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「また来たの?」
「ああ、暇だからな」
どうしてミルエルはこんなバレバレの嘘をつくのだろうか。
「この前、あなたの両親が来たわ。あなたに早く帰るように言ってくれって。本当はこんな所に来ている時間はないのでしょう?」
「ははっ……そんなわけないだろ?」
不敵に笑う幼馴染は、どこか緊張しているように見えた。
だからこそ笑い、緊張を紛らわそうとしている。
いつもはソファに背をつけるミルエルが、今は背をつけずに前のめりになっている。
「そんなわけあるわよ。バレバレの嘘はやめて。本当はどうしてここにきているの?」
単純に知りたかった。
ミルエルのことがもっと。
しかし他のことを知る時よりも、心臓が高鳴るのはなぜだろう。
「はぁ……まあいいか……そのつもりで来たんだし」
「はい?」
ミルエルの言っている意味がよく分からない。
首を傾げた私に、彼は頬を赤らめながら言った。
「おまえに会いに来てたんだ」
「え?」
「だから! ジルと話したかったんだよ! それに離婚して心配してたし……その……ないと思うけど、落ち込んでないかとか……だ、だって僕は……ジルのことが……好きだから」
「え?」
いや、待ってちょうだい。
そう言ったつもりが声に出ていなかった。
そのせいか体が燃えるように熱い……本当にそれが原因なのか?本当は熱があるんじゃないのか?
思考が定まらず、私はただ困惑していた。
そんな私を見て、エミリアがポツリと言う。
「で……返事は?」
「返事? 何が?」
「え……だ、だって僕はお前のこと好きっていっただろ? だからお前は僕のことをどう思っているのか……返事をくれよ」
「それを言ったとしてどうなるというの?」
「それは……その……」
ミルエルが言いにくいことを言う時みたいに、体を縮めた。
普段みない彼の弱々しい姿に、少しだけ可笑しくなってしまう。
笑ったことが不自然だったのか、ミルエルは口を尖らせた。
「何か変だったか?」
「いえ失礼……普段のあなたからは想像もできないくらいの態度だったから。別に面白いと言っているわけではないのよ。ただ、なぜか笑ってしまったの」
言ってから不思議に思った。
なんで自分は笑ったのかと。
最近はずっとこんな感じだ。
ミルエルが家に来てから、私を不可解な感情が襲い始めた。
「そっか……話を戻すけど、お前はどうなんだ? 僕のこと……好きか?」
「それは……」
続きを言う前に、私はミルエルから顔を逸らしていた。
急に顔が熱くなって、ミルエルを見ていられなくなったのだ。
「それは?」
ミルエルの困惑した声だけを聞いて、私はゆっくりと顔を戻す。
彼の真剣な瞳が私を見つめていて、心臓がドクンと跳ねた。
「わ、分からない……私、あなたのことどう思っているのかしら……」
「はぁ?」
「ごめんなさい。でも本当にそうなの。さっきから熱が出たみたいに体が熱いし、直接あなたを見ることも難しいし……なにより、心臓が早く動いていて……これ……どういうことかしら?」
質問をしただけだが、ミルエルはなぜかぽかんとしていた。
聞こえなかったのだろうか。
もう一度初めから言おうと思ったその時、ミルエルが口を開く。
「ジル。それを好きっていうんだよ。ありがとな」
「え……」
初めて触れる感情だった。
しかし恐怖なんてなくて、ずっとこれに浸りたいと思った。
「好き……私、ミルエルのこと……えっと……どうすればいいの? 私たちどうなるの?」
ミルエルは嬉しそうに笑いながら答える。
「恋人になって、夫婦になる。そして死ぬまで一緒だ」
「そう……」
彼の答えを聞いた瞬間、なぜかすごく嬉しくなった。
この世界には分からないことがたくさんある。
未知で溢れている。
だからこの選択が本当に私の幸福であるのかは正直分からない。
しかし今この瞬間だけは、幸福なのだとはっきり言える。
だってこんなにも笑顔が溢れて止まらないのだから。
その後、私はミルエルと結婚して、いつまでも幸せに暮らした。
「ああ、暇だからな」
どうしてミルエルはこんなバレバレの嘘をつくのだろうか。
「この前、あなたの両親が来たわ。あなたに早く帰るように言ってくれって。本当はこんな所に来ている時間はないのでしょう?」
「ははっ……そんなわけないだろ?」
不敵に笑う幼馴染は、どこか緊張しているように見えた。
だからこそ笑い、緊張を紛らわそうとしている。
いつもはソファに背をつけるミルエルが、今は背をつけずに前のめりになっている。
「そんなわけあるわよ。バレバレの嘘はやめて。本当はどうしてここにきているの?」
単純に知りたかった。
ミルエルのことがもっと。
しかし他のことを知る時よりも、心臓が高鳴るのはなぜだろう。
「はぁ……まあいいか……そのつもりで来たんだし」
「はい?」
ミルエルの言っている意味がよく分からない。
首を傾げた私に、彼は頬を赤らめながら言った。
「おまえに会いに来てたんだ」
「え?」
「だから! ジルと話したかったんだよ! それに離婚して心配してたし……その……ないと思うけど、落ち込んでないかとか……だ、だって僕は……ジルのことが……好きだから」
「え?」
いや、待ってちょうだい。
そう言ったつもりが声に出ていなかった。
そのせいか体が燃えるように熱い……本当にそれが原因なのか?本当は熱があるんじゃないのか?
思考が定まらず、私はただ困惑していた。
そんな私を見て、エミリアがポツリと言う。
「で……返事は?」
「返事? 何が?」
「え……だ、だって僕はお前のこと好きっていっただろ? だからお前は僕のことをどう思っているのか……返事をくれよ」
「それを言ったとしてどうなるというの?」
「それは……その……」
ミルエルが言いにくいことを言う時みたいに、体を縮めた。
普段みない彼の弱々しい姿に、少しだけ可笑しくなってしまう。
笑ったことが不自然だったのか、ミルエルは口を尖らせた。
「何か変だったか?」
「いえ失礼……普段のあなたからは想像もできないくらいの態度だったから。別に面白いと言っているわけではないのよ。ただ、なぜか笑ってしまったの」
言ってから不思議に思った。
なんで自分は笑ったのかと。
最近はずっとこんな感じだ。
ミルエルが家に来てから、私を不可解な感情が襲い始めた。
「そっか……話を戻すけど、お前はどうなんだ? 僕のこと……好きか?」
「それは……」
続きを言う前に、私はミルエルから顔を逸らしていた。
急に顔が熱くなって、ミルエルを見ていられなくなったのだ。
「それは?」
ミルエルの困惑した声だけを聞いて、私はゆっくりと顔を戻す。
彼の真剣な瞳が私を見つめていて、心臓がドクンと跳ねた。
「わ、分からない……私、あなたのことどう思っているのかしら……」
「はぁ?」
「ごめんなさい。でも本当にそうなの。さっきから熱が出たみたいに体が熱いし、直接あなたを見ることも難しいし……なにより、心臓が早く動いていて……これ……どういうことかしら?」
質問をしただけだが、ミルエルはなぜかぽかんとしていた。
聞こえなかったのだろうか。
もう一度初めから言おうと思ったその時、ミルエルが口を開く。
「ジル。それを好きっていうんだよ。ありがとな」
「え……」
初めて触れる感情だった。
しかし恐怖なんてなくて、ずっとこれに浸りたいと思った。
「好き……私、ミルエルのこと……えっと……どうすればいいの? 私たちどうなるの?」
ミルエルは嬉しそうに笑いながら答える。
「恋人になって、夫婦になる。そして死ぬまで一緒だ」
「そう……」
彼の答えを聞いた瞬間、なぜかすごく嬉しくなった。
この世界には分からないことがたくさんある。
未知で溢れている。
だからこの選択が本当に私の幸福であるのかは正直分からない。
しかし今この瞬間だけは、幸福なのだとはっきり言える。
だってこんなにも笑顔が溢れて止まらないのだから。
その後、私はミルエルと結婚して、いつまでも幸せに暮らした。
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