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第83話 小休止

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ベアさんと別れた俺たちは適当な場所を探して腰を下ろした。
皮の袋から地下五階層で手に入れていた満腹草を取り出すと一口食べてみる。

「おっ、割と美味しいっ」
「でしょう。満腹草はお腹も膨れるしとっても美味しいんですよ、言ったじゃないですか」
ククリは言いながら物欲しそうな顔で俺の持つ満腹草をみつめていた。

「……食べるか?」
「えっ、そんないいですよっ。それはマツイさんのものですからっ。それに精霊は食べなくても大丈夫ですしっ」
ぶんぶんと首を大きく横に振る。

「いいよ。半分やるよ」
「でも……」
「薬草もまだ三つあるし魔力草もあるからさ」
食べるものには当分困らないだろう。

「そ、そうですか……じゃあ、いただきます」
そう言うとククリは申し訳なさそうに俺の差し出した満腹草を受け取った。
そしてそのまま口へと運んだ。

「ん~美味しいです~」
一転幸せそうに顔をほころばせるククリ。
俺はその様子を見ながら皮の袋から今度は快眠枕を引っ張り出す。

「悪いけどちょっとだけ横になるぞ」
「はい、どうぞ~」

快眠枕を床に置くと俺はその上に頭を乗せ目を閉じた。

快眠枕で寝ると十分間で八時間分の睡眠効果が得られるということだから時間を有効活用できる。
このアイテムは是非家に持って帰りたいアイテムでも……あ……る……。


◇ ◇ ◇


「……マツイさん、マツイさん起きてくださいっ!」

「……はっ」
頬の痛みとともに俺は目覚めた。

「ククリ……なんかほっぺたが痛いんだけど」
俺は頬をさすりながらククリを見る。

「気のせいですっ。それよりボアにみつかっちゃいましたよっ」
ククリが前方を指差す。
その先にはボアが前足で地面を蹴り今にも突進してきそうな勢いで俺をにらんでいた。

俺はさっと起き上がると刀を手に取る。
「ククリ、俺どれくらい寝てた?」
「二十分くらいだと思います」
「充分だっ」

眠気も疲労も魔力も何もかも完全回復した俺は向かってきたボアを横によけながら剣道ゆずりの胴をくらわせた。
妖刀ふたつなぎの効果で二つの斬撃がボアを襲う。

『ブフー……!』

地面に倒れたボアは最期の鳴き声を吐き出すと消滅していった。


「ククリ、起こしてくれてありがとうな。でもその枕使ってれば十分でいいんだろ、なんで十分で起こさなかったんだ?」
「マツイさんがあまりにも気持ちよさそうに寝ていたからですよ。母性本能をくすぐられたんです」
「そうなのか」
よくわからんが。

「あとほっぺたがやっぱり痛いんだけど、寝てるときにボアに攻撃されたかな?」
「さ、さあ? 私は知りませんよ」

ククリは俺から顔をそむけるとすーっと飛んでいってしまった。
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