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しおりを挟むミーシャはカーティス様と一緒に家に向かっていた。
「ミーシャ、メガネの予備ってあるのか?」
「レンズは何枚かは…自分で足せるように多めに貰いました。
フレームは、実は職人さんがお遊びで作ったものでして。
メガネをかけている人のほとんどは最大5枚のレンズを入れることができるフレームなんです。
だけど、5枚では見づらくなった時に『遊びで作ったフレームが売れる日が来るなんて』
と、これは10枚までレンズを入れることができるのです。
ですから、特注しなければいけませんね。」
「通常のフレームに5枚のレンズを入れた状態なら、どのくらい見えるんだ?」
「さぁどうでしょう?あとでこのレンズを5枚にして確かめてみます。」
「そうだな。建物と人影と道がわかれば5枚のレンズでも予備のメガネを持ち歩いた方がいい。
さすがに間近まで来れば顔もわかるだろ?
騎士団に来れれば、家まで送ってくれるから。
メガネなしでは、誰かもわからない者に連れて行かれる恐れがあるからな。」
「教会に通い始めるまで、ほとんど出歩くことのない生活でしたので破損することはなくて。
重くて手で支えることはありますが、壊れることがあるものだというこも気づきませんでした。」
「それに、破損したり落としたりしたメガネを探すために違うメガネが必要だろう?」
メガネを探すためのメガネ。目が悪いってすっごく不便だわ……
家に着いて、マイラの美味しい料理を食べながら、研究所での話をした。
薬草が目に入らないようにメガネが防止になると言うと、騎士とは逆だと言われた。
騎士では逆にメガネは邪魔である。視界が狭くなるし、破損すると目が危ない。
刺激物を巻かれた時は一瞬だけは役に立つかもしれない。その程度らしい。
そしてお茶を飲んでいる時に、レンズを5枚にしてみる。
メガネを外し、レンズを一枚一枚外して5枚にしたところでメガネをかけてみた。
二人は今、向かい合ったソファにもたれかかり、間にはテーブルがある。
「ここにいるのがカーティス様だとわかっているから、カーティス様に見えます。」
ソファに軽く腰をかけて姿勢を正してカーティス様を見る。
「ここからだとカーティス様だとわかります。」
「約2m離れた位置では多分そうだろうってくらいで、1.5mくらいだとわかるのか。
ないよりはマシだな。というか、予備としては十分だと思う。
通常のフレームに5枚のレンズ入りを3セットと、10枚レンズが入れられるフレームを特注。
明日、一緒に買いに行こう。休みだろ?」
「え……そんなに要ります?」
「家と研究所と持ち歩く用。3セットは絶対にいる。
ミーシャの行動範囲はまだ狭いけど、生活に慣れてきたら確実に広がる。
不慣れな場所で見えなくなるのは不安だろ?
メガネ屋も教えておきたいし、街で駆け込める店も教えておきたい。」
なるほど。家も研究所も置いてある場所まで見え辛くても辿り着けるし頼むこともできる。
それ以外の場所では、持ち歩いていれば遠くは見えなくても近くは見えるから不安は減る。
「わかりました。薬はまだまだ完成が先ですからね。
メガネが何セットあってもいい気がしてきました。」
「じゃあ、明日は昼過ぎに迎えに来る。」
そう言ってミーシャの家を出たカーティスは、思わずため息をついていた。
いっそのこと20年くらい薬が完成しなければ、ミーシャは平和でいられるのではないか。
メガネを外すことになれば、護衛をつけずに歩かせるわけにはいかない。
いや、身分的にも本当は今でも護衛は必要なんだけれど……
美少女……美女が貴族なのに一人で歩いているバレると狙われるに違いないのだから。
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