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60.メダル奪取
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二本目を取られたミリアは頭を抱えてしゃがんでいる。
「くぅぅ。惜しかったのになぁ。もう少し早く出来るようになってたら良かったのに! もう! ナイル! アドバイスが遅い!」
『はははっ。仕方ないだろ? 次頑張ろー!』
「はぁぁぁ。これで勝てたら楽だったのに! くぅぅぅ。やってやるぞぉぉ!」
腕を天に突き上げて立ち上がりながら意気込みを叫ぶ。
『ふんっ! 次も私が勝ってギャフンと言わせてやるわ!』
トウカお嬢様は腕を組んで勝ち誇っている。
『では、次の勝負はメダル奪取にしましょう』
「メダル?」
『聞くのは初めてですかな?』
聞いたことがないと言うと勝負の説明をしてくれた。
これもトイロではメジャーなトレーニング方法でそうだ。
まず、メダルを背中に特殊な植物から抽出した液体で張るんだそう。それを両者に貼って奪われた者の負けということだった。
「ふーん。スピード勝負ね」
ミリアは勝負の本質を分かっていないようだ。
これはスピード勝負に見せかけたフェイント、もしくは錯覚を利用するために意識を培う鍛錬といったところだろう。
右に行くと思わせて左に行く。
相手が誘いに乗れば背中ががら空きという訳だ。
いつそれに気がつくか。
そもそもそれを意識して鍛錬しているであろうトウカお嬢様に勝てるのかは疑問だ。
『それでは背中に貼ります』
両者の背中に銅貨が貼られた。
この鍛錬では取るという意欲も掻き立てるために一番手頃な銅貨を使用するそうだ。
ただの金属よりは硬貨の方が意欲が上がるとのこと。
『それでは、両者向かい合って。行きますよ。始め!』
トウカお嬢様が先に動いた。
右に移動しようと見せかける揺さぶりをかけている。ミリアが初めてだから引っかかると思ったようだ。
案の定、ミリアは引っかかった。
体が右に傾いた。
それを見たトウカお嬢様は左に回り込んでくる。
トウカお嬢様はミリアの背中のメダルが見えたのだろう。手を伸ばした。だが、ここで予想外のことが起きた。
手を伸ばした先はミリアの胸だったのだ。
ムニィッと胸の形が変わる。
それもお構い無しにミリアはトウカお嬢様の横を抜ける。まさにスピードの力技。
『そういう事じゃないんです。のっ!』
横に来たミリアに体の正面を向けてメダルを守る。
「えっ? スピード勝負でしょ? 負けないんだから!」
また同じ方向に回り込まれたトウカお嬢様。
それを阻止しようと再び体を回した。
それを数回繰り返す。
「はぁ。はぁ。やるじゃない」
『こういう鍛錬だっけ? これ?』
「はぁ。はぁ。違うの?」
『まぁ、スピードも必要よ。けれど、それだけではダメよ。ここよ。ここ』
頭を指さして頭を使えと訴えているようなトウカお嬢様。
「頭で回るの?」
『そうじゃないわ!』
「分かんないよー」
ミリアは頭を使うのが苦手だ。
所謂、脳筋というものに当てはまるだろう。
考えずに体を動かす方が得意なのだ。
本来、戦いというものは頭を働かせながら戦わないと行けない為、得手不得手があると言われてきていた。
しかし中にはそれを頭を働かせずに天性の感覚でやってのける者がいる。
俺はミリアはそれじゃないかと思っている。
たまに驚かされる動きをすることがある。
『こうしてこう! これがフェイントよ』
右に体を振ってから左に素早く動く。
大抵の者は意識をそっちに持っていかれて突破されてしまう。
だが、ミリアは純粋に速度でそのフェイントについて行ったのだ。
ついて行けばいいんでしょ?と言わんばかりに。さも当然のようについて行く。
『なっ!? なんで付いて来れるの!?』
ミリアは完全にフェイントに引っかかっていた。だが、反応速度がそれを上回ったのだ。
「んー? 後ろを取られなきゃいいんだよね? で、後ろを取れば勝ち」
『そうよ? でも簡単な事じゃないわよ?』
「そうだねぇ。でも、ルールは攻撃をしてはいけないとは言ってないよ?」
『えっ!?』
ミリアは瞬時にしゃがむとトウカお嬢様の足を払った。
そして、空中にいる状態で背中を上にして地面に押し付ける。
その状態になってしまったらもう勝負ありである。メダルはミリアの手の中にあった。
『勝負あり。ですな。お見事でしたミリア様』
「えへへ。ありがとう」
トウカお嬢様はそのままうつ伏せになっている。顔を上げたくないようだ。
『うぅぅぅ。負けたぁぁぁ』
「これで堂々とナイルと一緒にいれる」
『うわぁぁぁぁぁん! ナイル様と暮したかったぁぁぁ! ミリアをギャフンと言わせたかったぁぁぁ!』
うつ伏せのまま足をばたつかせて、地面を拳で叩いて悔しさを地面にぶつけている。
そこに寄り添うようにしゃがむミリア。
「ねぇ。ご両親にちゃんと許嫁とは一緒になりたくないって言ってみたら? 話せば分かってくれるかもよ?」
『うぅぅ。グスッ。何回か言ったんだけど、ダメだったの』
「なんでダメなんだろう? 私が直接話してみるよ。ナイルもいい?」
こちらを向いて了承を求めてくる。
コクリと頷く。
『いいさ。乗りかかった船だ。最後まで面倒を見よう。トウカお嬢様が幸せに慣れるように一肌脱ごう!』
「うん!」
『あっ、俺肌なかったわ。骨だから』
なんとも閉まらないが、ミリアとトウカお嬢様の三本勝負はこうして幕を閉じたのであった。
「くぅぅ。惜しかったのになぁ。もう少し早く出来るようになってたら良かったのに! もう! ナイル! アドバイスが遅い!」
『はははっ。仕方ないだろ? 次頑張ろー!』
「はぁぁぁ。これで勝てたら楽だったのに! くぅぅぅ。やってやるぞぉぉ!」
腕を天に突き上げて立ち上がりながら意気込みを叫ぶ。
『ふんっ! 次も私が勝ってギャフンと言わせてやるわ!』
トウカお嬢様は腕を組んで勝ち誇っている。
『では、次の勝負はメダル奪取にしましょう』
「メダル?」
『聞くのは初めてですかな?』
聞いたことがないと言うと勝負の説明をしてくれた。
これもトイロではメジャーなトレーニング方法でそうだ。
まず、メダルを背中に特殊な植物から抽出した液体で張るんだそう。それを両者に貼って奪われた者の負けということだった。
「ふーん。スピード勝負ね」
ミリアは勝負の本質を分かっていないようだ。
これはスピード勝負に見せかけたフェイント、もしくは錯覚を利用するために意識を培う鍛錬といったところだろう。
右に行くと思わせて左に行く。
相手が誘いに乗れば背中ががら空きという訳だ。
いつそれに気がつくか。
そもそもそれを意識して鍛錬しているであろうトウカお嬢様に勝てるのかは疑問だ。
『それでは背中に貼ります』
両者の背中に銅貨が貼られた。
この鍛錬では取るという意欲も掻き立てるために一番手頃な銅貨を使用するそうだ。
ただの金属よりは硬貨の方が意欲が上がるとのこと。
『それでは、両者向かい合って。行きますよ。始め!』
トウカお嬢様が先に動いた。
右に移動しようと見せかける揺さぶりをかけている。ミリアが初めてだから引っかかると思ったようだ。
案の定、ミリアは引っかかった。
体が右に傾いた。
それを見たトウカお嬢様は左に回り込んでくる。
トウカお嬢様はミリアの背中のメダルが見えたのだろう。手を伸ばした。だが、ここで予想外のことが起きた。
手を伸ばした先はミリアの胸だったのだ。
ムニィッと胸の形が変わる。
それもお構い無しにミリアはトウカお嬢様の横を抜ける。まさにスピードの力技。
『そういう事じゃないんです。のっ!』
横に来たミリアに体の正面を向けてメダルを守る。
「えっ? スピード勝負でしょ? 負けないんだから!」
また同じ方向に回り込まれたトウカお嬢様。
それを阻止しようと再び体を回した。
それを数回繰り返す。
「はぁ。はぁ。やるじゃない」
『こういう鍛錬だっけ? これ?』
「はぁ。はぁ。違うの?」
『まぁ、スピードも必要よ。けれど、それだけではダメよ。ここよ。ここ』
頭を指さして頭を使えと訴えているようなトウカお嬢様。
「頭で回るの?」
『そうじゃないわ!』
「分かんないよー」
ミリアは頭を使うのが苦手だ。
所謂、脳筋というものに当てはまるだろう。
考えずに体を動かす方が得意なのだ。
本来、戦いというものは頭を働かせながら戦わないと行けない為、得手不得手があると言われてきていた。
しかし中にはそれを頭を働かせずに天性の感覚でやってのける者がいる。
俺はミリアはそれじゃないかと思っている。
たまに驚かされる動きをすることがある。
『こうしてこう! これがフェイントよ』
右に体を振ってから左に素早く動く。
大抵の者は意識をそっちに持っていかれて突破されてしまう。
だが、ミリアは純粋に速度でそのフェイントについて行ったのだ。
ついて行けばいいんでしょ?と言わんばかりに。さも当然のようについて行く。
『なっ!? なんで付いて来れるの!?』
ミリアは完全にフェイントに引っかかっていた。だが、反応速度がそれを上回ったのだ。
「んー? 後ろを取られなきゃいいんだよね? で、後ろを取れば勝ち」
『そうよ? でも簡単な事じゃないわよ?』
「そうだねぇ。でも、ルールは攻撃をしてはいけないとは言ってないよ?」
『えっ!?』
ミリアは瞬時にしゃがむとトウカお嬢様の足を払った。
そして、空中にいる状態で背中を上にして地面に押し付ける。
その状態になってしまったらもう勝負ありである。メダルはミリアの手の中にあった。
『勝負あり。ですな。お見事でしたミリア様』
「えへへ。ありがとう」
トウカお嬢様はそのままうつ伏せになっている。顔を上げたくないようだ。
『うぅぅぅ。負けたぁぁぁ』
「これで堂々とナイルと一緒にいれる」
『うわぁぁぁぁぁん! ナイル様と暮したかったぁぁぁ! ミリアをギャフンと言わせたかったぁぁぁ!』
うつ伏せのまま足をばたつかせて、地面を拳で叩いて悔しさを地面にぶつけている。
そこに寄り添うようにしゃがむミリア。
「ねぇ。ご両親にちゃんと許嫁とは一緒になりたくないって言ってみたら? 話せば分かってくれるかもよ?」
『うぅぅ。グスッ。何回か言ったんだけど、ダメだったの』
「なんでダメなんだろう? 私が直接話してみるよ。ナイルもいい?」
こちらを向いて了承を求めてくる。
コクリと頷く。
『いいさ。乗りかかった船だ。最後まで面倒を見よう。トウカお嬢様が幸せに慣れるように一肌脱ごう!』
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