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バルトロス帝国編
初勝利
「アアアアアアッ……!!ゴロズゥッ……オマエダゲハァッ……!!」
「まだっ……!?」
「レノ君!!止めを刺せ!!そいつの弱点は銀製の武器と聖属性の魔法だ!!」
顔面全体が焼け爛れた状態のヴァンパイアが起き上がり、ゾンビのようにレナに近付こうとしたが、その動作は明らかに鈍っていた。階段の上のホノカがレナに声を掛けるが、銀製の武器と言われても生憎とレナは持ち合わせておらず、もう一度店内を見渡すと壁際に飾られている「腕鉄甲」に気付き、すぐにレナは鑑定のスキルを発動させる。
『白銀拳――希少な白銀を加工して生み出された武器』
視界に映し出された画面を確認した瞬間、彼は即座に右手で掴み取り、腕に身に着ける。ヴァンパイアは這いずりながら一階にまで降りるが、その行動が彼女の命取りになる。
「ニンゲェエエエンッ……!!」
「聖属性」
最後の力を振り絞ったのかヴァンパイアは起き上がり、右腕の爪を振り翳そうとするが、レナの視界では再び彼女の動作が遅行化のように遅くなり、彼は身に着けた腕鉄甲に聖属性の付与魔法を発動させ、相手の顔面に拳を叩き付けた。
「うああっ!!」
「がはぁっ……!?」
相手の頬に拳をめり込ませる感触がレナの腕に広がり、ヴァンパイアは口元から血飛沫を吐き出し、次の瞬間に腕鉄甲に纏っていた聖属性の発光が彼女の全身に移り、身体中から赤色の煙を噴き出す。やがてヴァンパイアはミイラの様に全身の水分が蒸発したかのように変化を果たし、やがて地面に倒れ込んだ瞬間、ヴァンパイアの身体が粉々に砕け散った。
「はあっ……はあっ……!?」
「だ、大丈夫かい?」
レナは自分の足元に転がったヴァンパイアの死体というよりは「残骸」を確認し、戸惑いの表情を浮かべる。自分の身体に一体何が起きたのか理解できなかったが、少なくとも自分を殺そうとした相手を倒した事は間違いない。もしかしたら自分は殺人を犯したのではないかと思ったが、どう考えても先ほどの相手は人間ではなく「化物」としか思えなかった。実際にレナがヴァンパイアを打ち倒す現場を見ていたホノカも特に彼がヴァンパイアを倒した事に対して不安を抱いた様子はなく、むしろ自分を助けてくれたレナに抱き付いて感謝の言葉を告げる。
「ありがとう!!君のお蔭で助かったよ!!」
「あ、いえ……その、大丈夫でしたか?」
「ああ……まさか急にヴァンパイアが現れるなんて思わなかったよ。それにしても随分と派手に荒らしてくれたな……」
ホノカは店の惨状に溜息を吐きだし、彼女はヴァンパイアの残骸に視線を向け、レナに笑みを浮かべる。
「それにしてもまさかヴァンパイアを倒すなんて……君はもしかして本当は腕利きの冒険者だったのかな?」
「いや……偶然ですよ」
「とても偶然で倒せるような相手じゃないと思うけど……まあいいか。それより、早く警備兵にヴァンパイアが帝都に入り込んでいた事を報告しないと……そうだ。もしもこのヴァンパイアが賞金首だったらレナ君が報酬を……」
「あ、あのっ!!出来れば警備兵には俺の事は黙ってくれませんか!?その……帝国の人間とは会いたくないというか……」
彼女の言葉を聞いたレナは慌てて首を振り、出来る事なら帝国の人間とは関わりたくはなかった。自分の事を追い出したまま放置する彼等にレナは嫌悪感を抱いており、それにもしもヴァンパイアを倒した事を知られたら、デキン辺りがレナが実はヴァンパイアを倒せるだけの実力を持っており、それを自分達に隠していたのではないかと勘違いされる事を恐れた。
「それは別に構わないが……本当にいいのかい?もしかしたら王城で表彰されるかも知れないんだよ?」
「はい……ちょっと帝国とは関わりを持ちたくないので……」
「そうか……分かった。なら僕が上手く誤魔化しておくよ」
――その後、レナが立ち去った後にホノカは帝国の警備兵を呼び寄せ、ヴァンパイアが自分の店に襲撃してきた事、そして通りすがりの「冒険者」に助けて貰った事を報告する。どうして彼女がレナの事を説明しなかったのかと言うと、レナが身分証を所持していないという事から彼に何か複雑な事情があり、帝国に密入国した人間だと予測していた。
帝国では密入国者はどんな理由であろうと処刑される法律が存在し、自分の命の恩人を帝国に売る事など出来るはずがなく、彼女はあくまでも素性の知らぬ冒険者に助けられたと報告する。ヴァンパイアは魔人族の中でも特殊能力を所持しているため、一流の冒険者だろうと事前に準備を整えていなければ対処できない存在であり、警備兵がホノカの報告を信じるのに時間が掛かったが、実際にヴァンパイアの死体(残骸)が存在するので彼女の話を信じるしかなかった。
今回の件で外部からの侵入には厳重な警備が敷かれているはずの帝都に「ヴァンパイア」という特殊な力を持つ魔人族が現れた事に対し、帝都の警備を任されているはずの防衛大臣のデキンは当然だが今回の騒動の責任を追及される。
彼としては「魅了の眼」と呼ばれる特殊な能力を持つ魔人族の侵入を完全に防ぐ事など不可能だと反論したかったが、そんな弱音を吐いてしまえば今まで築き上げた威厳が損なわれてしまう。現在の帝国が成り立っているのはデキンという存在が大きく、彼は自分が他人に弱みを見せる事は国家の弱体化を晒してしまうと思い込んでいた。
今回の騒動を詳しく調べるためにデキンは報告に遭ったヴァンパイアを討伐したという冒険者の捜索を開始する。この話はホノカがレナを庇う為に吐いた虚偽の報告なのだが、仮に本当にヴァンパイアを討伐できる程の実力者が居たとしたらなんとしても帝国に引き抜きたいと彼は考え、捜索を続けさせる。
異世界から召喚した「勇者4人」が姿を消してから既に数日が経過し、訓練に連れ出そうとした兵士の話によると、彼等の目の前で勇者達が唐突に消えてしまったとしか証言しなかった。あまりにもふざけた話にデキンは激怒したが、実際に勇者達が王城から姿を消したのは間違いなく、後日に勇者らしき人物が帝都を取り囲む外壁から抜け出したという報告が届いた。
この世界に召喚されたばかりの勇者が王城からどうやって抜け出したのかは不明だったが、デキンは帝国の伝承に残っている情報から推測を行う。それは異世界から召喚された人間には「異能」と呼ばれる特別な力が芽生えるらしく、過去に召喚された勇者の中にもこちらの世界には存在しない能力を扱える人間も存在した。恐らく、召喚された4人の勇者が姿を消したのは「異能」と呼ばれる能力を利用して城から抜け出し、この帝都を脱出したとデキンは考えていた。
当然だがデキンはこの件を報告できるはずがなく、国王には勇者4人は別の地域で訓練を受けさせ、魔王軍との戦闘に備えさせていると報告した。だが、デキンもこのような嘘が何時まで気付かれないとは考えておらず、勇者の捜索は行っているが未だに進展はない。
そんな状況で帝都にヴァンパイアを倒せる程の実力者が存在するという話に喰いつき、彼は勇者の代わりに魔王軍との対抗戦力を得る為に存在もしない冒険者の捜索を行わせた。どれだけ調べ尽くそうと見つかる事はない相手であり、しかも本当にヴァンパイアを討伐した人間というのが自分が「役立たず」と判断した「霧崎レナ」である事を知る由もない――
「まだっ……!?」
「レノ君!!止めを刺せ!!そいつの弱点は銀製の武器と聖属性の魔法だ!!」
顔面全体が焼け爛れた状態のヴァンパイアが起き上がり、ゾンビのようにレナに近付こうとしたが、その動作は明らかに鈍っていた。階段の上のホノカがレナに声を掛けるが、銀製の武器と言われても生憎とレナは持ち合わせておらず、もう一度店内を見渡すと壁際に飾られている「腕鉄甲」に気付き、すぐにレナは鑑定のスキルを発動させる。
『白銀拳――希少な白銀を加工して生み出された武器』
視界に映し出された画面を確認した瞬間、彼は即座に右手で掴み取り、腕に身に着ける。ヴァンパイアは這いずりながら一階にまで降りるが、その行動が彼女の命取りになる。
「ニンゲェエエエンッ……!!」
「聖属性」
最後の力を振り絞ったのかヴァンパイアは起き上がり、右腕の爪を振り翳そうとするが、レナの視界では再び彼女の動作が遅行化のように遅くなり、彼は身に着けた腕鉄甲に聖属性の付与魔法を発動させ、相手の顔面に拳を叩き付けた。
「うああっ!!」
「がはぁっ……!?」
相手の頬に拳をめり込ませる感触がレナの腕に広がり、ヴァンパイアは口元から血飛沫を吐き出し、次の瞬間に腕鉄甲に纏っていた聖属性の発光が彼女の全身に移り、身体中から赤色の煙を噴き出す。やがてヴァンパイアはミイラの様に全身の水分が蒸発したかのように変化を果たし、やがて地面に倒れ込んだ瞬間、ヴァンパイアの身体が粉々に砕け散った。
「はあっ……はあっ……!?」
「だ、大丈夫かい?」
レナは自分の足元に転がったヴァンパイアの死体というよりは「残骸」を確認し、戸惑いの表情を浮かべる。自分の身体に一体何が起きたのか理解できなかったが、少なくとも自分を殺そうとした相手を倒した事は間違いない。もしかしたら自分は殺人を犯したのではないかと思ったが、どう考えても先ほどの相手は人間ではなく「化物」としか思えなかった。実際にレナがヴァンパイアを打ち倒す現場を見ていたホノカも特に彼がヴァンパイアを倒した事に対して不安を抱いた様子はなく、むしろ自分を助けてくれたレナに抱き付いて感謝の言葉を告げる。
「ありがとう!!君のお蔭で助かったよ!!」
「あ、いえ……その、大丈夫でしたか?」
「ああ……まさか急にヴァンパイアが現れるなんて思わなかったよ。それにしても随分と派手に荒らしてくれたな……」
ホノカは店の惨状に溜息を吐きだし、彼女はヴァンパイアの残骸に視線を向け、レナに笑みを浮かべる。
「それにしてもまさかヴァンパイアを倒すなんて……君はもしかして本当は腕利きの冒険者だったのかな?」
「いや……偶然ですよ」
「とても偶然で倒せるような相手じゃないと思うけど……まあいいか。それより、早く警備兵にヴァンパイアが帝都に入り込んでいた事を報告しないと……そうだ。もしもこのヴァンパイアが賞金首だったらレナ君が報酬を……」
「あ、あのっ!!出来れば警備兵には俺の事は黙ってくれませんか!?その……帝国の人間とは会いたくないというか……」
彼女の言葉を聞いたレナは慌てて首を振り、出来る事なら帝国の人間とは関わりたくはなかった。自分の事を追い出したまま放置する彼等にレナは嫌悪感を抱いており、それにもしもヴァンパイアを倒した事を知られたら、デキン辺りがレナが実はヴァンパイアを倒せるだけの実力を持っており、それを自分達に隠していたのではないかと勘違いされる事を恐れた。
「それは別に構わないが……本当にいいのかい?もしかしたら王城で表彰されるかも知れないんだよ?」
「はい……ちょっと帝国とは関わりを持ちたくないので……」
「そうか……分かった。なら僕が上手く誤魔化しておくよ」
――その後、レナが立ち去った後にホノカは帝国の警備兵を呼び寄せ、ヴァンパイアが自分の店に襲撃してきた事、そして通りすがりの「冒険者」に助けて貰った事を報告する。どうして彼女がレナの事を説明しなかったのかと言うと、レナが身分証を所持していないという事から彼に何か複雑な事情があり、帝国に密入国した人間だと予測していた。
帝国では密入国者はどんな理由であろうと処刑される法律が存在し、自分の命の恩人を帝国に売る事など出来るはずがなく、彼女はあくまでも素性の知らぬ冒険者に助けられたと報告する。ヴァンパイアは魔人族の中でも特殊能力を所持しているため、一流の冒険者だろうと事前に準備を整えていなければ対処できない存在であり、警備兵がホノカの報告を信じるのに時間が掛かったが、実際にヴァンパイアの死体(残骸)が存在するので彼女の話を信じるしかなかった。
今回の件で外部からの侵入には厳重な警備が敷かれているはずの帝都に「ヴァンパイア」という特殊な力を持つ魔人族が現れた事に対し、帝都の警備を任されているはずの防衛大臣のデキンは当然だが今回の騒動の責任を追及される。
彼としては「魅了の眼」と呼ばれる特殊な能力を持つ魔人族の侵入を完全に防ぐ事など不可能だと反論したかったが、そんな弱音を吐いてしまえば今まで築き上げた威厳が損なわれてしまう。現在の帝国が成り立っているのはデキンという存在が大きく、彼は自分が他人に弱みを見せる事は国家の弱体化を晒してしまうと思い込んでいた。
今回の騒動を詳しく調べるためにデキンは報告に遭ったヴァンパイアを討伐したという冒険者の捜索を開始する。この話はホノカがレナを庇う為に吐いた虚偽の報告なのだが、仮に本当にヴァンパイアを討伐できる程の実力者が居たとしたらなんとしても帝国に引き抜きたいと彼は考え、捜索を続けさせる。
異世界から召喚した「勇者4人」が姿を消してから既に数日が経過し、訓練に連れ出そうとした兵士の話によると、彼等の目の前で勇者達が唐突に消えてしまったとしか証言しなかった。あまりにもふざけた話にデキンは激怒したが、実際に勇者達が王城から姿を消したのは間違いなく、後日に勇者らしき人物が帝都を取り囲む外壁から抜け出したという報告が届いた。
この世界に召喚されたばかりの勇者が王城からどうやって抜け出したのかは不明だったが、デキンは帝国の伝承に残っている情報から推測を行う。それは異世界から召喚された人間には「異能」と呼ばれる特別な力が芽生えるらしく、過去に召喚された勇者の中にもこちらの世界には存在しない能力を扱える人間も存在した。恐らく、召喚された4人の勇者が姿を消したのは「異能」と呼ばれる能力を利用して城から抜け出し、この帝都を脱出したとデキンは考えていた。
当然だがデキンはこの件を報告できるはずがなく、国王には勇者4人は別の地域で訓練を受けさせ、魔王軍との戦闘に備えさせていると報告した。だが、デキンもこのような嘘が何時まで気付かれないとは考えておらず、勇者の捜索は行っているが未だに進展はない。
そんな状況で帝都にヴァンパイアを倒せる程の実力者が存在するという話に喰いつき、彼は勇者の代わりに魔王軍との対抗戦力を得る為に存在もしない冒険者の捜索を行わせた。どれだけ調べ尽くそうと見つかる事はない相手であり、しかも本当にヴァンパイアを討伐した人間というのが自分が「役立たず」と判断した「霧崎レナ」である事を知る由もない――
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