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6. スライムにつき、開放注意※

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「さあ、さあ、次は普段着の試着を。ネズ、頼みますよ」

 店主にネズと呼ばれた鼠獣人の店員は、リリアーナを再び試着の間に押し込んだ。

「こちらが、夜に着る着物になります。旦那様ともお愉しみになれるように、デザインがこのように······!まあ!こちらも、とても美しいっ!」

 彼女が興奮した様子で戸を開けかけたのを、リリアーナは全力で止めた。
真っ白なその薄い着物は肩も脚も出ていて、勿論下着も着けていない。こんな醜態をロキに見せるわけにはいかない。
 そう、彼は本当の夫ではないのだから!

「あの、これは、その、夜のお愉しみという事で······見せずに······、」
「あっ、そうですよね。すみません、気遣いができず!では、次にこちらをご紹介してもよろしいでしょうか?」

 彼女は足早に部屋の奥にいくと、引き出しから色々な物を乗せた盆を持ってリリアーナの前に戻ってきた。
 着物を着ながら、あんなに素早く動けるなんて······とリリアーナは感心しながら、それに目を落とす。


「これは······?」


 色とりどりの液体の入った瓶や、その隣には様々な大きさや形の張形が並んでおり、リリアーナはすぐに赤面した。

「ドラファルトでの夜をお愉しみになるのでしたら、是非これらがおススメでございます!複数購入し、旦那様とお選びになるのがよろしいかと!」
「えぇ、と······、」

 ロキにこんなモノを見せるわけにはいかないし、とリリアーナは張形からは目を逸らす。代わりに、その隣にあった水色の液体のようなものが入った瓶を手に取った。


「お目が高いですっ!そちらは改良を重ね、今では味や香りもあって······、って、えぇ!!?
 奥様あァッ!」


 それをじっくりと見てから、”香り”という言葉に、“嗅ぐ”という選択をしたリリアーナは、その瓶を開けた。
 途端、その水色の粘液は自我を持って彼女の着物の大きく開いた胸の谷間に着地する。双丘の合間を伝って身体を降りていくと、それは最終目的地に到達し、そこを覆った。


「ッ、ひぃ······イヤあぁあッ!!」


 そのリリアーナの悲鳴を聞くや否や、バタバタと部屋の外から店主とロキが慌てて出てくる音がする。そして、店員のネズは立ちあがり急いで試着室をでると声を張り上げた。
 

「店主様、旦那様、申し訳ございませんっ!!! あのっ、あの······。あのスライムが奥様の中に······!!!」


「スライムだと?!!リリアに何をしたッ!!」


 勢いよく試着用の広間の戸を開けたロキは、その光景に目を見張る。
 そして、そこにいたリリアーナを視界に捉え、急激に襲って来た頭痛に蟀谷を抑えた。
 何か、思い出しそうな、昔もこんなことがあったような、そんな気がするが、深い霧に覆われているように上手く思い出せない。

「っぐ······頭が割れそうだ······けど、それより先にッ」

 痛みを抑えながら、目の前にいるあまりに妖艶な彼女の姿に身体が硬直する。そして反射的に自分の下半身を押さえた。

「······これは、マズい」

 どうしたものか、と思ったその時、呆然と立ち尽くすロキの後ろ、部屋の外から店主の焦ったような声が聞こえてロキは正気に戻る。

「旦那様っ、申し訳ございません。我々は中に入って奥様をお助けする事はできませんので、ここから説明させて頂きとうございます」

「なんなんだよ、これ······」

 “これ”······青い粘液が蠢きながら彼女の秘部を覆い、リリアーナがソレを必死に取ろうと苦しみに顔を歪めている。
 苦しみに······?いや、快楽なのかもしれないが、ロキはそれを認める事はできない。それを認めてしまえば何かが壊れてしまう、そんな気がするからだ。

「そちらは、女性の性器を好むように育てられた特殊なスライムでして······」

「は?」

「外に付着したものは引きはがす事で取れる筈なのですが、中に侵入したものは、掻き出さなくては······」

「はあ?!っ、ふざけんな!無理だっ、何か他の方法は?!」

 ロキは苛々と苛立ちながら部屋から顔を出すと、店主を睨んだ。あまりの気迫に店主がびくりと肩を震わせる。

「お、奥に個室がございますので······、よろしければ、そちら利用して頂いて······も、申し訳ございません」
「本当に、申し訳ございませんッ!!」

 鼠獣人の店員が泣き出しそうな顔で頭を下げるのを見て、ロキは咄嗟に店主の胸倉を掴む。

「おい、他にもあるだろう。方法があるなら全て言え、」

、と言われましても······、えぇと、魔力を入れる事でスライムを吸い取る張形ならあるのですが······獣人は魔力が弱くあまり効率が······」
「それでいいから、持ってこい!!」

 いつも冷静なロキだが、この状況にはかなり焦っていた。
 尊敬する兄であり、皇帝ヴィクトールの妻を自分が抱くことなどできるはずがない。

 それがスライムに犯された緊急事態だろうと、自分の息子がどれほど願おうと、だ。

 視界の端で、リリアーナが部屋の中をフラフラと移動し、中央にある長椅子にぐったりと凭れ掛かるように座った。必死でそのスライムを取り除こうと、脚を肩幅まで開き、自分の指で恥部を触り始めた姿が遠目に見えて、ロキは目を逸らした。

「いや······無理だろう、こんなの······生殺しだ」


「旦那様、こちら、張形になりますっ······!」


 汗をダラダラと垂らしながら急いで張形を持ってきた店主を睨みつけると、それを受け取る。そしてロキはリリアーナの待つ部屋の中へ、足を踏み入れた。

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