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59.的当て
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『では、次の勝負は的当てです!』
的当てか。
前前世でいえば銃のようなものを持って目標に当てるようなゲームを言うけど、この世界ではどんな勝負をするんたろうか?
「はぁーい! 私的当てやった事ありませーん!」
『では、説明致します。私が用意する的を射抜くだけでございます。射抜くのは魔法でです』
「えぇー!? 魔法で?」
爺やは今度はお嬢様が有利そうな勝負にしたようだ。
爺やにはミリアの魔法の腕を知らないだろうが、トウカお嬢様の方が有利なのは俺達には分かりきっている。
何故なら────
「私、魔法で狙ったりできないんですけど!?」
思い返してみると、今まででミリアはざっくりと雨をふらせてざっくりと電撃をくらわせる。そういう戦い方をしてきた。
狙いを定めて的に飛ばすなんて至難の業だろう。纏めて吹き飛ばすなら出来るかもしれないが。
繊細に的の中心を射抜くなんてそんな芸当到底ミリアにはできないだろう。
『それは、この機会に魔力制御を出来るようにした方がいいですよ? どれ、少し一緒にやりましょうか?』
「いいんですか?」
ミリアに魔力制御とはなんたるかを、爺やが教えてくれるらしい。
「魔力を一箇所に集中して。そして球を作り、回すのです」
その言葉通りにミリアは水の球を作って浮かせた。だが、回すことまではできない。
「うぅぅぅ。回せないですぅ」
「集中すればできます。この水の中が渦をなすように意識してみてください」
ミリアは眉間に皺を寄せて口を歪めている。
本来、こういう細かいことは向かないタチだと思うのだが、一所懸命にやろうとする姿は可愛いものだ。
「ぐぬぬぬぬ」
少しずつ、浮かせている水が渦を巻き始めた。
グルグルと水の球が回っている。
「そうです! それを的に射出するのです!」
「とりゃぁぁ!」
変な掛け声を上げながら水球を射出する。
射出された水球は的の方へ飛んでいく。
当るかと思われたが、綺麗なカーブを描いてだいぶ奥にある擁壁に当たった。
───ズンッ
何やら水球が当たっただけではならない様な、巨大なハンマーで殴りつけたような音が響いた。
「ホッホッホッ。ミリア様は魔力操作も力があるようですね。狙いはズレましたが、威力は申し分ありませんね」
魔力を回転させただけなのだが、水の魔力を動かしただけで威力が段違いだ。
そんな威力で攻撃されたらたまったものではない。
頬を冷たい滴が伝って首に流れていく。
「そうですか? ようっしっ! お嬢様勝負よ!」
ミリアがお嬢様に指を向けて高らかに宣言する。さっきの練習で何か掴んだのか、自信満々だ。
「ふんっ! その程度で調子に乗らないでちょうだい!」
こちらも負けじと自信満々。
昔からこのような鍛錬をしてきたのだろうから、こちらの自信は頷ける。
「それでは、的を三つ用意します! 魔法を放てるのは三回までです! 何個的を壊せるかで競いましょう! まずは、トウカお嬢様から」
「行くわよぉ!」
トウカお嬢様の練り出した魔力は風。
渦巻く風が球体を成している。
胸の前あたりに手を置き、その前に魔力球を留まらせている。
身体の向きを調整して的を狙っているようだ。
右に微調整をして少し違かったのだろうか、少し左にまた調整する。
「よし。行けー!」
留めていた魔力球を射出した。
射出した勢いでこちらにまで風が吹き付ける。
綺麗に真っ直ぐ飛んでいった風の塊は的を捉えて破壊した。
流石だなトウカお嬢様。
的確に的をいている。
「ちゃんと見た!? ミリア!?」
「ぐぬぬ。次は私よ!」
場所を入れ替わると手を突き出すミリア。
そこに水の魔力球を成形する。
ミリアの作り出した水の塊は中でグルグルと回り、日の光を反射し、自身の周りを海の色に染めていく。
海の中の人魚を連想させるようなその整った顔立ちは俺の胸を高鳴らせた。
「行っくよー!」
射出された魔力球からは回転の勢いで水を飛び散らせながら的への軌跡を刻む。
ここで先程の曲がるくせを修正出来ればよかったのだろうけど、そんな芸当が出来るわけがなく。
───ズンッ
さっき聞いたのと同じ音が響き渡った。
「えぇ!? むぅ! 行けると思ったんだけどなぁ!」
地団駄を踏みながらトウカお嬢様と場所を入れ替る。
トウカお嬢様は同じように微調整して二つ目の的をいた。
次の的を捕えないとこの一本はトウカお嬢様の勝ちになる。
「ふーーー」
俺は前世の知識から少し思ったことがあり、爺やに質問をする。
「すみません。少しミリアにアドバイスしてみていいですか?」
「えぇ、構いませんよ?」
爺やからの許しが出たので少しミリアに質問をする。
「ミリアは回転させるときどう回転させるようにイメージしてるんだ?」
「えぇ? 回転はこうグルグルと回るように」
そう手で示した回転は横回転だった。
俺は自分の思っていた考えと合致したことでアドバイスが役に立つものだと確信した。
「なぁ、その回転をこうすることはできるか?」
指で進行方向に対して垂直の回転を提案した。これで銃から射出する弾のようにまっすぐに飛んでいくんでは、と考えた。
「うん。出来ると思うよ。よーっし!」
ミリアは手を突き出して魔力球を成形する。
回転はアドバイス通りだ。
「それぇっ!」
射出された魔力球はまっすぐに飛んでいき、的に穴を空けたが、留まることを知らずにそのままだいぶ奥の擁壁にも穴を空けていってしまった。
「ホッホッホッ。凄まじい魔力球ですねぇ。お隣に謝罪にいかなければ。ホッホッホッ」
「やったぁ!」
喜ぶミリアを横目にトウカお嬢様は的を壊して三個の的を壊したことで、この勝負はトウカお嬢様が一本をとった。
的当てか。
前前世でいえば銃のようなものを持って目標に当てるようなゲームを言うけど、この世界ではどんな勝負をするんたろうか?
「はぁーい! 私的当てやった事ありませーん!」
『では、説明致します。私が用意する的を射抜くだけでございます。射抜くのは魔法でです』
「えぇー!? 魔法で?」
爺やは今度はお嬢様が有利そうな勝負にしたようだ。
爺やにはミリアの魔法の腕を知らないだろうが、トウカお嬢様の方が有利なのは俺達には分かりきっている。
何故なら────
「私、魔法で狙ったりできないんですけど!?」
思い返してみると、今まででミリアはざっくりと雨をふらせてざっくりと電撃をくらわせる。そういう戦い方をしてきた。
狙いを定めて的に飛ばすなんて至難の業だろう。纏めて吹き飛ばすなら出来るかもしれないが。
繊細に的の中心を射抜くなんてそんな芸当到底ミリアにはできないだろう。
『それは、この機会に魔力制御を出来るようにした方がいいですよ? どれ、少し一緒にやりましょうか?』
「いいんですか?」
ミリアに魔力制御とはなんたるかを、爺やが教えてくれるらしい。
「魔力を一箇所に集中して。そして球を作り、回すのです」
その言葉通りにミリアは水の球を作って浮かせた。だが、回すことまではできない。
「うぅぅぅ。回せないですぅ」
「集中すればできます。この水の中が渦をなすように意識してみてください」
ミリアは眉間に皺を寄せて口を歪めている。
本来、こういう細かいことは向かないタチだと思うのだが、一所懸命にやろうとする姿は可愛いものだ。
「ぐぬぬぬぬ」
少しずつ、浮かせている水が渦を巻き始めた。
グルグルと水の球が回っている。
「そうです! それを的に射出するのです!」
「とりゃぁぁ!」
変な掛け声を上げながら水球を射出する。
射出された水球は的の方へ飛んでいく。
当るかと思われたが、綺麗なカーブを描いてだいぶ奥にある擁壁に当たった。
───ズンッ
何やら水球が当たっただけではならない様な、巨大なハンマーで殴りつけたような音が響いた。
「ホッホッホッ。ミリア様は魔力操作も力があるようですね。狙いはズレましたが、威力は申し分ありませんね」
魔力を回転させただけなのだが、水の魔力を動かしただけで威力が段違いだ。
そんな威力で攻撃されたらたまったものではない。
頬を冷たい滴が伝って首に流れていく。
「そうですか? ようっしっ! お嬢様勝負よ!」
ミリアがお嬢様に指を向けて高らかに宣言する。さっきの練習で何か掴んだのか、自信満々だ。
「ふんっ! その程度で調子に乗らないでちょうだい!」
こちらも負けじと自信満々。
昔からこのような鍛錬をしてきたのだろうから、こちらの自信は頷ける。
「それでは、的を三つ用意します! 魔法を放てるのは三回までです! 何個的を壊せるかで競いましょう! まずは、トウカお嬢様から」
「行くわよぉ!」
トウカお嬢様の練り出した魔力は風。
渦巻く風が球体を成している。
胸の前あたりに手を置き、その前に魔力球を留まらせている。
身体の向きを調整して的を狙っているようだ。
右に微調整をして少し違かったのだろうか、少し左にまた調整する。
「よし。行けー!」
留めていた魔力球を射出した。
射出した勢いでこちらにまで風が吹き付ける。
綺麗に真っ直ぐ飛んでいった風の塊は的を捉えて破壊した。
流石だなトウカお嬢様。
的確に的をいている。
「ちゃんと見た!? ミリア!?」
「ぐぬぬ。次は私よ!」
場所を入れ替わると手を突き出すミリア。
そこに水の魔力球を成形する。
ミリアの作り出した水の塊は中でグルグルと回り、日の光を反射し、自身の周りを海の色に染めていく。
海の中の人魚を連想させるようなその整った顔立ちは俺の胸を高鳴らせた。
「行っくよー!」
射出された魔力球からは回転の勢いで水を飛び散らせながら的への軌跡を刻む。
ここで先程の曲がるくせを修正出来ればよかったのだろうけど、そんな芸当が出来るわけがなく。
───ズンッ
さっき聞いたのと同じ音が響き渡った。
「えぇ!? むぅ! 行けると思ったんだけどなぁ!」
地団駄を踏みながらトウカお嬢様と場所を入れ替る。
トウカお嬢様は同じように微調整して二つ目の的をいた。
次の的を捕えないとこの一本はトウカお嬢様の勝ちになる。
「ふーーー」
俺は前世の知識から少し思ったことがあり、爺やに質問をする。
「すみません。少しミリアにアドバイスしてみていいですか?」
「えぇ、構いませんよ?」
爺やからの許しが出たので少しミリアに質問をする。
「ミリアは回転させるときどう回転させるようにイメージしてるんだ?」
「えぇ? 回転はこうグルグルと回るように」
そう手で示した回転は横回転だった。
俺は自分の思っていた考えと合致したことでアドバイスが役に立つものだと確信した。
「なぁ、その回転をこうすることはできるか?」
指で進行方向に対して垂直の回転を提案した。これで銃から射出する弾のようにまっすぐに飛んでいくんでは、と考えた。
「うん。出来ると思うよ。よーっし!」
ミリアは手を突き出して魔力球を成形する。
回転はアドバイス通りだ。
「それぇっ!」
射出された魔力球はまっすぐに飛んでいき、的に穴を空けたが、留まることを知らずにそのままだいぶ奥の擁壁にも穴を空けていってしまった。
「ホッホッホッ。凄まじい魔力球ですねぇ。お隣に謝罪にいかなければ。ホッホッホッ」
「やったぁ!」
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