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第二章 やめてー!!俺の屑を連れて行かないでぇ!!!
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パチリと目が覚めると、あたりは真っ暗だった。いつの間にか夜中になっていたみたいだ。あのまま寝てしまったんだ俺。別に疲れていたわけでもないし、何ならロズリーが心配だったんだけど!
「あ! コイヨン!!」
寝てたってことはコイヨンを箱に詰めたままだ。魔法といてないからまだ寝たままかも!俺は慌ててベッドの上から下りた。服も寝間着に替わっているので恐らく猊下が着替えさせてくれたのだろう。背伸びをしてドアノブをひねり、扉を開ける。
廊下は薄暗い。普通の人だったら明かりに燭台を持つが俺は夜目も利くので要らない。それに明かりがあったらばれるしね。てくてくと廊下を歩きながらコイヨンの場所まで向かうと、不意に角から手が伸びた。
「うおっ!?」
一体だれだと思い思わず声を上げる。見たことのない骨張った手と袖口から覗く骨が浮き上がった手首。誰だ。こんなに痩せてる使用人なんて見たことがない。ゆっくりと視線を上に上げると細くて灰色がかった髪が見えた。
「ひ、ひひ、つ、つかまえた……っ!!」
「……おぉ」
数時間ぶりだね!悪徳魔術師!!まさかこんな場所までやってくるとは思わなかったけど、俺のこと追いかけてきてくれたのかぁ!ありがとう!!君の熱意には脱帽だよ!!
でも助かった~。これで悪徳魔術師の剣は片付きそう。このままとりあえずついて行こうかな。色々、そう、なんでここにいるんだろうとかそういうのはほら、物語の強制力だと考えれば辻褄が合う。
よしよし、次は俺が軽―く抵抗しつつ誘拐されれば……。
そう思って下を見て、悪徳魔術師が杖を持っていることに気がついた。ああ、あのときのかつかつって音これか。足不自由なんだ。
足が不自由と言えば、拾った子供にいたな~。あの時代、マジで治安悪くてそこら辺にいる子供を憂さ晴らしでぶん殴るのは日常茶飯事。そんな中、足の骨を砕くほど殴られて、倒れてた子供がいたんだよね~。そこまで殴られて何も処置されてないから足は腫れて紫色になってたし、俺が治癒しなければ一生歩けなかっただろうね。患部に触れないように抱き上げて、作った孤児院に連れて行って、しばらくは車椅子作って生活させてたな。
そうそう、なんか知らんけどこんな足じゃ役に立てないって泣き出しちゃった時があって、あー、神様を信じればきっと足が治るよって言ったんだよね。お陰で信仰深い子になって毎日お祈りをしていたなぁ。俺はその熱意に答えて足を治した。まあそれがなくても適当なタイミングで治すつもりだったんだけど。
『私は、貴方様をずっとずっと信仰します!!』
『? そう、ほどほどにね。無理のないように』
『はい!』
最後に頭を撫でてたらキラキラしたおめめで俺を見上げていた。あの子、最終的にどうなってたかなぁ。多分あのとき追い出したと思うけど。
昔のことに思いを馳せているとぐいっと無理矢理腕を引っ張られる。かつんかつんと音を立てながら足早にどこかに向かっていく悪徳魔術師に俺はついて行きながら周りを見渡した。
へー、妙に静かだと思ったらここら一帯に魔法をかけたみたいだ。今、俺とこの悪徳魔術師は少しずれた空間にいる。ただたんに見えなくするとかじゃなくて別の空間にいるのだ。うーん、俺も説明が難しいんだけど、同じ場所にいるようで違う場所にいるからこの空間を裂かない限りは見つからないし捕まらない。
チート級の魔法だが、欠点がある。莫大な魔力とその魔法を維持するための柱が必要。まあいわゆる魔法使いだ。しかも、高度な技術が必要なので魔法に精通していないとだめなのだが、それの用意はこの悪徳魔術師には簡単だろう。
なんせ、子供を使って実験しているような屑だ。それ位の戦力はある。今の近くに誰か控えてるみたいだし。俺が大人しくついてこなかったら使うつもりだったんだろうね。
「珍しい、金だ! し、支援者には感謝しなければ!!」
支援者?
そういえばそんなのいたな。いたけど、最後まで謎のままだったんだよねぇ。だってここら辺の話は、あくまでラスボスである俺が関わっただけの話。主人公でもない俺の話が本編で詳しく語られるはずがない。だから、倒される直前にかるーく明かされる位なので全く全貌は分からない。こんなことがありましたよというだけだ。
もしかしたら俺が死んだ後に出たかもしれないけど、あの話を読んだだけでは分からないのだ。
支援者もその単語だけ出てきただけだしな。本編に影響ないから放っておいていい。
「こ、こ、これで、完成する! あ、あいつらに、ふ、ふ、復讐を……っ!!」
へー、なんか知らないけど復讐に燃えてこんな実験を始めたのかぁ。よくある話だなぁ。悪役ってそういうもんだからね。俺も一部の記憶を思い出し、雪辱を晴らすために頑張るんだもんな。
共通していることは事情がどうあれ、人様に迷惑をかけるのは良くない。俺が行くからにはぶっ潰して、この人も処理しないと。子供も正気に戻し、て……?
「あ! コイヨン!!」
寝てたってことはコイヨンを箱に詰めたままだ。魔法といてないからまだ寝たままかも!俺は慌ててベッドの上から下りた。服も寝間着に替わっているので恐らく猊下が着替えさせてくれたのだろう。背伸びをしてドアノブをひねり、扉を開ける。
廊下は薄暗い。普通の人だったら明かりに燭台を持つが俺は夜目も利くので要らない。それに明かりがあったらばれるしね。てくてくと廊下を歩きながらコイヨンの場所まで向かうと、不意に角から手が伸びた。
「うおっ!?」
一体だれだと思い思わず声を上げる。見たことのない骨張った手と袖口から覗く骨が浮き上がった手首。誰だ。こんなに痩せてる使用人なんて見たことがない。ゆっくりと視線を上に上げると細くて灰色がかった髪が見えた。
「ひ、ひひ、つ、つかまえた……っ!!」
「……おぉ」
数時間ぶりだね!悪徳魔術師!!まさかこんな場所までやってくるとは思わなかったけど、俺のこと追いかけてきてくれたのかぁ!ありがとう!!君の熱意には脱帽だよ!!
でも助かった~。これで悪徳魔術師の剣は片付きそう。このままとりあえずついて行こうかな。色々、そう、なんでここにいるんだろうとかそういうのはほら、物語の強制力だと考えれば辻褄が合う。
よしよし、次は俺が軽―く抵抗しつつ誘拐されれば……。
そう思って下を見て、悪徳魔術師が杖を持っていることに気がついた。ああ、あのときのかつかつって音これか。足不自由なんだ。
足が不自由と言えば、拾った子供にいたな~。あの時代、マジで治安悪くてそこら辺にいる子供を憂さ晴らしでぶん殴るのは日常茶飯事。そんな中、足の骨を砕くほど殴られて、倒れてた子供がいたんだよね~。そこまで殴られて何も処置されてないから足は腫れて紫色になってたし、俺が治癒しなければ一生歩けなかっただろうね。患部に触れないように抱き上げて、作った孤児院に連れて行って、しばらくは車椅子作って生活させてたな。
そうそう、なんか知らんけどこんな足じゃ役に立てないって泣き出しちゃった時があって、あー、神様を信じればきっと足が治るよって言ったんだよね。お陰で信仰深い子になって毎日お祈りをしていたなぁ。俺はその熱意に答えて足を治した。まあそれがなくても適当なタイミングで治すつもりだったんだけど。
『私は、貴方様をずっとずっと信仰します!!』
『? そう、ほどほどにね。無理のないように』
『はい!』
最後に頭を撫でてたらキラキラしたおめめで俺を見上げていた。あの子、最終的にどうなってたかなぁ。多分あのとき追い出したと思うけど。
昔のことに思いを馳せているとぐいっと無理矢理腕を引っ張られる。かつんかつんと音を立てながら足早にどこかに向かっていく悪徳魔術師に俺はついて行きながら周りを見渡した。
へー、妙に静かだと思ったらここら一帯に魔法をかけたみたいだ。今、俺とこの悪徳魔術師は少しずれた空間にいる。ただたんに見えなくするとかじゃなくて別の空間にいるのだ。うーん、俺も説明が難しいんだけど、同じ場所にいるようで違う場所にいるからこの空間を裂かない限りは見つからないし捕まらない。
チート級の魔法だが、欠点がある。莫大な魔力とその魔法を維持するための柱が必要。まあいわゆる魔法使いだ。しかも、高度な技術が必要なので魔法に精通していないとだめなのだが、それの用意はこの悪徳魔術師には簡単だろう。
なんせ、子供を使って実験しているような屑だ。それ位の戦力はある。今の近くに誰か控えてるみたいだし。俺が大人しくついてこなかったら使うつもりだったんだろうね。
「珍しい、金だ! し、支援者には感謝しなければ!!」
支援者?
そういえばそんなのいたな。いたけど、最後まで謎のままだったんだよねぇ。だってここら辺の話は、あくまでラスボスである俺が関わっただけの話。主人公でもない俺の話が本編で詳しく語られるはずがない。だから、倒される直前にかるーく明かされる位なので全く全貌は分からない。こんなことがありましたよというだけだ。
もしかしたら俺が死んだ後に出たかもしれないけど、あの話を読んだだけでは分からないのだ。
支援者もその単語だけ出てきただけだしな。本編に影響ないから放っておいていい。
「こ、こ、これで、完成する! あ、あいつらに、ふ、ふ、復讐を……っ!!」
へー、なんか知らないけど復讐に燃えてこんな実験を始めたのかぁ。よくある話だなぁ。悪役ってそういうもんだからね。俺も一部の記憶を思い出し、雪辱を晴らすために頑張るんだもんな。
共通していることは事情がどうあれ、人様に迷惑をかけるのは良くない。俺が行くからにはぶっ潰して、この人も処理しないと。子供も正気に戻し、て……?
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