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魔法学園編

第99話 強敵

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(あの爪は厄介だ……少しでも触れたら感電してまともに動けなくなる。それにこの人はだ)


バルルからの助言を思い出したマオは人間よりも身体能力や動体視力が優れている獣人族が相手の場合、彼の得意とする「氷弾」の魔法は通じない可能性もある。そこでマオは先に作り出した氷刃《ブレイド》を繰り出す。


「やああっ!!」
「ほう、回転する氷の刃か……面白い!!」


先ほどは足場にも利用した氷刃をマオは引き寄せると、ガイルに目掛けて放つ。迫りくる氷刃を見てガイルは怯えもせずに右腕の鉤爪を振りかざし、気合の雄叫びと共に二つの氷刃を同時に弾き返す。


「ふんっ!!」
「うわっ!?」


鉤爪の刃に弾かれた二つの氷刃は弾き返され、この時に片方は建物の煙突にめり込み、もう片方はマオの方に目掛けて吹っ飛ぶ。慌ててマオは小杖を構えて向かってきた氷刃を止める事に成功したが、ガイルの攻撃で氷刃は罅割れていた。

鋼鉄をも切断する威力を誇る氷刃をガイルは容易く弾き返し、しかも彼の持っている武器は傷一つない。それを見たマオは改めて魔法金属製の武器の凄さを思い知り、一方でガイルの方は右腕を軽く振り回す。


「ちっ、少し痺れたな……だが、その程度か?」
「ま、まだだっ!!」


二つの氷刃を弾き返す吐息にガイルは少し腕が痺れたが、勝利を確信したかのように笑みを浮かべる。それを見たマオは小杖を動かすと先ほど弾かれて煙突に刺さった氷刃を引き寄せる。

この時にガイルはマオに注意を引いていて煙突に突き刺さっていた方の氷刃には気づいておらず、マオは氷刃を操作してガイルの背後から狙う。しかし、完全な死角だったにも関わらずにガイルは頭を下げて攻撃を避けた。


「おっと……危ない危ない」
「なっ!?」


野生の勘でガイルは死角からの攻撃を回避すると、引き寄せられた氷刃はマオの元へ戻る。こちらの氷刃も罅割れており、先の一撃で二つの氷刃は瓦解寸前だった。


「中々に面白い魔法を使うが、他に魔法を使わない所を見るとそれだけしか魔法が使えないのか?」
「うっ……」
「まあいい、攻撃魔法が使えるのなら奴隷商人も高く買い取ってくれるだろうからな……そろそろ遊びも飽きてきた!!」
「く、来るな!!」


ガイルはマオに目掛けて踏み込み、それを見たマオは咄嗟に二つの氷刃を操作して攻撃を行う。だが、その攻撃に対してガイルは右腕の鉤爪を振り払って氷刃を粉々に破壊した。


「無駄だっ!!」
「くぅっ……まだだ!!」
「何っ!?」


氷刃を破壊して接近してきたガイルに対し、右手の小杖で氷刃を操作していたマオは今度は左手の小杖を突き出す。その彼の行為にガイルは足を止めると、マオは小杖の先端から「氷弾」を撃ち込む。


「喰らえっ!!」
「ぐぅっ!?」


発射された氷弾はガイルの腹部に目掛けて撃ち込まれ、それを見たガイルは避け切れないと判断した。しかし、ガイルは反射的に右腕を振りかざして撃ち込まれた氷弾を弾き返す。


「がああっ!!」
「なっ!?」


獣のような声を上げてガイルは鉤爪で氷弾を弾き返すと、屋根に弾き飛ばされた氷弾がめり込む。その光景を見たマオは唖然とするが、ガイルの方も冷や汗を流す。

氷刃の他にマオが扱える攻撃魔法は氷弾しか存在せず、その氷弾が正面から弾かれて無効化された以上、マオはガイルの対抗手段を失った事を意味している。彼は顔色を青くして後退り、その一方でガイルは危うく攻撃を受けそうになった事で怒りを露わにする。


「こ、このガキがっ……ぶち殺す!!」
「うっ……うわぁあああっ!?」


ガイルの殺気を感じ取ったマオは無我夢中に両手の小杖を構え、氷弾を連射して彼に撃ち込む。二つの小杖を利用してマオは間を開けずに氷弾を発射すると、ガイルも慌てて右腕の鉤爪で攻撃を防ぐ。


「ちぃっ……くそっ、このっ!!」
「来るな、来るなぁっ!?」


氷弾を撃ち込んでマオはガイルを近づけさせないようにするが、ガイルは氷弾の軌道を見切って鉤爪で防ぎ、あるいは身体を反らして回避する。それを見たマオはこのままでは自分が殺されると思って後退るが、いつの間にか彼は屋根の端の部分まで移動していた。


(しまった!?もう逃げ場が……!?)


これ以上に後ろに下がればマオは屋根から落ちてしまい、先ほどのように氷塊の足場を作り出して逃げた所でガイルはすぐに追いつく。マオの氷弾を弾きながらガイルは迫り、怒りの表情を浮かべながら鉤爪を振りかざす。


「死ねっ!!」
「う、うわぁあああっ!?」


至近距離にまで迫ってきたガイルに対してマオが取れる行動は一つしかなく、彼は一か八か屋根の上から飛び降りて空中で魔法を発動させる。彼は地上に落ちる前に二つの小杖を重ね合わせ、同時に二つの氷塊を作り出す。

二つの氷塊を作り出したマオは即座に合体させ、通常の2倍の大きさの氷塊を作り出す。それを掴んだマオはゆっくりと地上に降下してどうにか着地を行うと、それを見ていたガイルも後に続いて地上に飛び降りる。
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