最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ

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バルトロス帝国編

唐突な異世界召喚

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――今年、高校一年生になった霧崎レナは目の前の光景に唖然とした。先ほどまで自分は教室に居たはずだが、何時の間にか見知らぬ場所に移動していた。自分の他にも周りにはクラスメイトの男女が4人ほど存在し、彼等もレナと同様に驚愕した表情を浮かべている。全員が困惑、戸惑い、恐怖が入り混じった表情を浮かべており、周囲の光景に圧倒された。


「おおっ……まさか本当に成功するとは!!」
「信じられぬ……本当に異世界の住民を呼び寄せたというのか……」
「しかし……全員子供ではないか。本当に戦えるのか?」


レナと他の4人の周囲に存在するのは黒色のローブを身に着けた中年男性の集団であり、中には初老を迎えている男性も存在する。彼等は杖を手にしており、水晶玉のような宝石の装飾品が取り付けられており、彼等の中で最も年老いた老人が近づいてきた。彼の恰好は歴史の偉人のような豪華な服装であり、自分達に近づいてくる老人にレナ達は動揺する。


「だ、誰ですか貴方達は!?」
「さ、聡君……」
「な、何だよてめえ等っ!!」
「お、落ち着きなさいよ……」


近付いて来た老人に対してレナ以外の4人が警戒気味に声を上げるが、老人は人懐っこい笑みを浮かべながら彼等の前に跪く。


「よくぞ参られた勇者殿。どうか我等をお救い下され」
『え?」
「……勇者?」


ここで初めてレナは声を上げ、老人の告げた「勇者」という言葉に疑問を抱く。だが、このような状況シチュエーションには彼には覚えがあり、何故か子供の頃によく遊んでいたゲームを思い出す。その内容は小さい頃に現実世界の子供が全く別の世界に訪れ、世界征服を企む悪の組織と戦う話だった。今現在の状況は正に子供の頃に遊んでいたゲームの主人公たちと似通った状況であり、まさかとは思うが本当に自分が漫画やゲームのような世界に訪れたのかと考えてしまう。

しかし、彼等が現在立っている場所はどう考えても先ほどまで存在した学校の教室ではなく、第一にどうして自分がこのような状況に至ったのか記憶を掘り起こす。





――白鐘学園高等学校に通っている高校一年生の「霧崎レナ」は帰宅中に学校の教室に忘れ物をしてしまい、自分の教室に戻った。彼が自分の教室に戻った時には既に4人の生徒しか残っておらず、クラスの中でも人気がある男女の4人組だった。彼等4人は全員が幼馴染であり、一年生にして野球部のレギュラーに選ばれた「佐藤 聡」クラスの女子の中でも一番人気が高い「花山 陽菜」委員長としてクラスを纏める「鈴木 麻帆」そして不良生徒としてある意味では一番悪目立ちしている「加藤 雷太」この4人とは普段から交流はなく、彼等もレナが教室に入って来ても特に反応は示さなかった。




レナは自分の机から置き忘れた教科書を取り出し、教室の外に出ようとした時に異変が生じた。それは出入口の近くで集まっていた4人の足元に「魔法陣」のような紋様が浮かび上がり、教室が閃光に包まれたのだ。偶然にも扉から外を出ようとしたレナも教室内で発生した閃光に巻き込まれてしまい、気付いた時には見知らぬ場所に移動していた。


「国王様、どうやら勇者様は混乱をしているようです。ここは我等が説明いたしましょう」
「おお、そうか……頼むぞ大臣」
「大臣?」


呆然としているレナ達の前に初老の男性が近寄り、国王と呼ばれた老人が頷く。レナ達は何が起きているのか理解できないが、代わりに大臣と呼ばれた男が彼等に近付く。


「まずは自己紹介から始めましょうか。私の名前はデキンと申します。そしてこちらの御方がバルトロス帝国の国王様であるバルトロス3世様でございます」
「バルトロス……?」
「帝国って……何言ってんだよ」
「そんな国名聞いたこともない……」
「当然ですな。なにしろ、ここは勇者様が住んでいた世界ではないのですから?」
「はあ?何言ってんだおっさん……頭おかしいのか?」
「大臣になんて言葉を!!」
「ば、馬鹿っ!!」


デキンと名乗る男性の言葉に加藤が馬鹿にしたような態度を取るが、すぐに他の人間が怒りを示し、慌てて鈴木が彼を取り押さえる。一方でレナはここが自分達の知っている世界ではないという言葉が引っ掛かり、こちらから質問を行う。


「すいません……ここは何処なんですか?まさか、本当に異世界なんじゃ……」
「おおっ……そちらの勇者様は理解力が早いですな。先ほど告げた通り、ここは勇者様の住んでいる世界ではありませぬ。我々は勇者様の世界を「テラ」と呼んでいますが、我々の世界は「アルテマ」と呼ばれています」
「テラ……アルテマ……?」
「そ、そんな事よりも僕達を呼び出したと言っていましたが、どうして僕達をこの場所に呼び寄せたんですか?」


まだ混乱している佐藤が動揺しながら尋ねると、デキンは彼の質問に大袈裟に頷き、説明を行う。


「勇者様の疑問は最もですね。何故、自分達が呼び出されたのか……簡潔に言えば我々は貴方達にこの世界を救って欲しいのです。今現在、この帝国は魔王軍と呼ばれる存在に窮地に晒されているのです」
「ま、魔王だと……馬鹿じゃねえのかこいつ……」
「加藤!!お前は静かにするんだ!!」


この状況を理解していない加藤がデキンの言葉に小馬鹿にしたような態度を取り続けるが、周囲の人間達の視線が強まり、流石に危機感を抱いた佐藤が彼を止める。その間にレナはデキンの言葉の意味を考え、慎重に質問を行う。


「魔王軍……というのは何なんですか?」
「魔王軍とは人類に敵対し、自分達の欲望に忠実な悪の事ですな。奴等は帝国の領地内で度々暴れており、民衆に大きな被害を与えているのです」
「それでどうして俺達を……そのテラの世界から呼び寄せたんですか?」
「勿論、勇者様方に魔王軍の討伐を願う為です。奴等は非常に手強く、我々だけの力ではどうしようもありません……ですが!!この帝国には古から伝わる伝説の魔法が存在するのです!!それこそが異界から勇者という強大な力を秘めた人間を呼びよせる召喚魔法陣!!貴方達は選ばれた人間なのです!!」
「何言ってるか全然分からねえ……」
「私も……」


演技臭いデキンの言葉に対し、流石に今度は加藤の言葉に鈴木も賛同する。他の2人も戸惑った表情を浮かべ、レナ自身もデキンの言葉を完全に理解した訳ではないが、問題なのは元の世界に戻れるのかが重要だった。状況的に考えてこの場所がレナ達が存在した学校ではないのは確かであり、周囲の人物の恰好や建物の構造も明らかに中世の時代完を想像させる。正に「ファンタジー」を取り扱った漫画やゲームの世界観としか表現しようがない。


「あの……俺達は元の世界に戻れないんですか?」
「ご安心くだされ。魔王軍を討伐することが出来れば皆さんを返してあげましょう」
「返してあげるって……」
「さあ、つまらない話はここまでにしましょう。これから皆様のステータスを確認するための儀式を施します。こちらへどうぞ」
「ちょ、ちょっと待ってください!!一体何を言って……」
「お前達、早く勇者様を儀式の間へ案内しろ!!」
『はっ!!』


こちらが質問を行う前にデキンが他の男達に指示を送り、無数のローブ姿の男達に囲まれたレナ達は圧倒され、状況的に考えても逆らえる事は出来ず、そのまま別の場所に移動する。不穏な雰囲気しか感じられないが、今の彼等には抵抗する事も逃げる事も出来なかった――
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