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あいつの身体を手に入れた日
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しおりを挟むずるりと引き抜いて、ホッとしたところで強引にかけのぼって来られたので、
「ああんっ」
と声が出て、緋々来が吐息を漏らした。
そうしたら、緋々来が、
「碧衣、気持ちいい」
とかすれ声で言ってくる。
頭の先に、電気が走ったような気がした。
気持ちいい?
こんな風に言ってくれるのは、緋々来だけだ。
常盤はいつも必死で、義務感にせかされている。気持ちいいなんて言わない。
ダメだ、と思う。緋々来とこんな風になっちゃいけないのに。
「どこがいいか、知ってる。碧衣だって気持ちいんだろ?相性がいいなんて、分かってるじゃん。ほら、もうぐちゃぐちゃだ」
「ちがう!」
「碧衣はオレとじゃなきゃ、こんなになんない」
激しく打ちつけられて、私はびくびく跳ねる俎上の魚のようになっていた。
「大きらい」
「嘘つき」
強引にえぐられて、引きずり出される。自分の中がびくびくっと痙攣するのが分かった。
「イク」
と口にしてしまってから、緋々来の口許に笑みが浮かんだのを、見た。
あ、しまった、と私は思う。
※
私は下着や服を身につけて、部屋を出た。終始緋々来の視線を感じたけれど、無視して、逃げるようにして部屋を出る。
「今逃げても、無駄。試験期間は1か月だし」と言う緋々来の声が、背中に聞こえた。
常盤との約束の時間まで、あと3分。待ち合わせ場所に急ぐ。
もう、二度と会わなければきっとこんな風にはならない。
緋々来だけは、ダメだ。
緋々来は一番仲がよくて、一番分かり合えた友達だった。
どんな場面でもきっと、ベストな相性なのは間違いない。
感覚もテンポも、緋々来と私はいつも一緒だったのだから。
だからこそ、この事態はとてもよくない。
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