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能面部下の業務日誌

22.俺様彼氏をお出迎え

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さて。最終確認を致しましょう。

お部屋の片付け…余計なものは出てないですね。
飾り付け…ミニツリーの完成度がイマイチ…でもまあ及第点。
お風呂掃除…とっておきのバスボムも用意しました。
晩御飯…
…パスタソースは美味しく出来てます。あとはパスタを茹でるだけ。
…ローストビーフは肉汁が落ち着くのを待つのみ。
…サラダはポテサラも出来たので、ブロッコリーを茹でるだけ。
…スペアリブは鍋の中で待機中。
…デザート…意外と美味しく出来たのでOK。

…完璧ではありませんか?
涼介さん…喜んでくださるでしょうか…

時計を見ながらそろそろ帰って来る頃かと思っていると、何となく彼の気配を感じて玄関へ向かう。

…そっと覗き穴から見てみると、そこには百面相をしている最愛の人。

…なんて顔をしているんですか。仕方のない人ですねぇ。

彼がドアを開ける前に、自分から迎え入れる。

「…おかえりなさい。何時迄も外にいたら、風邪ひきますよ?」
「…ただいま。なんで…俺が帰ってきたってわかったんだ?」
「…んぅ…なんとなく?うまく説明できませんが…」

確かに、時計はそろそろ帰って来るだろう時間を指してはいたが、彼が玄関にいると思ったのは『なんとなく』だ。

顎に指を当て考えていたら、靴を脱いだ涼介さんからふわりと抱き締められた。

「…逢いたかった…」

噛みしめるように囁くその声に、久しぶりの抱擁に、胸が熱くなる。

「…私もですよ。」

きゅうっと抱きついて、肺いっぱいに涼介さんの香りを取り込むと、彼は髪に顔を埋めてきた。

「あー…俺、今すっげぇ幸せ…」
「大袈裟ですねぇ…」

まぁ、私も同じ事を考えていましたけれど。

すると涼介さんの手が、指が、するすると頬を撫でてきた。
…久し振りのキスの予感に、鼓動が早くなる。

くちびるが触れ合うまであと少し…




ぐぅうぅぅぅぅぅぅ




…そうですね。そんな時間ですね。

盛大にお腹を鳴らした本人は、真っ赤な顔をしてバツが悪そうにしていた。
それが可笑しくてつい吹き出してしまうと、途端に眉根が寄って情けない顔に変化する。

「ご飯。用意しますので、お洗濯物とか出してて下さい。」
「…そうする…はぁ…なんでこのタイミングで…」

お腹を空かせた涼介さんに、心行くまで食べていただきましょう!

1人気合を入れながら、台所へと向かうのだった。





ポテサラを芯にして茹でブロッコリーをツリーの様に飾って。
フェットチーネはクリームソースと絡めてお皿に盛り付けて。
スペアリブとローストビーフはそれぞれお皿にドーン!
…デザートは…今は放置で。

出来た料理をテーブルに運んでいると

「っはぁあぁぁ…いい匂い…!」

すっかり着替えた涼介さんが入ってきた。

「丁度用意できましたよ。どうぞ。」

目を輝かせながら(料理に)熱視線を送る彼。

「簡単なものしか出来ませんでしたが…」

…って人の話聞いてます?「ふぉおぉぉっ!」なんて言ってる場合ではありませんよ?

「お酒はどうしますか?」
「あ、あぁ。持ってくる。」

保冷バッグから取り出してきたのは、スパークリングの日本酒。

…日本酒?

「クリスマスと言えば、普通はワインかシャンパンだろうけど…苦手だろ?これなら甘口だし、飲みやすいから…」

…覚えててくれたんですか?
ワインもビールもシャンパンも、苦くて渋くて酸っぱくて苦手だと、以前伝えていたことを。
…その心遣いがとても嬉しくて。

「…ありがとうございます。」

素直に口から出た言葉は、涼介さんが思わず身悶える程の破壊力を伴っていたらしい。

「…秋良…ヤバイ。可愛い。落ち着け、俺…っ!」

胸を押さえ、ぶつぶつと呪文のように呟く彼に

「…涼介さんがくださったお酒で乾杯しましょう?、ご飯も冷めちゃいますよ?」

下から覗き込むようにして視線を合わせると、頭をわしわしと撫でられて

「…そんな可愛いことして…後で後悔するなよ…?」

なんて不穏なことを言われてしまった。

その後の食事は何事もなく、涼介さんが「美味い。マジ美味い。」を連呼しながら終わったのだけれど…

この時の私は、涼介さんの我慢の限界に気付いていなかった。


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