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ゼロ無双

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「敵は3方から寄せてくる。
我々一機づつで零戦88型組と連携しつつ、あとはこの戦略機の力を最大限に引き出して闘う。
燃料的にも25分でケリをつける。いいな?」
「わかってるっての!」
「了解です」

では、生きていたらまた逢おう!

「全機、一撃離脱を徹底。
一度の突入で2ないし3機は喰え。
常に艦隊方面に抜けようとする敵攻撃機隊は確実に潰す。
あとは鳳凰 CICが必要な情報をくれる。
武運を祈る!」
「「リョウ!」」
1方面あたり70対350機といった感じか…。
零戦隊の連中の腕と、あとは…。

「零風見参!」
30ミリの弾幕で、敵先頭を薙ぎ払う。
『なんだあの化け物!?』
『ウワサの奴か!?シィット!回避!!』
そんな敵の無線交信が入ってくる。

1航過で一息に15機を撃墜。算を乱したところに零戦88型隊が襲い掛かる。
最高速は(88型通常スペックの範囲なら)Pー80Hと互角。
しかし推力比や上昇力においては依然零戦側が上回っていた。
ベテランパイロット達はその優位を最大限に活かし、最大効率で敵機を屠っていく。
「落ち着け!戦闘機隊の任務は攻撃隊の道を開ける事だ。とにかく爆装組から遠ざけろ!」
ボング隊長が必死に立て直しを図る。
数少ないベテラン指揮官達があり合わせのチームを編成し、集団戦闘で数的優位を活かす流れに立て直していく。
どうにか250機超の爆装組が、日本艦隊へ向かう。
しかし、ようやく戦況の針が戻りかけたところで、例のヤツが…。
『ぐあああああ!?』
分厚い刃物でステーキを切るように、こちらの編隊を分断し、十数機の戦闘機を撫で斬りにしていく。
これを上空から見ると、十字状に航過してやっていやがる…
とにかくそれで全ての努力が毎度リセットされてしまうのだ。
(しかしこいつらの全力もそこまで続かない。
なんとか…もう少し爆装組を…)

その爆装組、無論日本側には脅威の数である。
「全機間隔を取れ!
例の対空榴弾を喰らえば只ではすまん。」
「「アイ・サー!」」
全方位、高度もバラバラに浸透していくアメリカ攻撃隊。
このまま緩降下で爆弾をカマす。
両翼に1トン爆弾2発。
簡易だがレーダーとも連動している。
訓練通りにやれば…。
だが、高度1500を切り敵輪形陣に入りかけたところで、日本側攻撃隊の対空砲火が一気に熾烈になる。
しかも、かなり精緻に高度の別も含めこちらを捉えているのか、10秒前後の単位で弾幕に疎と密のエリアが切り替わり、その度密の空間のPー80Hが薙ぎ払われる。
(クソが、味な真似を…。)
ターナー中尉の機は猛弾幕の中、輪形陣中央の主力艦に狙いを定める。
眼前には改翔鶴級空母、雲竜。
「よし、コースに乗った!2発ぶちかます!」
次の瞬間、高角砲の破片が翼内タンクをぶち抜く。
!!!
火災は起きなかったが。。
しかし燃料ががっつりと流出…。
(なんてこった…基地には到底還れん。)
ターナーは歯軋りした。
がすぐに表情を平静に戻し、部下に投下次第離脱せよと命じる。
(すまない。アリッサ。天国で逢おう。
俺の方は行けるかわからんが…)

スロットルをあおり、一気に急降下に移るターナー機。
「敵機直上ー!!急降下!!」
雲竜見張員の絶叫。
「取り舵一杯!急速回避!」
そう叫ぶ艦長の頭には別の警鐘…。

「うおおおお!星条旗よ永遠なれ!」
ターナー機の甲板突入後、0.7秒のラグを経て沖天を衝く大爆発。
雲竜甲板が半分以上めくり上がり、誘爆と大火災。
その様は大和艦橋からもはっきりと見えた。
息を呑む小沢長官以下幕僚達。
「敵ながら天晴…と言うべきなのかもしれぬが…。」
小沢の言葉に込められたニュアンスをなんとなしに読み取り、頷く宇垣参謀長。
雲竜は必死の応急処置の甲斐なく、20分後に沈没することとなる。
その後、戦艦比叡にもあくまで通常攻撃による1発の1トン爆弾が直撃。
辛うじて航行可能であるが、第4砲塔を潰され浸水も無視できない。

その他外周部の駆逐艦7隻にロケット弾で小破以上のダメージを与えたが…。
(退くべきだな…。)
ボングは唇を噛む。
プロ揃いの戦闘機隊が十分なバックアップと高性能の機体で艦隊護衛につく。
これの重みを真の意味で、分かっていなかった。俺も我が合衆国軍も…。
あの化け物達を別にしても…。
あとは海軍主力艦同士の艦隊決戦に賭けるしかないか。結局は。
自分のスコアに4つ上乗せしたところで何の慰めにもならない。
とにかく自身の現状での最優先の任務は、生き残った部下を連れ帰る事だ。
856機被撃墜。
そして多数機被弾。
少し時間を起き概要であるがその結果を知り愕然とするのは、彼の上位者もそうであった。

「実質全滅ではないか…。」
オアフ島統合防衛司令部。
太平洋艦隊司令長官チェスター・ニミッツ大将は頭を抱えた。
正直、敵主力艦隊に半減以上のダメージを与えなければ、この後行われる艦隊決戦の趨勢が全く見えなくなってしまう。
「あら閣下。何かとお大変ですわね。」
むろんルメイである。
コ、コイツだけは!

いや、大統領の強い意向故だが、B32爆撃隊が日本艦隊襲来直前まで各基地に居座り、ギリギリまで日本本土空襲にこだわった。
故に陸上からの航空兵力増派が中途半端になってしまった。
まぁ、生産が間に合いパイロットも慣熟したジェット機の数があれが限界だったと言う点もあるが…。それでもコルセアとスカイレイダーで良いから1000機弱増派できなくはなかったのだが…。

「では本官は命令により本土で部隊再編に努めますので。よろしくねぇ?」
誰か知らない若い男の肩を抱き、ルメイは司令部をあとにする。
もうニミッツは怒る気にもなれない。
とにかく目の前の戦いだ。
まだ、我が方が艦隊戦では優位!それは動かん。
1400、日没には遠い。
最前線のスプルーアンスは当然、
艦隊決戦に向け陣形を構築していた。













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