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裏切りの気配
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その日帰っていた常盤は、機嫌がいい。
鳩羽は実家に泊まると言ったので、園に迎えに行ってから、実家に連れていく。
帰って来た常盤は、まずシャワーを浴びに行った。私はジャケットを香ってみる。ほのかに、花のような香りがした。
でも、ハッキリとは分からない。
「碧衣、一緒に飲もう」
と買ってきたスパークリングワインを開けていった。
想像したことはなかったけれど、常盤が私だけだったとは限らない。
じゅっと少し胸の奥に炎が生まれたのを感じる。
長い指が針金を外し、コルクをまわしていくのを眺める。その指は、今日どんなことに使ったの?
いやな想像をすればするほど、なぜか、常盤に触れたくなる。
私は常盤の手を取った。
「私がする」
そしてコルクをまわして開けていったら、少しだけこぼしてしまう。
「下手だなぁ」
と呟く常盤を見て、私は下からその顔を見あげる。
「ね、今日は、いい日だった?」
と聞くと、うん、と常盤は目を伏せた。
私はワインの少しこぼれた常盤の指を舐める。
「え?」
驚いたのが分かる。舌を指の隙間に絡めてみた。
「入れてよ」
と言ってワインを注いで、と指でしめしてみせる。
常盤の頬がほのかに赤くなったのが分かった。妙に感度がいい。香りをつけて帰って来たときは、いつも、そうだ。
いつも、花菜野と会っていたの?
そんなことを聞けるわけもなく、私は常盤がグラスにワインを注ぐ仕草を見つめている。そして、泡を眺めて、それから常盤の目を見た。
鳩羽は実家に泊まると言ったので、園に迎えに行ってから、実家に連れていく。
帰って来た常盤は、まずシャワーを浴びに行った。私はジャケットを香ってみる。ほのかに、花のような香りがした。
でも、ハッキリとは分からない。
「碧衣、一緒に飲もう」
と買ってきたスパークリングワインを開けていった。
想像したことはなかったけれど、常盤が私だけだったとは限らない。
じゅっと少し胸の奥に炎が生まれたのを感じる。
長い指が針金を外し、コルクをまわしていくのを眺める。その指は、今日どんなことに使ったの?
いやな想像をすればするほど、なぜか、常盤に触れたくなる。
私は常盤の手を取った。
「私がする」
そしてコルクをまわして開けていったら、少しだけこぼしてしまう。
「下手だなぁ」
と呟く常盤を見て、私は下からその顔を見あげる。
「ね、今日は、いい日だった?」
と聞くと、うん、と常盤は目を伏せた。
私はワインの少しこぼれた常盤の指を舐める。
「え?」
驚いたのが分かる。舌を指の隙間に絡めてみた。
「入れてよ」
と言ってワインを注いで、と指でしめしてみせる。
常盤の頬がほのかに赤くなったのが分かった。妙に感度がいい。香りをつけて帰って来たときは、いつも、そうだ。
いつも、花菜野と会っていたの?
そんなことを聞けるわけもなく、私は常盤がグラスにワインを注ぐ仕草を見つめている。そして、泡を眺めて、それから常盤の目を見た。
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