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26.強さとは

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 助けてもらった子供と両親に礼を言い、席に戻った2人。

 散乱した串焼きと綿菓子を拾い、テーブルを元に戻す。

「あーぁ。串焼きがダメになっちまったなぁ」

『しょうがないね。僕は綿菓子食べよう』

 袋を開けて摘む。

『うわぁ! フワッフワ!』

 むしゃむしゃ食べる。

『あまぁ! 溶ける!』

 はしゃいで食べている。

 すると、ドカッと空いている椅子に座ってきたおじさん。

 テーブルに差し出されたのは串焼きであった。

「あんちゃん達、解放者だろ? しかも、相当な実力とみた。オーラがすげぇ」

 突然話しかけられて唖然とする。

「さっきの見てたよ。気付いたら女の子が出てきたところでよぉ。間に入ろうとしたが、間に合わなかったぜ」

「いえ。大丈夫です。これって?」

 串焼きを指さして聞く。

「あぁ。俺の差し入れだ。串焼きダメになっちまっただろ? さっきの解放者、アイツらは最近この辺りで幅を効かせてるグループの奴等だ。あんたの言った通り、強さを履き違えてる。弱いやつを数でいじめるんだ。最低な野郎共よ」

「有難う御座います。そんなグループがあるんですね」

「さっきのであんちゃん達は目をつけられただろうから気を付けろ?」

「はい! 忠告有難う御座います」

 差し入れの串焼きを食べると美味しかった。

 宿に戻って休む事にした。

◇◆◇

ドンッドンッドンッ

 部屋の扉が叩かれる。

「はぁーい!」

 扉を開けると、昨日の女の子のお父さんが慌てた様子で立っていた。

「どうしました?」

「あの! 娘が連れ去られたみたいなんです!」

「何処に行ったか分かりますか?」

「落として言った娘のカバンの上にこれが……」

 差し出された紙切れには。

 娘を返して欲しければ昨日の解放者を1人で来させろ。場所は町外れの廃工場だ。

 俺を呼び出す為の手紙だった。

「俺は直ぐに行きます! 娘さんは無事に帰します! 家でお待ちください!」

「は、はい!」

 父親を見送ると。

 準備をして直ぐに宿を出た。

 全速力で廃工場に向かう。

 ものの数分で廃工場に着く。

「おい! 女の子を返せ! 約束通り一人で来た!」

 すると、奥から大柄な金髪のパンチパーマの男が現れた。

 その横には昨日の2人組がいる。

「ハッハッハッ! ホントに一人で来やがったか!」

 昨日の男が笑っている。

「うちの弟分が世話になったなぁ? この女の子を無事に返して欲しかったら抵抗するなよ?」  

 リーダー格の男がニヤニヤ笑いながら言っている。

 膝を着いて両手を上げる。

「分かってるじゃねぇか! それでいい!」

 横にいた昨日の男の一人が近づいてきて顔を殴り付けた。

ボゴッ

「痛い目見させてやる!」

 もう一人も加わって蹴る。

バキッ! ボコッ! ドスッ! ガスッ!

「お兄ちゃん!」

 女の子が叫ぶ。

「静かにしてろ!」

 バシッと女の子を叩く。

「おい!! 俺は抵抗してねぇ! その子に手ぇ出すな!」

「たしかにそうだが、お前の言うことを聞く義理はねぇ」

 再び女の子を叩こうとする。

「なぁ! おい! 返事しろ! お前だよクルクル金髪豚!」

 コチラをバッと振り向く。

「テメェ、言っちゃならねぇことを言ったなぁ。この俺様を豚呼ばわりだとぉ?」

「お前みてぇに肥えてるのは豚だろ?」

 コメカミをピクピクさせながら近づいてくる。

「おい! あれ持ってこい!」

 すると、鎖の先にトゲのついた鉄球が運ばれてきた。

 受け取ると、鎖を持って鉄球を回し始めた。

「コイツを喰らったら、誰も生きちゃいれねぇぞ?」

「やってみろ豚が」

 歯を食いしばっている。

「お前はもう終わりだぁぁぁ!」

ドガァァァァァン

 土煙が上がる。

「ハッハッハッ! コイツはもう終わりだ。誰か、コイツをダンジョンに捨ててこい。ダンジョンで死んだことにするぞ」

 振り返ると元いた所に戻ろうとする。

 女の子がいない。

「おい! ガキを何処に連れていった!? 何してる!」

 部下達が慌てる。

「あれ? どこに行った?」
「お前見張りだろ?」
「みんなリーダーの方見てたよな?」

 土煙がはれると、翔真が鉄球を身体で受け止めていた。

「なっ! コイツ生きてる!?」

「お前達……本当に呆れた奴らだ……」

『翔真! 菜々ちゃんは、無事に保護したよ!』

 チラッと後ろを見ると菜々ちゃんを抱えている蘇芳が見えた。

「蘇芳は戻ってろ!」

『了解!』

 菜々ちゃんを抱えて両親の元へ行く。

 ゆっくりと立ち上がる。

 片足を上げ、鉄球を踏み抜く。

バガァァァァンッ

 鉄球は粉々になり、小さなクレーターが出来る。

「な、なんだコイツ!? おい! お前達! 全員で戦え!」

 廃工場からワラワラと人が出てくる。

 100人以上は居るだろうか。

「お前達は害虫みたいにワラワラと……」

「やれ!」

 一斉に囲まれる。

「くたばれオラァ!」

バキッ

 ニヤニヤしながら殴ってきた男は。
 ビクともしない目の前の男を不思議に思った。

グシャ

 殴った腕があさっての方向を向いていた。

「うがぁぁぁ」

「うるせえな」

 腕を掴んでポイッと遠くに投げる。

「「「ウラァァァ」」」

 同時に蹴りを放ってくる。

グシャグシャグシャ

 皆一様に足が変な方向を向いている。
 負傷させた奴から投げる。

 それをみた輩達は止まる。

「おい? かかってこいよ? 次は頭潰してやろうかな?」

 その言葉に恐怖した。

「うわぁぁぁ!」
「ヤバイヤバイヤバイ!」
「バケモンだ!」
「助けてくれぇぇー」

 蜘蛛の子を散らすように逃げる。
 しかし、何故か出口には魔物の大群がいた。

「なんでこんな所に魔物が!?」
「町の中だぞ!?」

「お前達を逃がさないようにするためだ。お前達は……もう終わりだぁ」

 ニヤリと笑うと輩達は恐怖にかられる。

「やめてくれぇぇぇー」
「もうしない! 真っ当に生きるから!」
「助けてくれぇぇー」
「だしてくれぇ!」

 そいつらを後目にリーダーの男に向かう。

「お前がコイツらをそそのかして悪さしてたんだろう? 一体、今まで何人の人を痛めつけたんだ? 女も攫ったんだろう? なぁ」

 徐々に近づいて行く。

 後退りしながら、恐怖に顔を染める。

「やめてくれよ!……あんた、俺と一緒に組まないか? 女好き放題できるぞ? この人数を手に入れたらこの町で逆らうやつはいねぇ! なっ? 一緒にこの町牛耳ろうぜ?」

「俺もさぁ、この前まで力なんてなかった。けど、力なんてなくても楽しく生きてこれた。この町の人達だって大半の人は戦う力がなくても! 一生懸命働いて、笑って、楽しく生きてる! それをお前達みたいな借り染めの強さに染まった奴らに脅かされるのは我慢ならねぇ!」

「お、落ち着けって! なっ!?」

 翔真は驚くくらいの無表情であった。
 逆に恐怖を覚えるほどであった。

「やめろよ! 殺さないでくれ!」

バギァァ

 無表情でビンタした。
 ピクッピクッとしていて、顔面の形が変わっているが生きているようだ。
 顎は粉々になり一生話せないだろう。

「これは、菜々ちゃんが殴られた分だ」

『翔真! 自警団連れてきたよ!』

 いつの間にか魔物ではなく、自警団が取り囲んで一人一人拘束している。

「サンキュー!」

 リーダーの男を引きずって連れていく。

「お手数お掛けします。コイツも連れてってください。あっ、コイツ話せないんで一生牢屋でいいと思います」

 ビッと敬礼される。

「この度は、このグループを壊滅に追いやって頂き、感謝します! このグループは、人数が多すぎて、自警団でもなかなか捕らえることが出来なかったのです……面目ない……」

「いえ! 日々、お勤めご苦労様です!」

 同じように敬礼する。

 全員連れていかれたところを見届けると、菜々ちゃんの元に向かった。

 蘇芳に案内され、家に行くと。

「お兄ちゃん!」

 ガシッとしがみついてくる。

「おおう。大丈夫だよ。菜々ちゃんやられた分はやり返してきたからな? 殴られたところ大丈夫? 見せてみ?」

 少し青アザになっている。

「やっぱり殺しとけば良かったかなぁ」

 コメカミを浮き上がらせながらつぶやく。
 傷薬を塗ってあげる。

「これで、少しいいだろ」

「お兄ちゃん! 助けに来てくれてありがとう!」

「ううん。巻き込んでホントにごめんな」

「ううん! いいの!」

 両親に深々と礼をする。

「巻き込んでしまってすみませんでした! アイツらは捕まえましたので、これでご迷惑はおかけしないと思います!」

「いえ。ご無事でよかったです。助けて頂いて有難う御座いました」

 両親も深々と礼をする。

「では、また」

 去ろうとすると、菜々ちゃんが近付いてきた。

 トントンッと腕をノックする。

「どうした?」

 しゃがむと耳に顔を近づけてきた。

「ん?」

 不思議に思っていると。

「お兄ちゃん、カッコよかったよ? 大きくなったら結婚してあげるね?」

 ニコッと笑って去っていく。

 うーん。
 近頃の子供は成長が早いんだなぁ。
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