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獣人国
牙竜との魔獣契約
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「ガアアッ……!!」
「無駄だよ、その植物は簡単には千切れないよ」
光球の魔法によって急成長した植物の蔓に拘束された牙竜は必死に引きちぎろうとするが、植物の繊維が想像以上に強く、牙竜の力を以てしても簡単には引き裂けない。その間に氷車から降りたリディアが牙竜の様子を確認し、ルノに注意する。
「こいつは追いつめられると咆哮を放つわ。口元も念のために塞いでおいた方がいいわ」
「なるほど……こんな感じ?」
「アガァッ!?」
リディアの言葉を聞いてルノは掌を翳すと、顔面の部分に氷塊の魔法で形成した拘束ぐを作り出し、口元を固定化させる。胴体は植物の蔓に拘束された牙竜は二人を睨みつけるがどちらも全く物怖じせず、堂々と牙竜の元へ向かう。
「こいつに目を付けられたのがあんたの運の尽きね……でも、中々に生きのいい奴ね。可愛がってあげるわ」
「グガァッ……!?」
舌なめずりしながら自分を見つめてくるリディアに牙竜は戸惑うが、その後はマダラパイソンの時と同様に彼女は魔獣契約を牙竜に施す。過去に2体の牙竜を使役していた事はあるが、成体の牙竜と契約するのは初めてであり、リディア自身も興奮気味に契約を行う。
「さあ、私に従いなさい!!」
「ガ、アアッ……!?」
「何か苦しんでるようだけど……」
「契約に抵抗しているみたね。でも、無駄よ!!一度契約を施せばあんたは絶対に主人には逆らえない!!さあ、跪きなさい!!」
身体を震わせる牙竜に対してリディアが再度命令を下すと、今度は首筋に刻まれた契約紋が光り輝き、牙竜は彼女の前に土下座を行うように跪く。その様子を見て満足したのかリディアは身体の興奮が抑えきれないように身悶える。
「ああっ……これよ、この感覚がたまらないわ!!最近は忘れていたけど、やっぱり私はこういう自分の力に絶対の自信を持つ奴を従えさせた時の感覚がたまらないわ!!」
「グウウッ……!!」
「うわぁっ……」
ドSの本性を露わにしたようにリディアは反抗的な視線を向けながらも命令に逆らえずに跪く牙竜の頭を足の裏で踏みつけ、自分の優位性を示す。そんな彼女の行動を見てルノは引いてしまうが、これで当初の目的通りに牙竜を僕として従わせる事が出来た。
「まあ、無事に成功して良かったよ。じゃあ、この子の名前は牙竜だからキバ君でいいよね」
「え、ちょっと!?何を勝手に人の下僕に名前を付けてるのよ!!しかもキバ君って……ガーゴイルの時も思ったけど、あんたセンスが子供っぽいわね!!」
「そういわれても……名前がないと呼ぶときに不便だし、それに分かりやすい方が覚えやすいでしょ?」
「ッ……!!」
「ほら、こいつも気に入らないと言ってるわよ」
勝手に名前を名付けられたキバは不満そうな表情を浮かべ、リディアが代弁するように伝えると、ここでルノは有る事に気づく。
「あれ?俺達の言葉はこの牙竜も理解できるの?」
「前に話さなかったかしら?契約を施した魔獣は魔物使いの能力によってステータス補正を受けるの。今のこいつは私のお陰で人語がある程度まで理解出来る程に知能が発達するし、自然回復能力も高いのよ」
「そうだったのか。あ、もしかしてガー君やマダラパイソンも?」
「あいつらは元々人語を理解出来る程の知能は持っているわよ。でも、契約を施した事でより知能が高くなって成長能力が伸びたのは間違いないわね」
魔物使いの使役する魔獣は契約を受けた際に能力が向上され、主に知能が高まるという。人間の言葉を本合は理解できない魔物でも契約を交わせばある程度の知性が目覚めるらしく、牙竜の場合は人語も理解できる程の知能を得た事になる。
しかし、知能が高まれば必ずしも功を奏すというわけでもなく、ここで牙竜はある事実に気づく。それは自分が主人であるリディアには逆らえないが、彼女の傍にいるルノに関しては別であり、彼を攻撃する事自体は禁じられていない。その事実に気づいた牙竜は怒りの表情を浮かべ、無理やりに右前脚に絡みつく植物を引きちぎってルノの頭上から爪を振り下ろす。
「グガァッ……!?」
「うわっ!?氷盾!!」
だが、振り下ろしたはずの爪はルノの肉体に触れる事はなく、空中に誕生した氷の塊によって阻まれる。何事が起きたのかと牙竜は理解出来ずに前方に視線を向けると、そこには自分の顔面に向けて右腕を振りかざすルノの姿が存在した。
「こらっ!!」
「ウガァッ!?」
「えええっ!?」
牙竜の右頬に強烈な衝撃が走り、顔面部に取り付けられていた氷の拘束具が粉々に破壊される程の威力の平手打ちを浴びた牙竜の巨体が地面に転倒する。その様子を少し見たルノはまるで悪戯をした子供を起こるように右の掌を抑えながら叱りつける。
「全くもう……急に暴れたら危ないでしょ!!俺じゃなかったら死んでたよ!?」
「ガ、ガアッ……!?」
「口答えしない!!無暗に人を傷つけるような真似はしない事!!いいね?」
「……ガウッ」
「あの獰猛な牙竜が怖がってる……というか、平手打ちで竜種を倒すなんて出来るの……?」
契約を交わした主人ではないにも関わらずに圧倒的な力を見せつけたルノに対して牙竜は恐れを抱き、その場に跪く。その光景を半ば呆然としながらリディアは見つめ、これではどちらが主人なのか分からない状況だった。
「無駄だよ、その植物は簡単には千切れないよ」
光球の魔法によって急成長した植物の蔓に拘束された牙竜は必死に引きちぎろうとするが、植物の繊維が想像以上に強く、牙竜の力を以てしても簡単には引き裂けない。その間に氷車から降りたリディアが牙竜の様子を確認し、ルノに注意する。
「こいつは追いつめられると咆哮を放つわ。口元も念のために塞いでおいた方がいいわ」
「なるほど……こんな感じ?」
「アガァッ!?」
リディアの言葉を聞いてルノは掌を翳すと、顔面の部分に氷塊の魔法で形成した拘束ぐを作り出し、口元を固定化させる。胴体は植物の蔓に拘束された牙竜は二人を睨みつけるがどちらも全く物怖じせず、堂々と牙竜の元へ向かう。
「こいつに目を付けられたのがあんたの運の尽きね……でも、中々に生きのいい奴ね。可愛がってあげるわ」
「グガァッ……!?」
舌なめずりしながら自分を見つめてくるリディアに牙竜は戸惑うが、その後はマダラパイソンの時と同様に彼女は魔獣契約を牙竜に施す。過去に2体の牙竜を使役していた事はあるが、成体の牙竜と契約するのは初めてであり、リディア自身も興奮気味に契約を行う。
「さあ、私に従いなさい!!」
「ガ、アアッ……!?」
「何か苦しんでるようだけど……」
「契約に抵抗しているみたね。でも、無駄よ!!一度契約を施せばあんたは絶対に主人には逆らえない!!さあ、跪きなさい!!」
身体を震わせる牙竜に対してリディアが再度命令を下すと、今度は首筋に刻まれた契約紋が光り輝き、牙竜は彼女の前に土下座を行うように跪く。その様子を見て満足したのかリディアは身体の興奮が抑えきれないように身悶える。
「ああっ……これよ、この感覚がたまらないわ!!最近は忘れていたけど、やっぱり私はこういう自分の力に絶対の自信を持つ奴を従えさせた時の感覚がたまらないわ!!」
「グウウッ……!!」
「うわぁっ……」
ドSの本性を露わにしたようにリディアは反抗的な視線を向けながらも命令に逆らえずに跪く牙竜の頭を足の裏で踏みつけ、自分の優位性を示す。そんな彼女の行動を見てルノは引いてしまうが、これで当初の目的通りに牙竜を僕として従わせる事が出来た。
「まあ、無事に成功して良かったよ。じゃあ、この子の名前は牙竜だからキバ君でいいよね」
「え、ちょっと!?何を勝手に人の下僕に名前を付けてるのよ!!しかもキバ君って……ガーゴイルの時も思ったけど、あんたセンスが子供っぽいわね!!」
「そういわれても……名前がないと呼ぶときに不便だし、それに分かりやすい方が覚えやすいでしょ?」
「ッ……!!」
「ほら、こいつも気に入らないと言ってるわよ」
勝手に名前を名付けられたキバは不満そうな表情を浮かべ、リディアが代弁するように伝えると、ここでルノは有る事に気づく。
「あれ?俺達の言葉はこの牙竜も理解できるの?」
「前に話さなかったかしら?契約を施した魔獣は魔物使いの能力によってステータス補正を受けるの。今のこいつは私のお陰で人語がある程度まで理解出来る程に知能が発達するし、自然回復能力も高いのよ」
「そうだったのか。あ、もしかしてガー君やマダラパイソンも?」
「あいつらは元々人語を理解出来る程の知能は持っているわよ。でも、契約を施した事でより知能が高くなって成長能力が伸びたのは間違いないわね」
魔物使いの使役する魔獣は契約を受けた際に能力が向上され、主に知能が高まるという。人間の言葉を本合は理解できない魔物でも契約を交わせばある程度の知性が目覚めるらしく、牙竜の場合は人語も理解できる程の知能を得た事になる。
しかし、知能が高まれば必ずしも功を奏すというわけでもなく、ここで牙竜はある事実に気づく。それは自分が主人であるリディアには逆らえないが、彼女の傍にいるルノに関しては別であり、彼を攻撃する事自体は禁じられていない。その事実に気づいた牙竜は怒りの表情を浮かべ、無理やりに右前脚に絡みつく植物を引きちぎってルノの頭上から爪を振り下ろす。
「グガァッ……!?」
「うわっ!?氷盾!!」
だが、振り下ろしたはずの爪はルノの肉体に触れる事はなく、空中に誕生した氷の塊によって阻まれる。何事が起きたのかと牙竜は理解出来ずに前方に視線を向けると、そこには自分の顔面に向けて右腕を振りかざすルノの姿が存在した。
「こらっ!!」
「ウガァッ!?」
「えええっ!?」
牙竜の右頬に強烈な衝撃が走り、顔面部に取り付けられていた氷の拘束具が粉々に破壊される程の威力の平手打ちを浴びた牙竜の巨体が地面に転倒する。その様子を少し見たルノはまるで悪戯をした子供を起こるように右の掌を抑えながら叱りつける。
「全くもう……急に暴れたら危ないでしょ!!俺じゃなかったら死んでたよ!?」
「ガ、ガアッ……!?」
「口答えしない!!無暗に人を傷つけるような真似はしない事!!いいね?」
「……ガウッ」
「あの獰猛な牙竜が怖がってる……というか、平手打ちで竜種を倒すなんて出来るの……?」
契約を交わした主人ではないにも関わらずに圧倒的な力を見せつけたルノに対して牙竜は恐れを抱き、その場に跪く。その光景を半ば呆然としながらリディアは見つめ、これではどちらが主人なのか分からない状況だった。
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