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魔法学園編

第149話 素質の問題

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「先生、教えてくれ。あんたは前に魔物を倒せば魔力量が伸びると言ったね。それも自分の適性属性に耐性がある魔物を倒せば魔力が増えるといった」
「ええ、そうね……」
「けど、それならどうしてマオの魔力量は変わっていないんだい?あいつは数十匹も風耐性の魔物を倒したはずだよ。それともあいつは水耐性の魔物を倒さないと伸びないのいかい?」
「……いいえ、それは違うわ」


かつてのバルルは魔力量が少ないという理由で学園を退学し、その後に冒険者となった。冒険者になった彼女は数多の魔物を倒した事で魔力量が伸びて現在では学生時代の頃の数倍の魔力を手にした。

バルルはマオも自分と同じように魔物を倒せば彼の魔力量が伸びると信じていた。しかし、彼の属性は「氷」であるために風属性か水属性の耐性がある魔物を倒せば魔力量も伸びるはずだった。それなのにマオの魔力量は全くと言っていいほどに変わらず、その理由をマリアに問い質す。


「先生!!勿体ぶらずに教えてくれよ!!どうしてマオの魔力は増えないんだい!?」
「あの子の素質のせいよ」
「そ、素質?」
「確かに貴女の言う通りに特定の魔物を倒せば魔力量が増える事は間違いない。だけど、魔物を倒して得られる魔力にはがあるの」
「個人差……!?」


マリアの言葉にバルルは驚愕の表情を浮かべ、ここでマリアはやっと彼女に振り返った。この時にバルルはマリアが憐れんでいるような表情を浮かべている事に気付き、彼女がマオがいる時に説明をしなかったのは彼の気遣っての行為だと判明する。


「貴女の場合は魔物を倒す事で魔力を伸ばす素質が高かったからこそ数年で魔力を大幅に伸ばす事ができたわ。だけど、マオ君の場合は貴方よりも素質が低い」
「ど、どうして言い切れるんだい!?」
「簡単な答えよ。さっき、貴方はマオ君の魔力量が全く増えていないと言ったけれど、私が調べた限りでは彼の魔力量に僅かに変化はあった」
「本当かい!?」


マオが魔力量を全く伸びていないと思っていたバルルだったが、先ほどマリアはマオが魔力測定器に触れた際にほんの僅かではあるが彼の魔力が増えていた事を告げる。しかし、増えたと言っても本当にごく僅かな魔力しか増えておらず、本人達が気づかないのも無理はない。


「本当に僅かだけどマオ君の魔力は確かに上がっていた。だけど、あまりにも小さすぎて本人も気づいていない。仮に魔物を数百、数千匹倒した所できっと魔力量は殆ど変わらないでしょうね」
「な、何だって……」
「仮にマオ君が貴方と同じぐらいの魔力を得る場合は……何十万、下手をしたら何百万匹の魔物を犠牲にしなければならないわ」
「そんな……」


数百万の魔物をマオが一人で倒す事など現実的に考えて不可能に近く、仮に1日に100匹の魔物を倒したとしても何十年もの時を費やさなければならない。


「残念だけどあの子の魔力量を伸ばす事はほぼ不可能だと思いなさい。現状、魔物を倒す以外に魔力量を伸ばす方法は発見されていない以上、どうする事もできないわ」
「ど、どうにかならないのかい!?あいつはあんなに頑張ってるのに……」
「こればかりは努力ではどうにもならないわ。それは貴女もよく知っているでしょう?」
「くっ……畜生!!」


学生時代に魔力量が少ない事に悩んでいたバルルは、魔力量を伸ばすために様々な事を試した。しかし、結局は在学中に彼女の魔力量が増加する事はなく、結局は学園を退学した。

冒険者になった時に魔物を倒して魔力量を増やす事ができた時は嬉しかったが、その唯一の方法はマオには適さないと知って彼女は悔しさを覚える。いくらマオが強くなったといっても現実的に数百万匹の魔物を彼一人で倒すのは不可能だった。


「魔石を使用すれば少ない魔力量でも強力な魔法を生み出す事はできる。だけど、魔力量が低いという事は魔法を使用する度に魔石の魔力をより引き出さなければならない。けれどそんな使い方をすればすぐに魔石の魔力は切れてしまうわ」
「つ、使い方を工夫すればどうにでもなるだろう?バルトの奴との試合の時みたいにあいつなら……」
「あの試合はバルト君が魔石を使いこなしていなかっただけよ。もしも相手がマオ君と同じぐらいに魔石を巧みに扱える相手だったら……」
「……どうしようもないわけかい」


魔力量が少なくとも魔石などを利用すれば魔法の力を補う事はできる。しかし、マオのように極端に魔力が低い人間の場合は魔石への負担が必然的に大きくなり、しかも魔石は決して簡単に手に入る代物ではない。

マオが使用している魔石はバルルが今年分のボーナスを使い果たしてまで購入した代物であるため、一学生にしか過ぎないマオでは決して手に届かない代物である。しかも彼の場合は両親の仕送りのために稼いだお金は使っているため、魔石を購入する余裕などあるはずがなかった。
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