテンションだが、
「マジかっ!?」
それが本当なら素直に嬉しい。
「ちなみに売ったらいくらなんだ?」
「売値は影縫いのお守りと同じく五万円です。でももったいないから絶対売らないほうがいいですよ」
「そうだな……」
五万円はかなり魅力的で心惹かれるが快眠枕は持ち帰っても充分使えそうなアイテムだ。
そこで、
「あっ」
と俺は声を上げた。
「どうしました? マツイさん」
「いや、そういえば俺姪っ子にお土産持って帰る約束してたんだ」
珠理奈ちゃんとの約束をすっかり忘れていた。今になって思い出した。
「じゃあ快眠枕をお土産に持って帰りますか?」
「え? うーん……」
正直これを他人にあげるのは惜しい。
持って帰って自分で使いたいくらいなのに。
「じゃあそれでいいんじゃないですか?」
ククリは俺の履いているブーメランパンツを指差す。
「アホか、女の子に俺のブーメランパンツあげて喜ぶわけないだろ」
相手は女子中学生だ。トラウマにでもなったらどうするんだ。
「そうですか。難しいんですね」
「いいよ。まだ帰るまでは時間があるしそれまでに用意すれば」
女子中学生が喜びそうな物か……果たしてなんだろうな。
つばをごくんと飲み込むと目をきょろきょろさせた。何か次の手を考えているようだ。
するとコボルトエースは何を思ったのか突然自分の体毛をむしり出した。
気でもふれたのか?
不審に思い見ているとコボルトエースはその体毛に息を吹きかけて辺りに舞い散らせる。
「何してんだお前?」
『ケケケケッ』
俺をにらみつけながらも笑みを浮かべるコボルトエース。不気味だ。
「マツイさん気をつけてくださいっ。コボルトエースはコボルトを作り出せるんですっ!」
ククリが叫んだと同時にコボルトエースの体毛がむくむくと動き出しあっという間にコボルトに変化していく。
「なっ……!?」
数瞬のうちに百体以上のコボルトがわらわらと生まれた。
ヒューイ!
コボルトエースの口笛を合図に一斉に襲い掛かってくるコボルトたち。
「マジかよっ」
俺は持っていた鉄の槍でコボルトの群れをなぎ払っていく。が、いかんせん数が多い。
隙をついて後ろから俺の首にかみついてくるコボルト。
「いてぇっ――この、お前らっ!」
しがみついてくるコボルトたちを振り払いながらコボルトエースの場所を確認するとコボルトエースはまだ体毛をむしりながらコボルトたちを無尽蔵に生み出していた。
「あいつっ……」
これではキリがない。
そう判断した俺は一か八か残りの全魔力を使ってバトルウインドを唱えることにした。
コボルトエースは体毛からコボルトを生み出すのに夢中になっているしコボルトの壁があるから俺のことは見えてはいないだろう。
「バトルウインド」
控えめに唱えると風の刃がコボルトたちを真っ二つにしながらコボルトエースめがけて飛んでいく。
当たれっ。
コボルトエースはこっちを見ていない。
今度こそ当たる。
……そう思ったがコボルトエースはコボルトたちの悲鳴でこっちを振り向き間一髪ジャンプしてこれを避けた。
『ケケケケ……』
着地すると仁王立ちで勝ち誇ったようにコボルトエースは俺を見て笑う。
「……へへっ」
俺も笑った。
と次の瞬間コボルトエースの顔面に鉄の槍が直撃した。
『……ケ?』
コボルトエースは笑顔のまま床にどさっと倒れると消滅していく。
「マツイさ~ん、うまくいきましたねっ」
遠くから様子を見ていたククリが飛んでくる。
「ああ。高校の時の槍投げの授業も無駄じゃなかったわけだ」
俺はバトルウインドを唱えたとほぼ同時に鉄の槍を上に投げていた。
それが放物線を描きコボルトエースに見事突き刺さったのだった。
しゅう~。
コボルトエースの体毛から生まれたコボルトだからかコボルトエースの死とともにうじゃうじゃいたコボルトたちも消えていく。
そしてゴゴゴゴゴ……と通路を塞いでいた石の壁はなくなり地下への階段が現れる。
さらに宝箱も現れた。
「結構苦労したんだ。さーて、どんなアイテムかな?」
俺は宝箱に近付いていった。
「フロアボスのアイテムですからね。絶対いいものですよ」
とうきうきしながらククリは言う。
「よし、開けるぞ……ってなんだこれ? ……枕か?」
中に入っていたのはシンプルな形の枕だった。
取り出してよく見てみるがやはり枕だ。
「ククリ、これなんだ?」
「うふふふ。マツイさん、影縫いのお守りといいその枕といいやっぱり今回はついてますよ」
とニヤニヤ顔のククリが俺の腕をつついてくる。
「なんだよ、早く言えって」
「その枕をして十分間眠るとなんと八時間分の睡眠効果が得られるんですよっ。その名も快眠枕ですっ」
枕の説明をするククリはまるで深夜にやっている通販番組の演者のようなテンションだが、
「マジかっ!?」
それが本当なら素直に嬉しい。
「ちなみに売ったらいくらなんだ?」
「売値は影縫いのお守りと同じく五万円です。でももったいないから絶対売らないほうがいいですよ」
「そうだな……」
五万円はかなり魅力的で心惹かれるが快眠枕は持ち帰っても充分使えそうなアイテムだ。
そこで、
「あっ」
と俺は声を上げた。
「どうしました? マツイさん」
「いや、そういえば俺姪っ子にお土産持って帰る約束してたんだ」
珠理奈ちゃんとの約束をすっかり忘れていた。今になって思い出した。
「じゃあ快眠枕をお土産に持って帰りますか?」
「え? うーん……」
正直これを他人にあげるのは惜しい。
持って帰って自分で使いたいくらいなのに。
「じゃあそれでいいんじゃないですか?」
ククリは俺の履いているブーメランパンツを指差す。
「アホか、女の子に俺のブーメランパンツあげて喜ぶわけないだろ」
相手は女子中学生だ。トラウマにでもなったらどうするんだ。
「そうですか。難しいんですね」
「いいよ。まだ帰るまでは時間があるしそれまでに用意すれば」
女子中学生が喜びそうな物か……果たしてなんだろうな。
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