最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ

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スラム編

聖水

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「あのレノさん。一つ聞きたい事があるんですけど……」
「なに?またお小遣い欲しいの?大切に使いなさいって言ったでしょ」
「いや、何時から私のお母さんになったんですか。違いますよ……この机の上に置いてある壺の中身はなんですか?」
「ああ、これか……」


アイリィはレナの机の中心に設置されている壺を指差し、数日前までは存在しなかった物だが中身が存在するのか蓋を設置して中身は完全に密封されていた。レナは2人の前で蓋を開けて中身を見せつけると、壺の内部には白色に光り輝く液体が満たされていた。初めて見る代物にアイリィもコトミンも首を傾げ、壺の中をさらに覗き込むと底には白色に輝く物体が幾つか沈んでいた。


「これは……」
「……魔石?」
「聖属性の魔力を施した吸魔石だよ。底の方に何個か沈めてる」
「え、どういう事ですか?何で吸魔石を……?」
「実はね……」



――数日前、レナは昨晩遅くまで吸魔石に聖属性の魔力を注ぎ込んだ状態で眠り込んでしまい、寝ぼけて顔を洗う際に吸魔石を持ち込んだまま洗面台に用意した水桶の前に移動する。その時に間違って顔荒い様の桶の中に吸魔石を落としてしまい、その直後にどういう訳なのか桶の中の水が光り輝き、鑑定のスキルを発動させると驚くべき事に「回復薬」のような回復効果を生みだす液体に変化していた。



鑑定を発動して表示された画面には「聖水」と呼ばれる怪我の治療と魔力の回復を同時に行える回復液の名称が表示され、レナは試しに壺の中に井戸水を含めた状態で聖属性の吸魔石を数日間沈めた結果、より効果の高まった聖水が誕生する。レナは壺の中の聖水をコップで汲み上げ、アイリィとコトミンに手渡す。彼女達は不思議そうに口に含んだ瞬間、両者は目を見開く。


「こ、これは……」
「……美味すぎる」
「それは良かった」


アイリィとコトミンは聖水を得た事で大幅に魔力を回復したようであり、特にアイリィは動揺を隠せずに壺の中を覗き込み、吸魔石に視線を向ける。


「……この吸魔石はもしかして定期的に交換してるんですか?」
「そうだよ。1日事に交換してる」
「本当に驚きましたよ……まさか偶然とはいえ、治療院の秘薬の聖水をこんな方法で生み出すなんて……」
「秘薬……?」
「まさか知らないで作り出したんですか?この聖水は治療院だけが生み出せる回復薬よりも希少な薬なんですよ?」


彼女は信じられない表情を浮かべるが、レナとしては偶然に見つけ出した吸魔石の特性を利用して生み出した代物であり、単純に怪我の治療と魔力の回復を行えるのならば便利そうだと考えて造り出しただけだが、アイリィの話によると途轍もない効能を持つ代物だと説明を受ける。


「レナさん!!この聖水の生成方法は絶対に誰にも話しちゃ駄目ですよ!?私達だけの秘密です!!」
「別にいいけど……今の段階だと壺1つぐらいしか作れないよ」
「問題ないです。これは流石に今の段階で売却するわけにはいきませんし……下手をしたら生産方法を聞き出すために暗殺者(正確には職業の人間)を雇う輩も必ず出てきますから……」
「それでこれはどうするの?もっと吸魔石を浸けていれば効果は高まると思うけど……」
「本当ですか?これ以上に高まるなんて……今の段階でも中級回復薬と魔力回復薬と同等の効果があるのに……」
「他の属性の魔力を込めた吸魔石も試してみたけど、全部失敗しちゃったけどね」


試しに聖属性以外の吸魔石を水の中に沈めた場合、火属性は沸騰してお湯と化してしまい、風属性は常に水面が揺らぐだけであり、水属性は水が凍り付いてしまい、雷属性の場合は電気を纏い、土属性は壺の重量が重くなり、闇属性は黒色に濁るだけだった。成功と言えるのは聖属性の吸魔石だけであり、偶然とはいえ「聖水」と呼ばれる回復薬の生成に成功した。


「これを持って入れば2人も俺が傍にいない時でも回復出来るよね」
「そうですね。その点は本当に有難いですけど……」
「……私はレナに癒して貰う方が好き」
「そう言われると少し照れるけど、念のために2人も持っていてよ」


レナは回復薬用に用意した硝子瓶に聖水を満たし、2人に手渡す。これでいざという時は彼が傍に居ない時も身体を回復させる事が出来るが、現在では聖水は生み出せる量が限られており、もっと量を増やすためにはレナ自身の魔力容量も上昇させ、吸魔石の予備も用意する必要がある。


「それにしてもまさか吸魔石にこんな使い方があるとは……盲点でしたね」
「まあ、俺みたいに戦闘以外で利用する人なんていないかも知れないけど」
「レナさんの発想力には驚かされますよ」
「……美味い、もう一杯」
「あ、こら!!勝手に飲んじゃ駄目でしょ!!めっ!!」
「あうっ……」
「まさか聖水がこんな方法で作り出せるなんて……という事は治療院にも付与魔法の使い手が……いや、それでも……」


コトミンが聖水を気に入ったのか壺の中のコップを入れて飲み干し、レナが母親のように叱りつける。彼女は叱られ事で猫耳のような癖っ毛を垂らし、一方でアイリィはぶつぶつと聖水入りの硝子瓶を確認しながら何事か呟いていた。
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