32 / 127
我が君の秘密
2
しおりを挟む
「も、申し訳ございません!ウィリエール様。いらっしゃるとは思わずにっ」
「ミリア?」
ウィリエール様が近づいてくる気配があったけれど、湿り気のある者が這う音がして私は足元を見る。ウィリエール様の足の指先は赤く変色し、所々腐食しているようにも見えた。
「ウィリエール様っ、そのおみ足は一体」
「人間界にいると、腐敗が進んでしまうんだよね。だから時々生血を拝借しているんだけど」
「生血を拝借、随分と物々しいお話ですが……」
視線をあげようとすると肢体が見えてしまうので、私はウィリエール様を直視できない。
下に向けたままでいれば、少し先の床に何かが横たわっているのが見えた。人のようだ。レースを施した襟飾りには見覚えがある。
さらにその下の首筋や金の細工の施された襟ぐりは、王族の方々のものだ。ブロンド髪がウィリエール様の足の隙間から見え、私はハッと息を飲む。
「ベアラル様?」
私の呟きは、そうだよ、とウィリエール様の屈託のない言葉で裏付けされる。そして、ウィリエール様はガウンを拾いあげてまとうと、ベアラル様と思しき人影の元へと歩いていく。一体何をなさるのか、と私はその挙動を見守っていた。
「どうして、ここに?」
葬儀を行った亡骸をむやみに動かすことは死者への冒涜になる。なぜこのような形でベアラル様の亡骸があるのか、私には理解しかねていた。
「ミリア?」
ウィリエール様が近づいてくる気配があったけれど、湿り気のある者が這う音がして私は足元を見る。ウィリエール様の足の指先は赤く変色し、所々腐食しているようにも見えた。
「ウィリエール様っ、そのおみ足は一体」
「人間界にいると、腐敗が進んでしまうんだよね。だから時々生血を拝借しているんだけど」
「生血を拝借、随分と物々しいお話ですが……」
視線をあげようとすると肢体が見えてしまうので、私はウィリエール様を直視できない。
下に向けたままでいれば、少し先の床に何かが横たわっているのが見えた。人のようだ。レースを施した襟飾りには見覚えがある。
さらにその下の首筋や金の細工の施された襟ぐりは、王族の方々のものだ。ブロンド髪がウィリエール様の足の隙間から見え、私はハッと息を飲む。
「ベアラル様?」
私の呟きは、そうだよ、とウィリエール様の屈託のない言葉で裏付けされる。そして、ウィリエール様はガウンを拾いあげてまとうと、ベアラル様と思しき人影の元へと歩いていく。一体何をなさるのか、と私はその挙動を見守っていた。
「どうして、ここに?」
葬儀を行った亡骸をむやみに動かすことは死者への冒涜になる。なぜこのような形でベアラル様の亡骸があるのか、私には理解しかねていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
16
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる