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アルフ様に呼ばれて、会いに行った。

お茶を入れた侍女も下がって、二人きりになってしまった。
夫婦だから問題ないんだろうけどね。
貴族の決まり事ってすごく面倒。 


「覚えることがたくさんあって大変だろう?何に一番困る?」

「困ること……貴族の家名と爵位を覚えることでしょうか。」

「あー。面倒だよな。公爵と侯爵は覚えた方がいいけれど、伯爵以下はうろ覚えでもいいよ。」

「え?そうなのですか?」

「シャイニーの素性を知った上で侯爵家に喧嘩を売るような態度を取る貴族なら見放されるさ。」


なるほど。爵位の上の者に言われるならともかく、下に馬鹿にされても相手をしなくていいのかな。


「他には?」

「ダンスでしょうか。ワルツしかまだ踊れません。」

「取り合えずワルツが踊れればなんとかなる。他には?」

「靴が……ヒールの高さに慣れません。」

「それは……すまん。慣れてくれ。」
 

自分ではどうしてやることもできないことを言われて困るアルフ様の顔を見て、笑ってしまった。


「シャイニーは……この結婚をどうしたい?」

「どうとは?」

「形だけにしたいか、本当の夫婦になりたいか。」

「私はどちらでも。ラルフ様がお望みの方で。というか、その違いって何なのでしょう?
 今は、どちらかと言えば形だけですよね。
 だけど、結婚前から食事は一緒に取っていますし、こうして話をすることもあります。
 今後、夜会も一緒に出席しますし……あっ!」


夫婦と言えば、肝心なことを忘れていた。
それに思い当たり、顔が熱くなる。真っ赤になっただろう。


「あー。違いに思い当たったか?
 もちろん、閨を共にすることだけが本当の夫婦となるわけじゃない。
 出来れば、心を通い合わせられたら嬉しいと思う。
 形だけだと上司と部下みたいに報告とか確認みたいになるだろう?
 子供たちのことを事務的に処理する関係にはなりたくなくて。
 私としては、両親に言われたから結婚したわけじゃないんだ。
 前からシャイニーのことを女性として意識していた。だから結婚できて嬉しい。
 つまり、私としては本当の夫婦になれるように歩み寄れる関係になれたらと思ってる。」

「……っはい。」


真っ赤であろう頬を押さえたまま返事をした。
男の人として意識したことはない。前にもそう思った。
つまり、本当の夫婦になるということは、意識しなければ始まらないということ。

一度しか経験のない閨事を、アルフ様とすることになるのだ。
夫婦の営み。
そういうことよね。
しかも、女性として意識してくれていたなんて。でも、それを知っても嫌じゃないわ。


「今すぐってわけじゃない。
 リオルも1歳になるから部屋を用意しようと思う。
 だから、そのうちシャイニーも私の隣の部屋に移ってもらえたら嬉しい。」

「そうですね。部屋は最近言われました。ドレスはそっちに置くことになるからって。
 いつまでも結婚前と同じじゃダメですね。
 アルフ様の妻になったという意識が薄かったように思います。
 近々、部屋を移ります。」

「もう少し早く話し合う時間を取れたらよかったな。
 ディアーチェやリオルの前では話し難くて……
 部屋を移ったら、毎日少しずつ夫婦の時間を取ろう。」

「はい。」

 
夫と妻の部屋が、夫婦の寝室を挟んで繋がっていることなど知らないシャイニーは移った部屋を見て驚くことになった。


 

 
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