あなたに最後の贈り物を

しゃーりん

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アイリーンが子を産んだ。
 

「あらあら。プクプクとした大きな男の子ですよ。立派なモノが付いていて、将来は女泣かせになりそうですねぇ。」


子を取り上げた産婆が笑いながらそう言った。
 
完全に、ブレイズへの当てこすりだとわかった。


ブレイズは、『浮気相手を妊娠させて妻を捨てた男』と言われていた。

そしてアイリーンは、『妻のいる男を誘惑して寝取った女』と言われている。


子ができたのは離婚後なのだが、そんな事実は誰も興味はない。

ただ、離婚したことでメルリーが『寝取られ妻』と言われなくなり、それでよかった。 




アイリーンとの暮らしは心休まることなどなかった。

騎士を辞めて家にいるのに、ほとんど家事をしない。
料理を作るのは好きではないらしく、買って来るものばかりだ。
そのため、食費が多くかかる。

洗濯も、騎士を辞めたのに騎士の服を洗うのは嫌だと言うので、ブレイズが自分で洗っている。
汚れがひどくて洗うのが大変だから、アイリーンは嫌なのだ。 

掃除はしやすい。
物がほとんどないからだ。
お互いに金がなかったため、最低限の物しかない。
床にホコリが溜まったのを見たら、ブレイズが掃除している。

金は生まれてくる子供のために、貯めておく必要があった。

実家からの援助はなかった。




子が生まれても、アイリーンはあまり可愛がっていない。

泣けば、母乳を与え、おしめを取り替える。
あまりあやすことはせず、眠るのを待っている。

その繰り返しで、母性はあまり感じなかった。
アイリーンは子を望んでいたわけではなかったのだと気づいた。


アイリーンのせいにしたくはないが、子が欲しくなかったのであればどうして自衛しなかったのだろうか。
彼女を抱いた翌朝は家を追い出され、部隊長からはメルリーのことを聞かされ、アイリーンに避妊の確認をする余裕などブレイズにはなかった。
 
アイリーンが自分と結婚したいと思っているとは考えたこともなかったので、彼女も遊びなのだと思っていた。

ブレイズより4歳年上のアイリーンは25歳で、それなりに遊んできたようだから。


過去に、アイリーンはブレイズとも関係を持ったことがあった。
メルリーとの結婚前に、一度だけ。 

あの頃、数人の遊び相手の女性を適当に抱いて性欲を発散させていた。

合間に、誘われたら一夜の遊びをすることもあった。
アイリーンはその一夜の相手だ。

騎士団で再会しても、思い出さなかった。
アイリーンはどうか知らないが。確かめる気もない。

アイリーンの部屋で彼女に触れた時、スレンダーだな、と思い、何か記憶に触れた。
その次に記憶に触れたのは、メルリーに過去にアイリーンと関係があったのかと指摘された時だった。

関係はなかったと言い切ることができなかった。

ブレイズの好みは、腰は細くても胸はしっかりある女性だ。
メルリーはもちろん、遊び相手の女性も、行為の最中に揺れるだけの胸の大きさがあった。

胸を見て、相手をするか決めていたくらいだ。

そんな中、ひどく酔った日に誘われた女はスレンダーだったが、まぁいいかと思い、誘いに乗った。

その女の体が、アイリーンと重なった気がしたのだ。


その時の女性がアイリーンだったと確信したのは、離婚した日の夜だ。

あの時と同じように、ブレイズの性器に触れて大きくし、自分から跨って腰を振った。
揺れるほどの大きさもない胸を見て、『二度目』だと思った。
 

自分の女遊びが正しくなかったと再認した。

 
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