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最終章 前編 〈王都編〉
王都潜入
「よし、皆出てきていいよ」
レナは両手を広げた瞬間、空中に出現した黒渦が巨大化して人間が通れる程の大きさへと変化すると、深淵の森で待機している仲間達が姿を現す。全員が黒渦を抜け出した瞬間に視界に広がる王都の風景に驚き、本当に空間魔法を駆使して遠距離を一瞬で移動した事に動揺を隠せない。
「うわ、本当に王都なのかここ!?凄いな……」
「兄貴の魔法、とんでもないっす……」
「わあ……綺麗だね」
「確かに綺麗……でも、街の明りが多すぎて眩しい」
「まさかこのような方法で忍び込めるとは……」
「ここが王都か……俺も来るのは初めてだ」
「僕も来るのは久しぶりだよ……でも、前に来た時より雰囲気が少し違うように感じる」
全員が出てきたことを確認するとレナは黒渦を消失させてこれからの事を話し合う。全員をひとまずは王都の中へ招く事は出来たが、ここから先は何処で潜伏するのかが重要になる。
「この中で王都に来た事がある人は居る?」
「あ、私達は何度か来たことがあるよ~」
「そうっすね。でも、どの時も観光する余裕がなかったんで街の地理の方はちょっと……」
「私達が王都へ訪れるときはヨツバ王国とバルトロス王国の国交の話し合いを行う時だけです。当然ですが滞在する場所は王城でしたので無暗に街に繰り出す事も出来ません。ですが、王城の内部ならば私達も何度か訪れているので侵入の際は役に立つかと……」
「なるほど、それならどうしようか……」
「レナ、例の革命団とかいう奴等に頼って見たらどうだ?」
ダインは先日に冒険都市に訪れたとき、ドルトン商会のフェリスがバルから受け取った手紙の内容を思い出して革命団という王国と対立する組織に頼れないのかと考える。実際に先に王都へ潜入したバルがこの街の何処かで革命団と共に滞在しているはずであり、彼女と合流出来れば王都の潜伏先も用意してもらえるかもしれない。
「革命団か……でも、そもそも何処に存在するのかな?手紙にも居場所までは書かれていなかったし、それに俺達は指名手配されているらしいから情報収集も難しいと思うよ」
「スラミンとヒトミンも居ないから変装も出来ない」
「あ、そうか……どうしよう」
「とりあえず、皆はもう一度家の方に避難しててよ。俺が街の中を探索して情報を探ってくるから」
「大丈夫か?」
「いざという時は皆を呼び出すから……あ、そうだ。ラナからこれを預かってたんだ」
「それは……緑笛ですか?」
ラナから受け取った笛を取り出すとリンダは驚いた表情を浮かべ、その一方で納得したように頷く。この笛をレナに渡した時点でラナがレナの事を認めたと判断し、彼女は忠告する。
「レナ様、その緑笛は本来は緑影に所属する森人族しか聞き取る事は出来ません。しかし、聴覚の鋭い獣人族ならば聞き取られる可能性もあります。使用する時は気をつけて下さい」
「そうなの?分かった、気を付ける」
「兄貴、あたしも一緒に付いていきますよ。こう見えても潜伏は得意なので役に立ちますよ」
「あ、それなら僕も行くよ!!何度か王都には訪れた事があるから、だいたいの地理は分かると思う……多分」
「分かった。ならエリナとミナは一緒に行動して、他の皆はもうしばらく屋敷の方に隠れていて」
「レナ、気を付けろよ」
エリナとミナの提案を受け入れたレナは二人以外を深淵の森の屋敷の方に戻すと、3人で行動を開始する。王国の都というだけはあって冒険都市よりも人口密度が高く、建物の数も多い。だが、それ以上に気になるのは兵士がやたらと街道を巡回していた。
「兵士の数が多いな……二人とも、顔を隠してついてこいよ」
「うう、何だか犯罪者になった気分っす」
「僕達何も悪い事してないのにね……」
とりあえずは全員が髪形を変えて銀砂を利用して髪の毛の色も変色した状態で3人は移動を行い、顔を観察されない限りは指名手配犯だと気付かれる恐れはない。3人は敢えて人気の多い街道を移動しながら街の様子を伺い、道行く人達の話し声を耳にする。
「なあ、聞いたか?ナオ姫様が処刑される日が早まるかもしれないらしいな」
「ああ、何でも明後日に処刑が変更されるかもしれないんだろ?正式な発表は明日行われるそうだが……」
「それにしても何でナオ姫様が国王の暗殺なんて……正直、今でも信じられねえよ」
「俺もだよ。あの人のお陰で腐敗竜は死んだんだろ?何かの間違いじゃねえのかよ……」
移動中にレナは聞き捨てならない会話を行う二人組の話を耳にして立ち止まってしまい、他の二人も気づいたのかレナと共に盗み聞きを行う。話を行っていたのはこの街の冒険者と思われる若い男達らしく、二人が酒場に入るとレナ達も後に続く。
運がいい事に酒場のテーブル席は満員だったらしく、二人組はカウンターに移動してレナ達も後に続く。2人はこのまま飲むつもりなのか酒を注文する。
「店主、いつもの奴を頼むよ。ついでに軽く摘まめる物もお願い」
「あいよ、今日の仕事はどうだった?」
「全然だよ、王国兵の奴等が冒険者ギルドまで押し寄せてきて今は活動停止中さ、俺達が氷雨の冒険者だからって扱いが酷くねえか?」
「マリア様の事をしつこく聞かれても俺達には答えられねえのによ……」
どうやら二人組は王都に存在する氷雨の支部ギルドの冒険者らしく、レナはミナに顔を合わせるが彼女も支部の人間の事までは把握していないらしく、首を振る。店主は二人に葡萄酒と焼き鳥のような料理を用意すると、レナ達に視線を向けて注文を尋ねた。
「よう、あんたらは新入りさんだな……酒は飲める年齢なのか?」
「年齢は問題ないですけど、酒は遠慮しときます。この料理をお願いしていいですか?」
「おいおい坊主、酒場に来て酒を頼まないなんて失礼な奴だな」
「お前等、見た所は新人の冒険者か?先輩冒険者として忠告してやるが、こういう店に入ったら1杯でも酒を頼みな。そうしないと店主にも失礼だろ?」
「ははは、うちとしては金さえ払ってくれれば酒だろうと料理だけだろうと気にしねえよ。ブタンのステーキと果実水でいいか?」
「あ、あたしは野菜と果物をお願いします」
「僕はブタンの丸焼きで!!」
「おう、任せろ」
3人は料理を頼みと店主は裏に移動すると、レナ達は彼等の反応から自分達の正体が気付かれていない事を確信して安堵する。そして2人の冒険者の様子を伺うと、彼等はため息を吐きながら先ほどの話の続きを行う。
「にしても本当にナオ姫が処刑されるのか?あの人、王位継承者だろ?」
「王位継承者だろうと国王の暗殺未遂なんて罪が許されないという事だろ。それに国王がいなくなればナオ姫様がこの国を継ぐ事になるんだ。動機としては十分あり得るだろうが……」
「でも、あのお姫様が国王の暗殺なんて信じられねえよ。まさか、噂の通りに本当に王妃様が仕向けたんじゃ……」
「馬鹿野郎、滅多なことを口にするな……実質、この王国はあの王妃が支配してるんだよ。国王なんてただの飾り……あの人に逆らえるはずがねえ」
「…………」
話を聞く限りでは一般冒険者の間でも現在の王国は王妃が裏から支配している事を知っているらしく、今回の国王暗殺未遂の件もナオの反抗ではなく、王妃の仕業だと考えている者も居た。だが、それが事実であったところで王妃に逆らえる存在が居ない以上は彼女を止める事は出来ず、このままではナオが処刑されてしまう。
重要なのは二人の話ではナオの処刑日が早まったという話であり、一体何時頃に処刑が執行されるのか気になった直接二人に尋ねようとした時、隣の席のエリナが肘でつついて注意を引く。
レナは両手を広げた瞬間、空中に出現した黒渦が巨大化して人間が通れる程の大きさへと変化すると、深淵の森で待機している仲間達が姿を現す。全員が黒渦を抜け出した瞬間に視界に広がる王都の風景に驚き、本当に空間魔法を駆使して遠距離を一瞬で移動した事に動揺を隠せない。
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「わあ……綺麗だね」
「確かに綺麗……でも、街の明りが多すぎて眩しい」
「まさかこのような方法で忍び込めるとは……」
「ここが王都か……俺も来るのは初めてだ」
「僕も来るのは久しぶりだよ……でも、前に来た時より雰囲気が少し違うように感じる」
全員が出てきたことを確認するとレナは黒渦を消失させてこれからの事を話し合う。全員をひとまずは王都の中へ招く事は出来たが、ここから先は何処で潜伏するのかが重要になる。
「この中で王都に来た事がある人は居る?」
「あ、私達は何度か来たことがあるよ~」
「そうっすね。でも、どの時も観光する余裕がなかったんで街の地理の方はちょっと……」
「私達が王都へ訪れるときはヨツバ王国とバルトロス王国の国交の話し合いを行う時だけです。当然ですが滞在する場所は王城でしたので無暗に街に繰り出す事も出来ません。ですが、王城の内部ならば私達も何度か訪れているので侵入の際は役に立つかと……」
「なるほど、それならどうしようか……」
「レナ、例の革命団とかいう奴等に頼って見たらどうだ?」
ダインは先日に冒険都市に訪れたとき、ドルトン商会のフェリスがバルから受け取った手紙の内容を思い出して革命団という王国と対立する組織に頼れないのかと考える。実際に先に王都へ潜入したバルがこの街の何処かで革命団と共に滞在しているはずであり、彼女と合流出来れば王都の潜伏先も用意してもらえるかもしれない。
「革命団か……でも、そもそも何処に存在するのかな?手紙にも居場所までは書かれていなかったし、それに俺達は指名手配されているらしいから情報収集も難しいと思うよ」
「スラミンとヒトミンも居ないから変装も出来ない」
「あ、そうか……どうしよう」
「とりあえず、皆はもう一度家の方に避難しててよ。俺が街の中を探索して情報を探ってくるから」
「大丈夫か?」
「いざという時は皆を呼び出すから……あ、そうだ。ラナからこれを預かってたんだ」
「それは……緑笛ですか?」
ラナから受け取った笛を取り出すとリンダは驚いた表情を浮かべ、その一方で納得したように頷く。この笛をレナに渡した時点でラナがレナの事を認めたと判断し、彼女は忠告する。
「レナ様、その緑笛は本来は緑影に所属する森人族しか聞き取る事は出来ません。しかし、聴覚の鋭い獣人族ならば聞き取られる可能性もあります。使用する時は気をつけて下さい」
「そうなの?分かった、気を付ける」
「兄貴、あたしも一緒に付いていきますよ。こう見えても潜伏は得意なので役に立ちますよ」
「あ、それなら僕も行くよ!!何度か王都には訪れた事があるから、だいたいの地理は分かると思う……多分」
「分かった。ならエリナとミナは一緒に行動して、他の皆はもうしばらく屋敷の方に隠れていて」
「レナ、気を付けろよ」
エリナとミナの提案を受け入れたレナは二人以外を深淵の森の屋敷の方に戻すと、3人で行動を開始する。王国の都というだけはあって冒険都市よりも人口密度が高く、建物の数も多い。だが、それ以上に気になるのは兵士がやたらと街道を巡回していた。
「兵士の数が多いな……二人とも、顔を隠してついてこいよ」
「うう、何だか犯罪者になった気分っす」
「僕達何も悪い事してないのにね……」
とりあえずは全員が髪形を変えて銀砂を利用して髪の毛の色も変色した状態で3人は移動を行い、顔を観察されない限りは指名手配犯だと気付かれる恐れはない。3人は敢えて人気の多い街道を移動しながら街の様子を伺い、道行く人達の話し声を耳にする。
「なあ、聞いたか?ナオ姫様が処刑される日が早まるかもしれないらしいな」
「ああ、何でも明後日に処刑が変更されるかもしれないんだろ?正式な発表は明日行われるそうだが……」
「それにしても何でナオ姫様が国王の暗殺なんて……正直、今でも信じられねえよ」
「俺もだよ。あの人のお陰で腐敗竜は死んだんだろ?何かの間違いじゃねえのかよ……」
移動中にレナは聞き捨てならない会話を行う二人組の話を耳にして立ち止まってしまい、他の二人も気づいたのかレナと共に盗み聞きを行う。話を行っていたのはこの街の冒険者と思われる若い男達らしく、二人が酒場に入るとレナ達も後に続く。
運がいい事に酒場のテーブル席は満員だったらしく、二人組はカウンターに移動してレナ達も後に続く。2人はこのまま飲むつもりなのか酒を注文する。
「店主、いつもの奴を頼むよ。ついでに軽く摘まめる物もお願い」
「あいよ、今日の仕事はどうだった?」
「全然だよ、王国兵の奴等が冒険者ギルドまで押し寄せてきて今は活動停止中さ、俺達が氷雨の冒険者だからって扱いが酷くねえか?」
「マリア様の事をしつこく聞かれても俺達には答えられねえのによ……」
どうやら二人組は王都に存在する氷雨の支部ギルドの冒険者らしく、レナはミナに顔を合わせるが彼女も支部の人間の事までは把握していないらしく、首を振る。店主は二人に葡萄酒と焼き鳥のような料理を用意すると、レナ達に視線を向けて注文を尋ねた。
「よう、あんたらは新入りさんだな……酒は飲める年齢なのか?」
「年齢は問題ないですけど、酒は遠慮しときます。この料理をお願いしていいですか?」
「おいおい坊主、酒場に来て酒を頼まないなんて失礼な奴だな」
「お前等、見た所は新人の冒険者か?先輩冒険者として忠告してやるが、こういう店に入ったら1杯でも酒を頼みな。そうしないと店主にも失礼だろ?」
「ははは、うちとしては金さえ払ってくれれば酒だろうと料理だけだろうと気にしねえよ。ブタンのステーキと果実水でいいか?」
「あ、あたしは野菜と果物をお願いします」
「僕はブタンの丸焼きで!!」
「おう、任せろ」
3人は料理を頼みと店主は裏に移動すると、レナ達は彼等の反応から自分達の正体が気付かれていない事を確信して安堵する。そして2人の冒険者の様子を伺うと、彼等はため息を吐きながら先ほどの話の続きを行う。
「にしても本当にナオ姫が処刑されるのか?あの人、王位継承者だろ?」
「王位継承者だろうと国王の暗殺未遂なんて罪が許されないという事だろ。それに国王がいなくなればナオ姫様がこの国を継ぐ事になるんだ。動機としては十分あり得るだろうが……」
「でも、あのお姫様が国王の暗殺なんて信じられねえよ。まさか、噂の通りに本当に王妃様が仕向けたんじゃ……」
「馬鹿野郎、滅多なことを口にするな……実質、この王国はあの王妃が支配してるんだよ。国王なんてただの飾り……あの人に逆らえるはずがねえ」
「…………」
話を聞く限りでは一般冒険者の間でも現在の王国は王妃が裏から支配している事を知っているらしく、今回の国王暗殺未遂の件もナオの反抗ではなく、王妃の仕業だと考えている者も居た。だが、それが事実であったところで王妃に逆らえる存在が居ない以上は彼女を止める事は出来ず、このままではナオが処刑されてしまう。
重要なのは二人の話ではナオの処刑日が早まったという話であり、一体何時頃に処刑が執行されるのか気になった直接二人に尋ねようとした時、隣の席のエリナが肘でつついて注意を引く。
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