8 / 56
6. スライムにつき、開放注意※
「さあ、さあ、次は普段着の試着を。ネズ、頼みますよ」
店主にネズと呼ばれた鼠獣人の店員は、リリアーナを再び試着の間に押し込んだ。
「こちらが、夜に着る着物になります。旦那様ともお愉しみになれるように、デザインがこのように······!まあ!こちらも、とても美しいっ!」
彼女が興奮した様子で戸を開けかけたのを、リリアーナは全力で止めた。
真っ白なその薄い着物は肩も脚も出ていて、勿論下着も着けていない。こんな醜態をロキに見せるわけにはいかない。
そう、彼は本当の夫ではないのだから!
「あの、これは、その、夜のお愉しみという事で······見せずに······、」
「あっ、そうですよね。すみません、気遣いができず!では、次にこちらをご紹介してもよろしいでしょうか?」
彼女は足早に部屋の奥にいくと、引き出しから色々な物を乗せた盆を持ってリリアーナの前に戻ってきた。
着物を着ながら、あんなに素早く動けるなんて······とリリアーナは感心しながら、それに目を落とす。
「これは······?」
色とりどりの液体の入った瓶や、その隣には様々な大きさや形の張形が並んでおり、リリアーナはすぐに赤面した。
「ドラファルトでの夜をお愉しみになるのでしたら、是非これらがおススメでございます!複数購入し、旦那様とお選びになるのがよろしいかと!」
「えぇ、と······、」
ロキにこんなモノを見せるわけにはいかないし、とリリアーナは張形からは目を逸らす。代わりに、その隣にあった水色の液体のようなものが入った瓶を手に取った。
「お目が高いですっ!そちらは改良を重ね、今では味や香りもあって······、って、えぇ!!?
奥様あァッ!」
それをじっくりと見てから、”香り”という言葉に、“嗅ぐ”という選択をしたリリアーナは、その瓶を開けた。
途端、その水色の粘液は自我を持って彼女の着物の大きく開いた胸の谷間に着地する。双丘の合間を伝って身体を降りていくと、それは最終目的地に到達し、そこを覆った。
「ッ、ひぃ······イヤあぁあッ!!」
そのリリアーナの悲鳴を聞くや否や、バタバタと部屋の外から店主とロキが慌てて出てくる音がする。そして、店員のネズは立ちあがり急いで試着室をでると声を張り上げた。
「店主様、旦那様、申し訳ございませんっ!!! あのっ、あの······。あのスライムが奥様の中に······!!!」
「スライムだと?!!リリアに何をしたッ!!」
勢いよく試着用の広間の戸を開けたロキは、その光景に目を見張る。
そして、そこにいたリリアーナを視界に捉え、急激に襲って来た頭痛に蟀谷を抑えた。
何か、思い出しそうな、昔もこんなことがあったような、そんな気がするが、深い霧に覆われているように上手く思い出せない。
「っぐ······頭が割れそうだ······けど、それより先にッ」
痛みを抑えながら、目の前にいるあまりに妖艶な彼女の姿に身体が硬直する。そして反射的に自分の下半身を押さえた。
「······これは、マズい」
どうしたものか、と思ったその時、呆然と立ち尽くすロキの後ろ、部屋の外から店主の焦ったような声が聞こえてロキは正気に戻る。
「旦那様っ、申し訳ございません。我々は中に入って奥様をお助けする事はできませんので、ここから説明させて頂きとうございます」
「なんなんだよ、これ······」
“これ”······青い粘液が蠢きながら彼女の秘部を覆い、リリアーナがソレを必死に取ろうと苦しみに顔を歪めている。
苦しみに······?いや、快楽なのかもしれないが、ロキはそれを認める事はできない。それを認めてしまえば何かが壊れてしまう、そんな気がするからだ。
「そちらは、女性の性器を好むように育てられた特殊なスライムでして······」
「は?」
「外に付着したものは引きはがす事で取れる筈なのですが、中に侵入したものは、掻き出さなくては······」
「はあ?!っ、ふざけんな!無理だっ、何か他の方法は?!」
ロキは苛々と苛立ちながら部屋から顔を出すと、店主を睨んだ。あまりの気迫に店主がびくりと肩を震わせる。
「お、奥に個室がございますので······、よろしければ、そちら利用して頂いて······も、申し訳ございません」
「本当に、申し訳ございませんッ!!」
鼠獣人の店員が泣き出しそうな顔で頭を下げるのを見て、ロキは咄嗟に店主の胸倉を掴む。
「おい、他にもあるだろう。方法があるなら全て言え、」
「ほか、と言われましても······、えぇと、魔力を入れる事でスライムを吸い取る張形ならあるのですが······獣人は魔力が弱くあまり効率が······」
「それでいいから、持ってこい!!」
いつも冷静なロキだが、この状況にはかなり焦っていた。
尊敬する兄であり、皇帝ヴィクトールの妻を自分が抱くことなどできるはずがない。
それがスライムに犯された緊急事態だろうと、自分の息子がどれほど願おうと、だ。
視界の端で、リリアーナが部屋の中をフラフラと移動し、中央にある長椅子にぐったりと凭れ掛かるように座った。必死でそのスライムを取り除こうと、脚を肩幅まで開き、自分の指で恥部を触り始めた姿が遠目に見えて、ロキは目を逸らした。
「いや······無理だろう、こんなの······生殺しだ」
「旦那様、こちら、張形になりますっ······!」
汗をダラダラと垂らしながら急いで張形を持ってきた店主を睨みつけると、それを受け取る。そしてロキはリリアーナの待つ部屋の中へ、足を踏み入れた。
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。