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魔法学園編

第49話 無詠唱

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(うっ、この状態だと魔力を操るのが難しいな……)


吸魔石に触れた状態でマオは魔法を発動しようとすると、小杖に送り込む魔力を吸魔石に吸収されそうになる。どうにか魔力を奪われないようにしながらマオは魔法を発動させて氷塊を作り出す。


「アイス」


小杖の先端から氷塊が誕生すると、どうにか発動に成功したマオは額の汗を拭う。その後は作り出した氷塊を確認し、とりあえずは適当な形に変形させた。


「四角、丸、三角……単純な形にならすぐに変形できるんだな」


マオの言葉に反応して氷塊が形を変え、魔法を発動させるときのように言葉を口にするとすぐに氷塊は反応する。しかし、魔力操作の技術をもっと磨けばいずれはで魔法を発動したり、氷の形を変形する事もできるかもしれない。

試しにマオは杖を机の上に置くと、作り出した氷塊に手を伸ばす。しかし、マオが小杖を手放した途端に氷塊は徐々に小さくなって消え去ってしまう。


(やっぱり小杖を持っていない状態だと魔法は長続きしないのか……でも、リンダさんは小杖を持っていなかったけど、どうやって魔法の力を使ったんだろう?)


先ほどの授業ではリンダは小杖の類を使用せずに風を自分の身体に纏わせた事を思い出し、彼女がどうやって魔法の力を引きだしたのかマオは気になった。授業の時の彼女の姿を思い返し、すぐにマオはリンダが腕に腕輪のような物を装着していた事を思い出す。


(そういえば杖以外にも魔法の力を引きだす事ができる道具があると聞いたけど……そうだ、確か「魔法腕輪」だ!!)


以前にマオは何度か「魔法腕輪」なる単語を耳にした事があり、この魔法腕輪は杖がなくとも魔法の力を発動できる魔道具である。マオが愛読していた絵本の中の魔術師たちの中にも魔法腕輪を装着する者がいた。

よくよく思い出すとマオはこれまでにすれ違った生徒の中にも魔法腕輪のような物を装着していた者達が居た事を思い出す。先ほどの授業でもリンダと共に見学していた男子生徒も魔法腕輪を装着しており、彼等は教師からは「魔拳士組」と呼ばれていた。


(そうか、リンダさんは身体に魔法の力を纏って戦うから杖は必要ないのか。だから魔法腕輪を……)


素手での戦闘の場合は杖の類は邪魔になるため、魔拳士と呼ばれる者達は全員が魔法腕輪を利用する。リンダも魔法腕輪を利用して自分の体内の魔法の力を引きだし、風の魔力を拳に纏わせて戦っていた。


(皆、色々と工夫してるんだな……工夫か)


マオは小杖を取り出して今度は吸魔石から手を離した状態で構える。今ならばマオは無詠唱でも魔法を発動できるのではないかと考え、瞼を閉じて杖に魔力を送り込む。


(きっと今なら……アイス!!)


心の中でマオは魔法を唱えると、杖先が反応して氷塊を作り出す。詠唱を行う時と比べて発動に多少の時間はかかったが、それでもマオはに魔法の発動に成功した。


「やった……は、初めてできた!!」


興奮した様子でマオは自分が遂に無詠唱で魔法を発動させた事に喜び、この数日の間に魔力操作の技術が磨かれた事でで魔法を発動できるようになっていた。まだまだ発動までに時間が掛かったり、魔力消費が激しいので連発はできないが、それでも以前はできなかった事ができるようになったのは嬉しい事だった。

無詠唱で造り出した氷塊に掌を伸ばし、大きさの方も特に変化はない。心なしか前に無詠唱で魔法を発動しようとした時も魔力の消耗量が抑えられており、慣れていけば無詠唱でも魔法を連発できるようになるかもしれない。


「よし、この調子で行くぞ……でも、次はどうしよう?」


初めて無詠唱魔法に成功した事に喜んでいたマオだが、ここから先は自分は何をするべきか考える。魔力操作の技術を磨くのも大事だが、できる事ならば前よりも強化された氷塊を利用した新しい戦法を考えたい。


(前よりも氷も大きくなったし、形も変える事ができるようになったんだから色々と試したいよな……)


杖先に浮かぶ氷塊を見てマオは考え込み、不意に彼の頭の中にリオンの顔が思い浮かぶ。どうしてこの状況でリオンの顔が思い浮かんだのか自分でも不思議だったが、彼が扱っていた「スラッシュ」と呼ばれる魔法を思い出す。


「そうだ!!」


面白い事を思いついたマオは教室を見渡し、丁度いい大きさの教卓を発見する。この上に何か適当な置物を置けば訓練場の的当て人形の代わりになる。

マオが借りている教室は本来ならば数十人の生徒が使用するために作り出された部屋だが、今は生憎とマオ一人しかいない。彼はこの広々とした教室を利用し、自分専用の訓練場を用意する事にした。


「置物は……そうだな、あれでいいかな?」


流石に学校内の備品を壊すわけにはいかず、色々と迷った末にマオは学生寮に戻って自分の荷物を取りに戻る事にした――
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