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スラム編
最後の賭け
「あいつは……まだ見失ってるのか」
『何処~?』
レナは足首の負傷を付与魔法で治療を施し、壊れた窓から外の様子を覗き込み、カトレアが瞼を擦りながら屋根の上を歩いている姿を確認する。意外と先ほどの目晦ましの効果が続いており、今の内ならば逃げる事も出来るかも知れないが、ここで退いてもカトレアは嗅覚を頼りにレナを追跡するだろう。
彼が所持している鞄の中には吸魔石と回復薬の類しか存在せず、攻撃手段に利用できるのは各属性の魔力を封じた吸魔石程度であり、ヴァンパイア戦の時の様に魔石を暴発させる方法で倒せる保証はない。それでも戦わなければ彼が生き残る保証はなく、対抗する手段を必死に考える。時間に余裕はないが、それでも考えて行動しなければ生き残れない。
「……これしかない」
レナは自分の覚えたスキルを全て確認し、利用できるスキルを全て使用してカトレアに攻撃を仕掛ける事を決めた。もしも彼の考えた方法が通じなければレナに勝ち目はなく、最後の賭けに挑む覚悟を決める。右拳の白銀拳と肉体に聖属性の付与魔法を発動させ、レナは左手に闇属性の魔力を封じ込めた吸魔石を握りしめる。体力的にも肉体的にも次の攻撃が最後になるのは確実であり、窓から飛び出そうとした瞬間、屋根の上を移動していたカトレアの姿が消えている事に気付く。
「見つけたぁっ」
「……くそっ」
彼女は既にレナの隠れている建物の前に移動しており、蝙蝠の翼を羽ばたかせて壊れた窓から覗き込む。覚悟を決めたとはいえ、まさかこれほど早く相手に見つかるとは予想外であり、レナの足が緊張で震える。それでも状況的に考えれば絶好の機会であり、レナは敢えて後方に下がる。
「お邪魔しま~す」
「いらっしゃい……お帰りはこちらです」
「え~」
カトレアは余裕なのか警戒した様子もなく窓から入り込み、右腕を構えると爪先が刃物のように鋭利に研ぎ澄まされ、マニキュアのような赤色の爪を見せつける。すぐにレナは彼女の爪に付着しているのはマニキュアではなく、人間の血液だと気付いた。
「血の鉤爪……痛みなく殺してあげるね」
「……本当に痛くしないでね」
「あはは~君、本当に面白いね~」
先ほどまでの笑顔を保ち続けていたカトレアの顔に変化が生じ、彼女は無表情にレナを見つめる。雰囲気が明らかに先ほどと変わり、カトレアが本気で自分を殺す気になった事に気付きながらもレナは怯えない。次の彼女の行動によって運命が決まり、彼は吸魔石を構える。
「魔石……?まあ、別にいいや」
「…………」
レナが魔石を握りしめている事に気付いたカトレアが眉を顰めるが、すぐに気にした風もなく自分の爪を舐めとり、室内に緊張感が漂う中、レナは右腕を構えて戦技を発動する準備を行う。
「――行くよ」
遂にカトレアは動き出し、その速度はレナが遭遇した敵の中でも恐らくは最高速度であり、普通ならば幾ら聖属性の付与魔法で身体能力を強化させていようとレベルが20にも満たない現在のレナのステータスでは反応できない速度で襲い掛かる。
――だが、レナの視界には彼女の動作が徐々に「遅行化」し、ヴァンパイアとの戦闘のようにカトレアの動作が完全に捉えられる。この能力の正体が彼の異能の「思考加速」である事は本人も薄々気付いており、この能力は危機的状況に最も発動しやすい能力であり、接近してくるカトレアの動作を見極める。
彼の思考加速の能力は肉体面にはまでは影響は及ばず、幾ら相手の動向が遅行化したとしても、逆に言えば自分自身の肉体も遅行化している状態なのだ。それでもレナは左手を前に突き出し、握りしめている闇属性の吸魔石を構え、カトレアの爪の先端が吸魔石を衝突させる事は出来た。
次の瞬間、吸魔石に込められていた闇属性の魔力が放出され、黒煙が室内を覆いこむ。その光景にカトレアは目を見開き、一方でレナは「暗視」のスキルで黒煙に覆われた室内でも正確にカトレアの位置を把握し、右拳を振り被る。
「はぁあああっ!!」
「っ!!」
黒煙の中でレナは敢えて声を上げて右拳を振り被り、カトレアは笑みを浮かべて右腕を構え、声がした方向に爪を振り抜く。だが、その行動もレナは予測済みであり、予想通りに視界が塞がれたところでカトレアは止まらない。それでも攻撃を誘う為に声を上げたのはもう一度先ほどの感覚を呼び覚ます事が狙いであり、彼女の動作が遅行化する。
「ばぁいばぁ……!!」
黒煙の中でカトレアは勝利を確信したように口を開くが、レナは迫りくる彼女の右腕に対して戦技の「回避」を発動させ、更に同時に「反撃」を発動する。カトレアの爪を回避するのと同時に右腕の白銀拳を振り翳し、姿が完全に見えない以上は暗殺者の「不意打ち」のスキルも発動し、更に戦技の「弾撃」を叩き込む。
「らあぁああああああっ……!!」
「っ……!?」
複数のスキルを思考加速の能力が落ちる前に発動させ、全身の筋肉を使用して白銀拳を振り抜く。聖属性の付与魔法で身体能力を限界まで上昇させ、更に白銀拳の腕鉄甲にも聖属性を付与させた状態で打ち込む。それは最早「打つ」ではなく「撃つ」であり、拳銃の弾丸のように捻り込みながら金属の拳がカトレアの腹部に叩き込まれ、そのまま破壊された窓に彼女の身体が吹き飛んだ。
『何処~?』
レナは足首の負傷を付与魔法で治療を施し、壊れた窓から外の様子を覗き込み、カトレアが瞼を擦りながら屋根の上を歩いている姿を確認する。意外と先ほどの目晦ましの効果が続いており、今の内ならば逃げる事も出来るかも知れないが、ここで退いてもカトレアは嗅覚を頼りにレナを追跡するだろう。
彼が所持している鞄の中には吸魔石と回復薬の類しか存在せず、攻撃手段に利用できるのは各属性の魔力を封じた吸魔石程度であり、ヴァンパイア戦の時の様に魔石を暴発させる方法で倒せる保証はない。それでも戦わなければ彼が生き残る保証はなく、対抗する手段を必死に考える。時間に余裕はないが、それでも考えて行動しなければ生き残れない。
「……これしかない」
レナは自分の覚えたスキルを全て確認し、利用できるスキルを全て使用してカトレアに攻撃を仕掛ける事を決めた。もしも彼の考えた方法が通じなければレナに勝ち目はなく、最後の賭けに挑む覚悟を決める。右拳の白銀拳と肉体に聖属性の付与魔法を発動させ、レナは左手に闇属性の魔力を封じ込めた吸魔石を握りしめる。体力的にも肉体的にも次の攻撃が最後になるのは確実であり、窓から飛び出そうとした瞬間、屋根の上を移動していたカトレアの姿が消えている事に気付く。
「見つけたぁっ」
「……くそっ」
彼女は既にレナの隠れている建物の前に移動しており、蝙蝠の翼を羽ばたかせて壊れた窓から覗き込む。覚悟を決めたとはいえ、まさかこれほど早く相手に見つかるとは予想外であり、レナの足が緊張で震える。それでも状況的に考えれば絶好の機会であり、レナは敢えて後方に下がる。
「お邪魔しま~す」
「いらっしゃい……お帰りはこちらです」
「え~」
カトレアは余裕なのか警戒した様子もなく窓から入り込み、右腕を構えると爪先が刃物のように鋭利に研ぎ澄まされ、マニキュアのような赤色の爪を見せつける。すぐにレナは彼女の爪に付着しているのはマニキュアではなく、人間の血液だと気付いた。
「血の鉤爪……痛みなく殺してあげるね」
「……本当に痛くしないでね」
「あはは~君、本当に面白いね~」
先ほどまでの笑顔を保ち続けていたカトレアの顔に変化が生じ、彼女は無表情にレナを見つめる。雰囲気が明らかに先ほどと変わり、カトレアが本気で自分を殺す気になった事に気付きながらもレナは怯えない。次の彼女の行動によって運命が決まり、彼は吸魔石を構える。
「魔石……?まあ、別にいいや」
「…………」
レナが魔石を握りしめている事に気付いたカトレアが眉を顰めるが、すぐに気にした風もなく自分の爪を舐めとり、室内に緊張感が漂う中、レナは右腕を構えて戦技を発動する準備を行う。
「――行くよ」
遂にカトレアは動き出し、その速度はレナが遭遇した敵の中でも恐らくは最高速度であり、普通ならば幾ら聖属性の付与魔法で身体能力を強化させていようとレベルが20にも満たない現在のレナのステータスでは反応できない速度で襲い掛かる。
――だが、レナの視界には彼女の動作が徐々に「遅行化」し、ヴァンパイアとの戦闘のようにカトレアの動作が完全に捉えられる。この能力の正体が彼の異能の「思考加速」である事は本人も薄々気付いており、この能力は危機的状況に最も発動しやすい能力であり、接近してくるカトレアの動作を見極める。
彼の思考加速の能力は肉体面にはまでは影響は及ばず、幾ら相手の動向が遅行化したとしても、逆に言えば自分自身の肉体も遅行化している状態なのだ。それでもレナは左手を前に突き出し、握りしめている闇属性の吸魔石を構え、カトレアの爪の先端が吸魔石を衝突させる事は出来た。
次の瞬間、吸魔石に込められていた闇属性の魔力が放出され、黒煙が室内を覆いこむ。その光景にカトレアは目を見開き、一方でレナは「暗視」のスキルで黒煙に覆われた室内でも正確にカトレアの位置を把握し、右拳を振り被る。
「はぁあああっ!!」
「っ!!」
黒煙の中でレナは敢えて声を上げて右拳を振り被り、カトレアは笑みを浮かべて右腕を構え、声がした方向に爪を振り抜く。だが、その行動もレナは予測済みであり、予想通りに視界が塞がれたところでカトレアは止まらない。それでも攻撃を誘う為に声を上げたのはもう一度先ほどの感覚を呼び覚ます事が狙いであり、彼女の動作が遅行化する。
「ばぁいばぁ……!!」
黒煙の中でカトレアは勝利を確信したように口を開くが、レナは迫りくる彼女の右腕に対して戦技の「回避」を発動させ、更に同時に「反撃」を発動する。カトレアの爪を回避するのと同時に右腕の白銀拳を振り翳し、姿が完全に見えない以上は暗殺者の「不意打ち」のスキルも発動し、更に戦技の「弾撃」を叩き込む。
「らあぁああああああっ……!!」
「っ……!?」
複数のスキルを思考加速の能力が落ちる前に発動させ、全身の筋肉を使用して白銀拳を振り抜く。聖属性の付与魔法で身体能力を限界まで上昇させ、更に白銀拳の腕鉄甲にも聖属性を付与させた状態で打ち込む。それは最早「打つ」ではなく「撃つ」であり、拳銃の弾丸のように捻り込みながら金属の拳がカトレアの腹部に叩き込まれ、そのまま破壊された窓に彼女の身体が吹き飛んだ。
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