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最終章 前編 〈王都編〉
呪術師 〈ダインの家系〉
「どうしてライコフって確かティナの婚約者だったあの男?」
「そうだ……奴はヨツバ王国の重要機密を外部に漏らした罪で本来は牢獄送りにされるはずだった。だが、裏で奴は第一王女様の手引きで釈放されている」
「え!?そんな話聞いた事がないっすよ!?」
「当たり前だ。この事実を知っているのは極一部の森人族だけだ……我々の中でもこの情報を知っているのはハヅキ様と一部の緑影だけだ」
ライコフが釈放された情報はエリナも知らなかったらしく、どうして大罪を犯したライコフをヨツバ王国の第一王女が釈放したのかはラナも理由は分からないが、ライコフが釈放されていた事実は変わりない。
「ライコフが釈放された後、奴は第一王女のカレハ様の側近として仕えている事しか我々も知らされていない」
「カレハ……それがティナのもう一人の姉?」
「そうです。アルン様やノル様と違ってすっごい意地悪な人なんですよ!!よくティナ様の事を虐めてくる嫌なお姫様です!!」
エリナの言葉を聞いてレナは以前にティナと初めて遭遇した際、アイリスが彼女は一番上の姉から命を狙われているという話を思い出す。実際にレナがティナと遭遇したときに彼女を襲った魔物の正体はカレハが手引きした魔物使いの仕業であったらしく、もしもレナが動かなかったら全員が殺されていた可能性もあった。
冒険都市に観光に訪れた王族の中にカレハは存在せず、彼女だけがヨツバ王国に残っている。だが、どうしてカレハの側近として釈放されたライコフが緑影の面々の前に現れたのか気になり、レナは話の続きを促す。
「もう一人の人間の男は?顔や名前は知らないの?」
「……分からない。確かに顔も見たし、言葉を交わしたはずなのにその男に関する記憶が曖昧だ。どうしても思い出せない……洗脳の後遺症なのか?」
「……呪術師だ」
「えっ?」
ラナの言葉を聞いたダインがぽつりと呟き、全員がダインに視線を向けると、何故か顔色を青くしながらダインはラナ達が遭遇した男の職業を確信したように説明する。
「間違いない、そいつは呪術師だ……洗脳や記憶の抹消なんて行えるのは呪術師だけだ」
「呪術師……?」
「聞いたことがない職業だが……それは闇魔導士や死霊使いとは違うのか?」
呪術師という職業の名前はその場に存在した殆どの人間も聞いたことはなく、一体どのような職業なのかダインに尋ねようとした時、ラナが心当たりを思い出したように驚きの声を上げた。
「呪術師……そうか、聞いたことがあるぞ!!死霊使いよりも希少な職業で他者を操り、怨念を生み出す魔術師だと……まさか実在したというのか!?」
「そ、そうだよ……僕はそいつらを知っている。とんでもなく醜悪で、頭がおかしい連中さ……」
「ダイン、どういう事だ?どうしてそんな事をお前が知っている?」
何かを怯えるようにダインは身体を震わせ、その様子を心配したゴンゾウが彼の肩に手を置くと、ダインは意を決したように自分の秘密を明かす。
「ぼ、僕の家はバルトロス王国の貴族だ……家名はシャドル、公爵家の子供だった」
「シャドル公爵!?それってバルトロス王国の中でも凄く偉い立場の人たちじゃないっすか!?」
「ダインが……公爵家の子供?」
「驚愕の事実」
『キュロロッ……?』
ダインの言葉にレナ達は驚きを隠せず、一人だけ話を理解できないアインは首を傾げるが、ダインは顔色を悪くしながらも今まで話さなかった自分の家の秘密を明かす。
「ぼ、僕の家はバルトロス王国の中でも歴史が深い家系なんだ。だけど、公爵家と言っても領地なんて持っていないし、王都から無暗に離れる事も許されていない。理由は僕達の家系は王族を影から支えるために存在するからなんだよ」
「影から支える……それはどういう意味?」
「分かりやすく言えば僕達は暗殺者の家系なんだよ。最も、僕の家に暗殺者の職業の人間なんて生まれたことはない。根っからの魔術師の家系だけどな……だけど、王国に仇なす存在が現れたときに真っ先に頼られるのはシャドル家なんだ」
「言っている意味が分からない、どうして暗殺者ではない人間が暗殺を生業としているんだ?」
ヨツバ王国の緑影のようにバルトロス王国ではシャドル公爵家に人間が国を影から支える存在だと説明するが、どうして魔術師の家系であるシャドル公爵家が暗殺者のように動いているのかというと、ダインは身体を震わせながらその理由を話す。
「僕達の家は……呪術師の家系なんだ。生まれてくる子供の殆どが呪術師なんだ」
「呪術師……さっき話していた職業か」
「ああ、闇魔導士と死霊使いとも異なる呪術師の能力は重宝されるから、バルトロス王国は公爵の称号を与えてくれたんだ。知ってるか?呪術師は洗脳や記憶の抹消する事も出来る。それどころか使者の怨念を生み出して相手に呪いを与える事も出来るんだよ」
「呪い?」
「呪術師に呪われた人間は必ず不幸に陥るんだ。最悪の場合、死亡する事も珍しくはない。だけど他人を呪うときは呪術師もそれ相応の代償を追わないといけないんだ……相手を呪うとき、必ず自分の寿命を削るんだ。そのせいでシャドル公爵家の人間の殆どは40代も迎えずに死ぬんだ」
「……嘘、ですよね?」
ダインの言葉にエリナは表情を引きつらせ、そんな彼女の顔を見てもダインは俯き、シャドル公爵家が王国のためにどれほど大勢の人間を消したのかはダインですらも把握していない。また、この「呪い」に関しては現状では呪術師が解除する以外に呪いを解く方法は存在せず、呪われた人間は死ぬまで不幸に苛まれるという。
呪術師の家系であるシャドル公爵家が重宝されたのはバルトロス王国にとって不利益な人物を抹殺し続けたからである。だが、ダインの場合は幸か不幸か「呪術師」の職業は得られず、普通の子供として生まれた。
「僕が家から抜けたのは呪術師の職業を覚えていなかったからなんだよ。僕だけが普通の人間のように生きられる事に他の家族から疎まれて育ったよ。僕は何もしていないのに……あいつらは僕を家族と認めてくれなかった」
「ダイン……」
「レナなら僕の気持ちが分かるだろ?なんで生まれた職業でここまで苦労しないといけないんだって思った僕は家を抜けて、冒険者になったんだ。あいつら、僕が家を抜け出しても何も言わなかったよ。厄介者が消えてせいせいした思ってるんじゃないかな……」
「そんな……」
「あ、でも言っておくけど僕は家を出た事を後悔した事なんてないからな!!冒険者の仕事はきついけど、あの家で暮らしている時と比べたらずっと楽だし、友達も出来たし、何よりも僕の事を責める奴がいないからな!!」
家を捨てたダインは偶然にもバルに目を付けられ、彼女の指導の下で冒険者に職業に就く。最初の頃は苦労していたが、時間が経つ度に庶民の生活にも慣れた(但し、金遣いに関しては未だに貴族だった頃の癖が抜けきれておらず、稼いだ金もすぐに使い切ってしまう悪癖は残っているが)。
話を終えたダインはどうにか心が落ち着いたのか、隠し事を話した事ですっきりとした表情を浮かべ、ラナに振り返ると彼女の身に何が起きたのかを推察する。
「呪術師の能力の事は僕もよく知っている。あんたがその男の事を思い出せないのは記憶をいじられたんだ……だけど、洗脳や記憶の改竄なんて芸当が出来るのはシャドル家でも限られている。あんたを操った男の正体を僕は知っている」
「だ、誰だ!?教えてくれ!!私達を利用したのは何者だ!?」
「それは……」
ラナの質問にダインは一瞬だけ躊躇するが、やがて覚悟を決めたように自分の家族だった男の名前を告げた。
※明かされたダインの秘密……彼の家系は割と初期の頃から重要な存在だと決めていました。
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「カレハ……それがティナのもう一人の姉?」
「そうです。アルン様やノル様と違ってすっごい意地悪な人なんですよ!!よくティナ様の事を虐めてくる嫌なお姫様です!!」
エリナの言葉を聞いてレナは以前にティナと初めて遭遇した際、アイリスが彼女は一番上の姉から命を狙われているという話を思い出す。実際にレナがティナと遭遇したときに彼女を襲った魔物の正体はカレハが手引きした魔物使いの仕業であったらしく、もしもレナが動かなかったら全員が殺されていた可能性もあった。
冒険都市に観光に訪れた王族の中にカレハは存在せず、彼女だけがヨツバ王国に残っている。だが、どうしてカレハの側近として釈放されたライコフが緑影の面々の前に現れたのか気になり、レナは話の続きを促す。
「もう一人の人間の男は?顔や名前は知らないの?」
「……分からない。確かに顔も見たし、言葉を交わしたはずなのにその男に関する記憶が曖昧だ。どうしても思い出せない……洗脳の後遺症なのか?」
「……呪術師だ」
「えっ?」
ラナの言葉を聞いたダインがぽつりと呟き、全員がダインに視線を向けると、何故か顔色を青くしながらダインはラナ達が遭遇した男の職業を確信したように説明する。
「間違いない、そいつは呪術師だ……洗脳や記憶の抹消なんて行えるのは呪術師だけだ」
「呪術師……?」
「聞いたことがない職業だが……それは闇魔導士や死霊使いとは違うのか?」
呪術師という職業の名前はその場に存在した殆どの人間も聞いたことはなく、一体どのような職業なのかダインに尋ねようとした時、ラナが心当たりを思い出したように驚きの声を上げた。
「呪術師……そうか、聞いたことがあるぞ!!死霊使いよりも希少な職業で他者を操り、怨念を生み出す魔術師だと……まさか実在したというのか!?」
「そ、そうだよ……僕はそいつらを知っている。とんでもなく醜悪で、頭がおかしい連中さ……」
「ダイン、どういう事だ?どうしてそんな事をお前が知っている?」
何かを怯えるようにダインは身体を震わせ、その様子を心配したゴンゾウが彼の肩に手を置くと、ダインは意を決したように自分の秘密を明かす。
「ぼ、僕の家はバルトロス王国の貴族だ……家名はシャドル、公爵家の子供だった」
「シャドル公爵!?それってバルトロス王国の中でも凄く偉い立場の人たちじゃないっすか!?」
「ダインが……公爵家の子供?」
「驚愕の事実」
『キュロロッ……?』
ダインの言葉にレナ達は驚きを隠せず、一人だけ話を理解できないアインは首を傾げるが、ダインは顔色を悪くしながらも今まで話さなかった自分の家の秘密を明かす。
「ぼ、僕の家はバルトロス王国の中でも歴史が深い家系なんだ。だけど、公爵家と言っても領地なんて持っていないし、王都から無暗に離れる事も許されていない。理由は僕達の家系は王族を影から支えるために存在するからなんだよ」
「影から支える……それはどういう意味?」
「分かりやすく言えば僕達は暗殺者の家系なんだよ。最も、僕の家に暗殺者の職業の人間なんて生まれたことはない。根っからの魔術師の家系だけどな……だけど、王国に仇なす存在が現れたときに真っ先に頼られるのはシャドル家なんだ」
「言っている意味が分からない、どうして暗殺者ではない人間が暗殺を生業としているんだ?」
ヨツバ王国の緑影のようにバルトロス王国ではシャドル公爵家に人間が国を影から支える存在だと説明するが、どうして魔術師の家系であるシャドル公爵家が暗殺者のように動いているのかというと、ダインは身体を震わせながらその理由を話す。
「僕達の家は……呪術師の家系なんだ。生まれてくる子供の殆どが呪術師なんだ」
「呪術師……さっき話していた職業か」
「ああ、闇魔導士と死霊使いとも異なる呪術師の能力は重宝されるから、バルトロス王国は公爵の称号を与えてくれたんだ。知ってるか?呪術師は洗脳や記憶の抹消する事も出来る。それどころか使者の怨念を生み出して相手に呪いを与える事も出来るんだよ」
「呪い?」
「呪術師に呪われた人間は必ず不幸に陥るんだ。最悪の場合、死亡する事も珍しくはない。だけど他人を呪うときは呪術師もそれ相応の代償を追わないといけないんだ……相手を呪うとき、必ず自分の寿命を削るんだ。そのせいでシャドル公爵家の人間の殆どは40代も迎えずに死ぬんだ」
「……嘘、ですよね?」
ダインの言葉にエリナは表情を引きつらせ、そんな彼女の顔を見てもダインは俯き、シャドル公爵家が王国のためにどれほど大勢の人間を消したのかはダインですらも把握していない。また、この「呪い」に関しては現状では呪術師が解除する以外に呪いを解く方法は存在せず、呪われた人間は死ぬまで不幸に苛まれるという。
呪術師の家系であるシャドル公爵家が重宝されたのはバルトロス王国にとって不利益な人物を抹殺し続けたからである。だが、ダインの場合は幸か不幸か「呪術師」の職業は得られず、普通の子供として生まれた。
「僕が家から抜けたのは呪術師の職業を覚えていなかったからなんだよ。僕だけが普通の人間のように生きられる事に他の家族から疎まれて育ったよ。僕は何もしていないのに……あいつらは僕を家族と認めてくれなかった」
「ダイン……」
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