上 下
137 / 166

究極の艦隊防空戦

しおりを挟む
「一旦、空海ともに防空体制を立て直す!
樋端さん、対空射撃総指揮は手筈通りに!」
「了解!
まずは輪形陣再構築、対空砲火の密度を上げる。
重巡以上の艦は射程に入り次第、4式弾を撃ちまくれ!
そして搭載機各艦…
直ちに梅花22型を全弾発射せよ!
ジェット機対応できない軽空母甲板、駆逐艦巡洋艦の水上機搭載スペース、それらから合計210発の新型対空誘導弾が放たれた。
小型機の速度機動性に対応する為、誘導装置が大型化した分、射程と炸薬量は減っているが、何の問題もなかった、結果としては。
「ジャップのロケット弾!200以上!」
「各機散開!ただし2機編隊は崩すな!」
米側総隊長ヘリントン大佐。
その指示も、急速回避も虚しく梅花の牙にかかり、次々と仲間が爆散しているのを目の前にした経験浅い大多数のパイロット達にはすぐに耳からすり抜けてしまう。
要するにパニック状態である。

「っしゃ暴れるぜ!」
杉田庄一の戦略機天雷を先頭に、逆落としに艦隊直掩の零戦88型が続く。
恐らく梅花は7割以上は命中したが、まだ敵はそれでも4桁数…。
2倍強か。
だったらイケるぜ!
まだ算を乱している米編隊にロケットと機関砲群で掃射を仕掛ける。
そこに突き入る零戦88型の群れ。
乱戦となる。
そしてこうなれば歴戦の日本側パイロットの独壇場であった。
F2Hとスカイレイダーは回避も連携もままならぬ中、次々と鴨撃ちにされていく…。
それでも上空から指揮を執るカリンは気を緩めない。
「全機、スカイレイダーを艦隊に近づけるな!
空戦にうつつ抜かしすぎるな!」
「了解!」
「心得ております!」
乱戦の中でも自発的に2機編隊を組み、輪を抜け出して、艦隊に殺到しようとするスカイレイダー群をきっちり潰す日本戦闘機隊。

それでも一旦は約120機程度が防衛ラインを突破するが、待ってましたとばかりの日本主力艦の4式弾斉射に半数を失い、強引に突破した機も両用砲と2種類の対空機関砲の前に損害を拡大、結局空母大鳳と重巡利根に至近弾、小破させるに止まった。
「少し俺はおかわりをしてくる。余裕あるうちにな。」
久保拓也の零風は、味方の対空砲火の嵐の中、海面ギリギリを這い、あり得ない機動を繰り返して鳳凰の甲板に滑り込む。
「全く!危ない真似をなさる笑」
整備班長に言われても、表情は崩さない久保。
「まだまだ、すんなりこちらの計画通りには行かないだろうからな。」
燃料弾薬満載、さらにロケット弾のおまけもつけて、再び舞い上がる零風。
さらに突破してきたスカイレイダー群と馳せ違う。
ロケット弾をぶっ放しつつ、無線を繋ぐ久保。
「樋端さん、T2ヒのボックスに火力集中!」
「ようそろ!」
敵攻撃隊にあらゆる対空砲弾の槍ぶすまが幾重にも突き刺さる。
ちなみに日本軍の両用、高角砲は、未だ砲弾に米軍のような近接電波信管を装備するに至っていないが、その代わり逐次レーダーで敵機編隊との距離を逆算し、時限信管の作動時間を調整することができる。
とにかくこの攻撃で、一気に3桁に達する被害を受けた米軍スカイレイダー群。
そして零風が一連の迎撃態勢に加わり、急激に米艦載機群の攻撃は勢いを減じた。
日本艦船は利根以降、駆逐艦2隻沈没、軽巡大破1隻である。(正直、経験浅いパイロットが半ばパニックとなり、雑な狙いで爆弾を落としてしまったケースも多い。)
「救いは無いんですか!?」
米編隊ヘリントン総隊長はそんな事は言わない。絶対不利な条件の中、協同撃墜2機、単独で3機撃墜と奮迅していた。
そしてタマが尽きてからも、日本のエースパイロット達の猛攻を躱し続け、残った味方の戦場空域脱出を促し続けた。
そして自らも脱出せんと緩降下に入った時。
「逃がしはしねえぜ。」
倉本飛曹長が食らいつく。
ヘリントンはあえて無視し、とにかく離脱を優先する。
燃料的に手練れとドッグファイトの余裕は無い。
だが倉本機は400を切る距離まで肉薄…。
回避し切れるか…。
次の瞬間!
倉本の零戦88型に数条の火箭が突き刺さり、ぐらりと機体が傾ぐ。
!!??

「遅れてすまない!」
リチャード・ボング陸軍航空隊隊長であった。
全て、最新鋭のPー80H。
海面速度1020キロ。
半数は1トン爆弾を搭載し、総数1150機!
「こやつらが本命か…地味に、いや派手にヤバいな。」
山口多聞が呟く。
機数差もだが、直掩の零戦88型の燃料が限界に近い。
増援…と言うより入れ替わりに出した、本来攻撃隊に回す筈の88型も252機。
これでは…。
「お任せ下さい!」
久保拓也の声が全艦に響く。
「こういう時の為の、『戦略機』です!」
……………!
「まぁ、あたしにかかればお茶の子さいさいよ(あのバカ安請け合いを…)」
「自分も!閣下と姐さんを信じて墜としに墜とします。」
ホルテンブルグ、杉田…
少しフリーズしていた山口だったが、直ぐに気迫炙る音声で命ずる。
「よくわかった!
入れ替わりの連中をうまく指揮り、あとは3機でヤッてみろ!
見敵必殺!見敵必殺じゃあ!」

「「了解!!」」

「我々も最大限の火力を、樋端君。」
小澤長官の声に、樋端参謀は親指を立て応える。
かくて、本海戦の空に於ける一大決戦の火蓋が切られた。
ハワイ時刻、正午が迫りつつあった。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

転生したらエルフだったので無双する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:2,625

re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:796pt お気に入り:111

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:41,295pt お気に入り:29,893

中将閣下は御下賜品となった令嬢を溺愛する

恋愛 / 完結 24h.ポイント:646pt お気に入り:4,836

カペルマイスター ~宮廷楽長アントーニオ・サリエーリの苦悩~

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:2,202pt お気に入り:24

大罪人の娘・前編

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:1,533pt お気に入り:9

無職ニートの俺は気が付くと聯合艦隊司令長官になっていた

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:191pt お気に入り:1,533

大東亜戦争を有利に

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:149pt お気に入り:266

処理中です...