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幕間4)結局参考にならなかった(ザン目線)

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「あいつに壁ドンを前にしたことがあったな。その時は頭大丈夫なのかって言われたな。まぁ、元から俺の微笑みを気持ち悪いといってるやつだしな・・・」



ザンはアリアがまだ後宮から帰ってこないことをいいことに、一人ベッドの上で漫画を見ていた。ラティスから参考にと見せてもらった漫画だったが、冷静に分析してみると違和感さえ感じる。ついでにと奪った雑誌も参考に読んで見たが、ツッコミどころ多数だった。


「うーん。行動はほとんどやりつくした感があるな。キスとかさておき、壁ドンとか夜景の前でのディナーとか・・・しまった、アンアン言わせただけで終わっていた。くそ、この時に好きだとか愛してるとか、言葉を絡めておきゃ問題なかったのか。初めて出会った場所とかでの告白って・・・あそこだろ、召喚した大広間。ムードの欠片もねぇ。アドベンチャーワールドの貸し切りって・・・国民の税金でできるかっつーの」



(そもそも、今さら告白とか・・・・恥ずかしいしな)



「そういや、普段でさりげなく告白もいいとか雑誌に書いてあったような・・・?」



思い出して雑誌の該当するページをめくってみると、そこには、『タイミングさえ間違わなければ日常生活の中での告白もロマンチックにできる!』というキャッチフレーズが載っていた。



「告白の定番のセリフか・・・お、例文もあるのか・・・漫画よりよっぽど参考になる・・・ってなんだ、これ」



『好きです!付き合って下さい』
『俺の彼女になって』
『結婚を前提に付き合ってください』



一番最後のセリフが目に入った時、思いっきり固まった。もの凄く根本的・・いや、初歩的なことに気づいてしまったからだ。



「・・・・そういや、政略結婚だから、付き合った期間ゼロだったな。・・・え、もしやこれ、結婚以前の問題なのか?一般的には結婚を前提に・・・って、俺たちそうだったか・・・?」



困惑しながら別のページを見開くと、そこにまた定番らしいセリフがつらつらと並んでいた。それを呼んだザンはさらに困惑することになった。


『やっぱりお前しかいないから、付き合ってほしい』
『初めて会った時に君しかいないって思った』
『今日から俺の女になれ』
『お前がそばにいない人生なんて考えられない』
『今日から俺の女になれ』


「・・・お、一番最後のやつなら言った記憶が・・・確か、初めてのセックスの時に・・・あれ、なんか説明文が。えっと・・・『タイミングを間違えると身体の関係を迫っているようにも見えるので気を付けてください』・・・・あれ、なんか体中から変な汁が・・・よ、よし、次にいくか、次だ、次」


だらだらと出てくる汗を感じながら、もう現実など見たくないと逃げる様にページをさらに捲ってみると、結婚の申し込み・・・いわゆる、プロポーズについてのアンケートや決め台詞などが載っていた。


「あれ、俺・・・・・・なんて言って結婚を申し込んだんだったか?」


眉間に皺をよせ、頭に人差し指をついて考え込む。しばしの間があった後、脳裏に浮かんだのはあの時の会話だった。

『聖女との結婚は皇帝の絶対的な命令によるもの。だから、お前との政略結婚は受け入れる。だが、好きな相手ならまだしも、女神の守護があるとはいえ、平凡で頭もからっぽでバカな女と子を成すつもりはない』 
 『・・・そうだね、前半の厭味は差し置いて、私も好きな人以外の子は産みたくない』
 『そこで、提案だ。契約を結ばないか。俺と結婚すれば、お前だって、生活が保障され一生王族として暮らせる。悪くはないだろう?その代り、正妃を望まないことを条件とするがな』



「・・・まともなプロポーズじゃないな。いくら俺でもこれはカウントにならないって解るわ。こうしてみると、異世界で平民をしていた彼女によく受け入れられたな・・・」



はーっとため息をついて雑誌を閉じると同時にノックの音と彼女の声が聞こえてきた。それに気づいたザンは慌てて漫画と雑誌をベッドの下へと放り込みながら返事を返した。


「ザン、入ってもいいー?」
「おう、いいぞ」


入ってきたアリアはお土産とばかりに、ザンに封筒を渡すためにベッドへと這い上がってきた。


「よいしょっと、はいこれ」
「なんだよ、これは」
「皇后様から預かった手紙だよ。差出人は皇帝陛下ですって」
「・・・・後で確認する。母上はどんな様子だった、お元気でいらしたか?」
「ああ、うん・・・お菓子を食べられるぐらいには元気だったね」
「食欲がおありだということだな。それは良かった。それはそうと、アリア・・・その・・・今つけているやつはスリップなのか?前と少し形が違うような気がするが」
「ううん、これはベビードールの新作だよ。初めてレースを全面的に使ったものを作ったから、着心地を試すために着ているの」



今は冬だけれど、魔法のお蔭で部屋が暖かいからありがたいよねーと言うアリアの姿は前のスリップで見せた色っぽさとはまた別の魅力が出ている。気になったので、アリアを引き寄せて膝へと座らせて、ベビードールを触ってみた。


「・・・・きゃ?」
「ふむ、全面的にレースってエロいけれど、脱がす時にほつれないか心配だな」
「ああ、爪でひっかいてしまったりとかね・・・あるある。あっ、そうだ、ザンの言うように、真っ白いショーツとブラと他に何種類か、かなり大き目のサイズを売りだしてみたよ」
「・・・・・・あの豚を思い出してしまったじゃねぇか」



アリアの言葉にぱっと脳裏に浮かんだのは、三段腹がある身体をくねくねさせ、せっかくのランジェリーを台無しにしたキーマンズネットの娘だった。・・・あれは全世界にいるであろうふくよかな体型の皆様に土下座して謝れと言いたいぐらい、ランジェリーを|冒涜(ぼうとく)していたと思う。
もう思い出したくないとばかりに首を横に振った後、アリアを押し倒して上着を脱いだ。アリアもその体勢になった時、これからの展開が読めたのだろう、顔を赤らめていた。この時、ザンの脳裏には雑誌にあったキャッチフレーズが浮かんでいた。



『タイミングさえ間違わなければ日常生活の中での告白もロマンチックにできる!』



(あれ、これ丁度よいよな?この流れで告白するのもいいんじゃ・・・)



意気込みながらも、アリアのうなじに吸い付いて、片手でベビードールの上から胸を揉み始めた。ビクッと肩を竦ませていたアリアだったが、次第に声が少しずつ熱を帯び、顔も身体もピンク色に染まっていった。このベビードールだと、大事な部分以外はレースで透けているため、肌の変化がよりわかりやすく、いつもより肌の密着感がすごい。



「これ、結構いいじゃん。隙間があるから、グッとくるものを感じる・・お、下の方もレースか。それに、この紐ってもしかして」
「・・んっ・・・小さいからショーツと言うよりパンティかな・・・やっ・・?」



アリアが身体を竦ませたのは、紐を引っ張ったからだ。飾りかと思っていたが、飾りじゃなかった。これはこれでよいかもしれないと、反対側の紐もひっぱってポィッと放り投げた。それを見たアリアは絶叫していたが、まるっと無視して、口を塞ぐために舌を差し入れた。そのまま、裸になる準備へと入る。


「ひどっ・・・んっ・・・!!」
「そろそろ頃合いか・・・」


すっぽんぽんになる頃にはアリアも熱に浮かされて首に腕をまわして密着するほどになっていた。足を絡め、擦りつけてくる感じがイイ。さっきから秘部へ差し入れている指もスゴイ密着感を感じており、時折締め付けてくるのをかき混ぜながら時々抜くと蜜でぐちゅぐちゅと卑猥な音が聞こえてくる。


「・・あっ・・・・や、う・・ん、ああんっ!」
「ああ、いいな。ゾクゾクするっ・・・・」


頃合いとみて今度はザン自身の肉棒を差し入れていくと、アリアがよがって卑猥な声を出した。自分でも声がいつもと違うと気づいて慌てて口を閉じるが、そこで快楽は終わらない。緩急をつけながら抜き差しすると、声を我慢できないのか時折、艶ある声が部屋に響いている。
今日は正常位の気分なのか、何度もそのまま突き立てる。それに満足している途中で、アリアがとろんとした目で(ザンにとっては)考えたくもないことを突然口にした。



「んっ・・・あっ、ん・・・そっか・・・そうなんだ」
「どうした?」
「ん・・・ずっと繋がっていたいって・・・思ったけれど、これって・・・そういう関係・・だから、言えることだな、って」


(そういう関係って・・何だ?俺達は夫婦のはずだよな?・・・あれで、でも・・・)



ぐるぐると混乱する中、ザンの動きが止まり、気づけば肉棒は抜き出され、冷たい空気に晒されてゾウさんに変化しつつあった。(つまり、えたと)
いきなりの展開にアリアはびっくりしながらもどうしたの?と慌てふためくが、固まってしまったザンは何も答えられず、撃沈した。




(・・・こういうことか・・・タイミング・・って・・・舐めてたわ、こうしてみると、俺ってかなりハードルが楽だったんだな。だから、仕切り直した時にハードルが高くなってると)



がっくりしながらも、アリアに今日は無理だということをオブラートに包んで謝罪した。心配するアリアを宥めすかして寝かせた後、(アリアを)抱きしめたまま、皇帝からの手紙を開いた。



『万が一のために忠告だ。決して性交の最中に愛の言葉を囁いたり告白してはならぬぞ』



無言で手紙を封筒にしまい、今度こそ布団をかぶってアリアの頭に顔をうずめた。その際、ザンは小さい声で呟いたが、それが皇帝に届くことはなかった。





「・・・・・もっと早く手紙を開けておけば良かったと思いましたよ、父上」







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